今日の日経を題材に法律問題をコメント

2014年07月31日(木) 佐世保市の同級生殺害事件の今後の流れ

 日経(H26.7.31)社会面で、佐世保市の同級生殺害事件の続報が載っていた。


 この少女の父親は弁護士のようであり、それだけに無関心ではいられない。


 少し気が早いがこの事件の今後の手続きを考えると、もっともオーソドックスな流れとしては次のとおりであろう。


 20日間の勾留の後、家裁に送致され、8週間近く観護措置が取られる。

 その後、逆送(検察官送致)になって起訴され、裁判員裁判で裁かれる。

 懲役刑(不定期刑)が科され、刑務所に収容される。


 しかし、この事件においては、逆送せずに家庭裁判所において審判を行い、医療少年院に送致するのが処分として適切ではないだろうか。


 同級生を殺害して遺体を切断するという行為や、徐々に明らかになっている少女のこれまでの行為を考えると、治療による更生が必要であることには異論がないであろう。


 ところが、刑務所は治療を予定した施設ではない。


 また、裁判員裁判は、裁判員の負担軽減を名目に、公判廷での供述が中心になっている。そのため、少女の成育歴などの記録は朗読で済ませるはずであり、結果的に成育歴などの社会記録が重視されない可能性がある。


 もっとも、家庭裁判所の審判となると、非公開なので、批判が出てくるかも知れない。


 ただ、法改正により、被害者の遺族は少年審判の傍聴を申し出ることができ、事件記録閲覧することや裁判官に意見を言うこともできるようになったので、まったくの密室裁判というわけではない。



2014年07月30日(水) 災害時の放置車両と財産権の保障

 日経(H26.7.30)社会面で、地震などの災害時に道路に放置された車によって救急車や消防車が災害現場にたどり着けない事態を防ぐため、政府は、国や自治体が所有者の同意なしに放置車両を撤去できるようにする災害対策基本法改正案を臨時国会に提出する方針という記事が載っていた。


 大地震の際の放置車両はこれまでも問題になっていたが、財産権の保障を重視するあまり、車両の撤去には及び腰であったように思う。


 しかし、憲法は、「財産権は侵してはならない」として財産権を保障すると同時に、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める」としている。


 災害の際に消防・救急活動を円滑に進めることは公共の福祉にかなうものであり、法改正は当然のことであって、遅すぎたくらいであると思う。




2014年07月29日(火) 大学寮の法律関係

 日経(H26.7.29)夕刊で、寮内での禁酒を守っていないとして、東北大が学部1、2年生の男子が入寮する学生寮・明善寮に住む学生105人全員を退去させると決めたという記事が載っていた。


 東北大によると、明善寮では以前から飲酒トラブルが絶えず、昨年11月には急性アルコール中毒で学生が搬送されており、未成年者も多く、大学側は今年4月、寮内での飲酒を全面禁止したが、その後も大量のビール缶などが確認されたため、9月末までに全員退去するよう通知したとのことである。


 これが裁判になったとき問題になるのは入寮の契約関係であろう。


 学生寮費は低額であろうから、寮の法律関係は賃貸借契約とはいえず、使用貸借契約と認定されると思われる。


 使用貸借契約では、契約に定めた目的が終わっときに終了するとされているから(民法597条2項)、東北大学のケースで言えば、2年生までということになる。


 そうすると、いかに寮内での飲酒を全面禁止していたといえども、飲酒をしていておらず、他の者の飲酒の容認していない者まで、入寮契約を解除して退寮を求めることはできないのではないだろうか。



2014年07月28日(月) 会社法は、事業年度終了後3か月以内に定時株主総会を招集するとまではしていないが

 日経(H26.7.28)法務面で、経済産業省などが、3月期決算の上場企業が7月以降に定時株主総会を分散開催するよう促すという記事が載っていた。


 株主総会の開催日は、特定日に集中することはなくなったとはいえ、6月に集中している状況は変わっておらず、機関投資家は、短期間に膨大な量の議案を読み、賛否を決めなくてはならない。


 その機関投資家の負担を平準化するには、総会開催日を7月以降に分散することが有力な選択肢になるとのことである。


 確かに会社法は、定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないとは規定しているが、事業年度の終了後3か月以内に必ず定時株主総会を招集しなければならないとはしていない。


