2003年10月31日(金) Do or die いちかばちか

「それは昔と変わらぬ物語 愛と栄光への闘い 命がけのケース 世界はいつも恋人たちを迎え 時は流れる」

Well, it's still the same old story
A fight for love and glory
A case of do or die
The world will always welcome lovers
As time goes by

映画『カサブランカ』の全編に流れるテーマ曲As Time Goes Byの一節。

時は流れゆくが、センチメンタリズムは不変。

第二次大戦下のモロッコの都市カサブランカ。
主人公リック・ブレインの経営するバー、カフェ・アメリケン。
そこへ忘れようにも忘れられない、パリで彼を振った女、イルザ登場。

Of all the gin joints in all the towns in all the world, she walks into mine.
 「世界中のあらゆる町のあらゆる酒場の中で何で俺の店に入って来る」

ギネスブックがこれを、映画の最もよく知られたセリフのひとつに選んだ。
一位は(英国の) Bond, James Bond.。

連れの夫はレジスタンスのリーダー、ヴィクター・ラズロ。
飛行機でリスボンへ、そして米国へ逃走しようとする二人。
官憲に顔の利くリックは二人を幇助?
過去の恋は再燃するか?!

昔、どうしてボガートのようなおっさんに、あんなかすみのかかったような若い美女が夢中になるのか不思議だった。ファーザーコンプレックスもギリシャ悲劇的レベルではないか。片岡千恵蔵とイングリッド・バーグマンの取り合わせではないか。イングリッド・バーグマンは誰と共演しても相手を皆、千恵蔵にしてしまう。イングリッド・バーグマン自身は何をやってもイングリッドでバーグマンで、彼女に似た人はまったくいない。

カフェのピアニスト・サムの弾くAs Time Goes Byの調べを聴く彼女のショットの長いこと。永遠のように見える。

あるサイトに

For life insurance companies, it's do or die.
(生保会社にとって、生きるか死ぬかのときだ)

あるいは、

It's do-or-die time for tax reform.
(税制改正はかどばんに立たされている)

天才漫才師横山やすしは息子に「いちかばちか」という気持ちで一八と命名した。

  It's a do-or-die situation.

などは「木村一八状況」ということだろう。

バーグマンは幸せの定義をしている。

  Happiness is good health and a bad memory.

良い健康と悪い記憶が幸せ、だとすると、
悪い健康と良い記憶は不幸せになる。
良い健康と良い記憶は幸か不幸か。
悪い健康と悪い記憶はどうなのか。

イルザが歩いて入って来たその晩、リックがひとり酔ってもらす悲鳴のような小声。あれはボガートが没にしてくれと頼んだカットではなかったか。

そんなことどうでもいい。俺たちにはカサブランカがある。

次もまた頭韻の3連。cool, calm and collected




  








2003年10月20日(月) A sneak peek 公開にさきがけてちらっと紹介

メグ・ライアンは『フレンチ・キス』なども含めたいへんおもしろい。
友人でファンがいてオクサンがライアンさんにどこか似ている。これもおもしろいけれど、これらはこの際関係がない。

メグさんがいつもと違う種類の映画に出るらしい。
In the Cutという題名で『ピアノ』のJane Campion監督の作品のようだ。
ライアンの笑顔がまるでなく、まったく異種の内容だという。

新聞のヘッドラインに

 Meg Ryan with an Edge

以前にやったedgeの使用例だ。
「一味違うメグ・ライアン」といったところ。

唇の形が変わっている?!といううわさまであるという。
内容は?
ライアンは何も語らず、あたかも、

No sneak peeks. You have to see the movie.

と言っているようだとある。(USATODAY, October 15, 2003)

「内容は今は語れない。映画を見てください。」

sneak peekは脚韻を踏んだイディオムで、「内容をちらりと公開すること」。

新製品が出る前に、こうしたキャンペーン戦術がとられる。

 SONY gives a sneak peek at their new ____.
 PANASONIC offers a sneak peek at their upcoming ____,

上の空欄に新製品名を入れると経済ニュースのヘッドラインになる。

 Can you give us a sneak peek at your upcoming lecture?

