ぴんよろ日記
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2014年04月22日(火) 更地よりもたしかに

 おばちゃんの家がなくなっていた。ばあちゃんのお姉さんだから、もうさすがに歳も取ってしまって、ひとりでは暮らせないとか、いろいろなことが集まって、おばちゃんの家が更地になっていた。私が生まれるずいぶん前からあって、お盆やら、プールの帰りやら、なんでもないときやら、行ったり集まったりした。そこで過ごした時間を、古びた家の匂いとともに、たくさん思い出すことができる。時は戻せないし、行こうと思えばもう少し多く行っておくこともできたというようなことは、なにかが失われた時にはどうしても滲んでくるものだけど、いまはむしろ、たしかにここで自分が時間を過ごした、その匂いや気持ちや感触が、しっかりと残っていることのほうが、更地という事実よりもたしかなような気がしてならない。
 ブルドーザーが這いずったあとをしばらくたたずみ回って、どこのなにだったかは思い出せないけど、明らかに見覚えのあるタイルのかけらと、奇跡的につぶれていなかった何かの花の球根をひろって帰った。咲くといいな。

 この春は、なんだかこんなことばっかりだな。


2014年04月14日(月) みるみると

 庭の木々や草花が、みるみる茂りはじめた。昨日の雨と、今日からのあたたかさで、またいっそうモリモリするに違いない。庭作りの本には「木は育つので間隔をあけましょう」って書いてあるのだけど、植えるときは我慢できずに、「これくらい空けたほうがいいのかな…」というラインより詰めてしまう。でもやはり2〜3年経つと「やはりあれは本当だったんだ…」と思う。これから植えるものは、ちゃんと空けよう…。
 植物たちの勢いって、見ているだけで、こちらのチューニングも上がってくる。ここ半年私の心身をこてんぱんに萎えさせた隣の家も、もう建っちゃったし、この環境の中で、気持ちのいい庭にしていこう。大物で植えたいのは、ヤマボウシ。隣の家が、ちっとも見えなくなるくらいの。連休の植木市が楽しみ。


2014年04月03日(木) トンネル抜けたか?

 数年ぶりに、本格的な歯医者。奥歯の金属の下で虫歯が進んでしまっていた。「痛かったら手を挙げてください」と言われたので、開始20秒で手を挙げるヘタレ。即刻麻酔の準備。
 麻酔を打つのにも、それがさらに痛くないように「歯茎をしびれさせる」ものを塗られる。そして注射(?しびれてるのでよくわかんなかった)なのだが、痛くなることもあるのか、看護婦さん(って呼ばないんだろうけど、とにかくお姉さん)が、「鼻でゆっくり息をしてくださーい」と言って、なんと、肩をやさしくトーン、トン…、とし続けてくれた。小さい子供にするように!自分がすることはあっても、されることはない「トーン、トン…」。これがとっても安心できるものだと、あらためてわかった。これは歯医者さん界では、ポピュラーな「テクニック」なのだろうか?それとも彼女のオリジナル?ただ「鼻でゆっくり…」と言われても、先生のゴリゴリに気を取られて息が浅くなるところを、お姉さんが肩を「トーン、トン」してくれることで、神経がそちらに反応して、自然と緊張が解ける。もしオリジナルなら、天才だ〜!と思いながら、じっと耐える。できればそのあとの、削る時にこそやってほしかったが…。

 ここ一ヶ月くらい、車検と整備で預けていた「メルシェデスじいさん(犬なら90歳)」が、やっと退院。別にフルに整備されていた1ヶ月ではなく、工場に覗きにいくたびに放置プレイを受けていた1ヶ月だったので、やきもきしていた。ずっと軽の代車に乗っていたので、じいさん、重い!デカい!でも落ち着く…。おかえりなさい〜と思いながら、帰り道に大音量でボブ・マーリーを聴いていたら(いかんせん、雑音まみれのラジオしかなかった)、「no woman no cry」で、なぜか滂沱の涙。「no cry」って言ってるのに。

 いやしかし、じいさんがいない間に、あまりにいろいろあったのだ。ダンナの実家の犬(まるきち、13歳)の病気が急に悪くなって、あれよあれよと死んじゃったり、ヒコが右手首をボッキリ折ったり、夫婦共々お世話になった人が若くして亡くなったり、また別の人が重い病気かもしれないと聞いたり、歯が痛くなったり、やたら病院や葬祭場を行ったり来たり。ヒコの通知表があまりにもあんまりだったり、ヒコもミサキンもたっぷりお世話になった保育園の先生が、ダンナさんの転勤で突然辞めちゃったり。しかもずーっと、番組の取材でダンナは夜遅い。パソコンのメールソフトは絶不調。そんな中、3月と4月の変わり目には、「聖地巡礼・大阪京都キリシタン編」へも飛んだ。内田先生、釈先生、巡礼部のみなさんと再会できて、「大阪アースダイバー」もできて、これはすばらしい3日間だったけれど、そんなこんなで、張りつめまくっていたのだろう。じいさんが帰ってきて、なにかがはじけた。

 行き着くとこまでいったのかもしれない。歯医者に行く前に、とても立派な猿が車道に飛び出して、ふたたび帰って行くのを見たからかもしれない。お姉さんがトーン、トンしてくれたからかもしれない、野菜たっぷりの餃子を作ったからかもしれない、鶴橋で買った念願のケジャンがおいしかったからかもしれない、車が帰ってきたからかもしれない、町内会の一年当番が終わったからかもしれない、「やるやらないは五分五分だな…」と思っていた2年生総復習ドリルをヒコがやり遂げてくれたからかもしれない。それやこれや、たぶん意識できていないもろもろもひっくるめて、ボブさまの「everything's gonna be all right〜」がリフレインされて、バイパスのトンネルがかすむくらいの涙!あぶない!でも、やたら気が軽くなった。新年度がはじまった。

 


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