と相手の講演する内容を伺うこともできる。

a sneak previewとも言うが、これは韻を踏まない。

次回は頭韻表現に戻り『カサブランカ』のdo or dieを。




2003年10月12日(日) spick and span ぴかぴか 

10数年前、コンピューターグラフィックスが本格化し始めたころ、ある評論家がCGの出来栄えを「つるぴか」と呼んでいた。それが今やCGが『サンダーバード』に錆びや汚れをつけてしまう。それよりあの『マトリックス』はどうだ。

で、その「つるぴか」的な音感の英語表現がspick-and-spanだ。

「ぴかぴかで、ちり一つない、染み一つない、汚れ一つない」という意味で、類語が、

 spotless, spotlessly clean, immaculate, immaculately clean,

きちんと整理整頓された状態という意味もあり、類義語に、

 neat and tidy, shipshape

元は16世紀のspick-and-span new(新品の)という表現で、「キュッキュッ」という擬声音を連想すると見事に裏切られる。
spickはスパイクや釘の意味。相棒のspanは切ったばかりの木片。
The ship is spick-and-span new!などと言い、船の細部に至るまで新しいという意味で使われた。
今ならbrand-new(新品の)という表現がある(ちなみにbrandは家畜に施す焼印のこと)。

類義語に(さきほど例にあげた)shipshapeがある。これまた船関連で、古くは船のようにこじんまりと整った形のという意味。それが、出帆の準備が整った船のように「整然とした、準備万端整った」といった意味になった。
The company is shipshape.なら、その会社の現在と将来に関した高い評価になる。

使い方は)――

 I cleaned my place last Sunday. Now everything is spick-and-pan.
 (日曜に自室[宅]の掃除をして、もうどこもぴかぴかです)

everythingという語と相性がいい。別の言葉もついでに。

 Everything is spotlessly clean!
Everything is neat and tidy!
Everything is shipshape!

二義的に新しいという意味もある。

 Yoshio-kun went to work in his spick-and-span blue suit.
(良男くんはぴっかぴかのブルーのスーツで仕事に出かけた)

家中クリーナーをシュッと吹き付けてはつるつるぴかぴかにする家庭がアメリカには多い。建てたり買ったりした家を将来売ることを視野に入れた、物件の商品価値を保つ作業でもあるらしい。
そうしたクリーナーの有名ブランドのひとつにSpic AND Spanがある。http://www.spicnspan.com/

少しチリなどあったほうが安心する方も多いのでは。
以下、そんなお宅を訪問した、チリ好きの人の感想。

 Everything was spotlessly clean in the Spicks' house. I tend to feel rather uneasy in such spick-and-span surroundings.

次回も頭韻表現。『カサブランカ』のdo or dieで。




2003年10月09日(木) A friend or foe 敵か味方か

/f/音のペア頭韻表現。

日本語は反対に「味方か敵か」となる。
さらに直訳すれば「友か敵か」。

 (?)a friend or enemy

とやるより言い易い、聞き易い。
それにa friend or foeには、ちょっと背筋を伸ばした雰囲気もある。

 Is France a friend or foe?
(フランスは敵か味方か?)

国際的な摩擦や紛争が起こると米国のメディアはすぐこの手の質問を持ち出す。
ところでこのフランス云々はなんと/f/音3連の頭韻!!

foeはゲルマン語が源で、語源が同じものにfeud(fューdと発音)がある。
「(部族間の)不和・確執」を表し、『ロミオとジュリエット』の両家の例などfeudの最たるもの。風土に根ざしておるのでfeudであろうか・・・

道草: 同じ発音feudは「封土(ほうど)」という意味もある。「君主への奉仕の見返りに得る土地」で、feudを中心に築かれたシステムがfeudal systemであり、中国や日本ではトップが部下に分け与えた封土を中心に築かれた封建制度がある。こちらはラテン語のfeudumなどから来たとされ、英語のfee=課金・料金の語源でもあるという。

一方のfriendの語源はゲルマン祖語が大元でloveという意味だという。
loveだったのか、friendは。

sheはある國として。

 Is she Japan's friend or foe?

日本では友と呼ぶまでには手間暇かけるのが普通だ。
とくに当人の前では気をつける。
簡単に友と呼ぶと目を剥かれることもある。

アメリカ人は、知り合ったばかりの人をLet me introduce you to a friend of mine from Japan.などと紹介する傾向があることで知られる。
気が合ったり、敵意がない場合、まずa friendとし、何かそうでないことがあれば、foeである理由を分析したりする。単純と呼ぼうか、いわゆる直線的思考か。

日本は「敵か味方か」で「敵」が先。敵の部分と味方の部分を見分ける「見立て」の目が幅を利かせる、最初から友と受け入れられると不安になる。これが例の渦巻き的思考の一端か。

次回は整理整頓きちんピカピカの頭韻ペア。


 < BACK  INDEX  NEXT >
 遠山顕 HOME