 しかし、3月決算から4か月も経ってから決算報告を受けるのでは、時機が空きすぎて間が抜けた感じになるのではないだろうか。


 最終的にはそれぞれの企業が決めることではあるが、機関投資家の顔ばかり見るのはいかがなものかと思う。



2014年07月25日(金) 求刑を1.5倍上回る判決 最高裁が破棄

 日経(H26.7.25)社会面で、幼児虐待死事件で傷害致死罪に問われ、一審の裁判員裁判で求刑の1.5倍の懲役15年を言い渡された両親の上告審判決で、最高裁は、一、二審判決を破棄し、父親に懲役10年、母親に懲役8年を言い渡したという記事が載っていた。


 裁判員裁判は、市民感覚を裁判に取り入れるとして始まったものであり、実際、裁判員裁判では求刑を上回る判決が相次いでいた。


 ところが、最高裁は、「裁判員裁判でも他の裁判との公平性は必要」「一審判決は、求刑を大幅に上回る量刑について具体的、説得的な根拠が示されておらず、量刑判断は甚だしく不当」と判断したのである。


 しかし、一審の判決を読むと、求刑を大幅に上回る量刑について、そこそこ説明をしている。


 裁判員裁判ではじっくり判決を書く時間的余裕はないから、それ以上の説得的根拠示すことは困難であろう。


 そうすると、今後、裁判員裁判において求刑を上回る判決はほとんど出ないようになると思われる。



2014年07月23日(水) 尿と毛髪検査で陽性反応が出た以上・・

 日経(H26.7.23)社会面で、ASKA被告の交際相手で、覚せい剤使用の罪に問われた栩内被告の初公判が、東京地裁であったという記事が載っていた。


 検察側は冒頭陳述で、ASKA被告とともに逮捕された際、栩内被告尿から覚醒剤成分が検出されたほか、毛髪鑑定でも陽性反応が出たと述べた。


 これに対し、被告側は「覚醒剤の陽性反応が出たのは鑑定の誤りか、知らない間に第三者が私に使った」として起訴内容を否認、無罪を主張したとのことである。


 パーティーなどで知らない間に飲み物に覚せい剤を入れられて、知らずに飲んでしまったと弁明するケースがある。


 その場合、捜査機関は、毛髪検査をすることが多い。それで陽性反応が出れば、以前から覚せい剤を使用していたことが推測されるから、「間違って覚せい剤入りの飲み物を飲んだ」という言い訳は通らなくなる。


 栩内被告の場合、尿と毛髪鑑定で陽性反応が出たというのであるから、裁判所はほぼ100%有罪認定するであろう。



2014年07月22日(火) 「危険ドラッグ」に名称変更

 日経(H26.7.22)夕刊で、幻覚作用をもたらすことのある「脱法ドラッグ」について、警察庁と厚生労働省は、呼称を「危険ドラッグ」に改めると発表したと報じていた。


 「脱法」という名称には、何となく違法でないかのようなニュアンスがある。


 名称の変更だけで犯罪がなくなるわけではないにせよ、「脱法」という呼び方を別の言い方に変えることは大切であり、名称変更には賛成である。


 ただ、「危険ドラッグ」というのは、説明的で何となくすっきりしないが、そのうち慣れるのだろう。



2014年07月18日(金) 父子関係の最高裁判決は具体的妥当性がない

 日経(H26.7.18)社会面で、最高裁は、DNA鑑定があっても法律上の父子関係を否定することはできないとの初判断を示したと報じていた。


 この事件では、夫が単身赴任中に、妻が別の男性の子どもを産んだが、夫は、自分の子供として育てていた。
 しかしその後、夫婦は別居し、妻はその子どもと共に実の父親と一緒に暮らすようになり、子どもは、実の父親を「お父さん」と呼んでいるというものである。


 子どもと法律上の父親とが父子関係にないことはDNA鑑定により確認されている。


 ところが、最高裁は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」という民法の規定を優先し、法律上の父子関係を否定できないとしたのである。


 しかし、本件では、法律上の父と子は生物学上の父子関係にないことが科学的に明らかであり、また、実際にも法律上の父子は同居していないのであるから、最高裁の判断は、結論として妥当性を欠く。


 また、最高裁は、「夫婦が遠隔地に居住するなどして、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかな場合には、推定を受けない嫡出子に当たり、父子関係の存否を争うことができる」としているが、その判例とも整合性がないように思われる。


 最高裁は、法律上の推定によって父子関係を社会的に安定させるという価値を優先したものであろうが、子の福祉を無視していると言わざるを得ない。


 確かに難しい問題であるが、それだけに最高裁がどのような判断をするのだろうかと思って期待していたが、形式的な判断であり、深みもなく、がっかりした。



2014年07月17日(木) 営業秘密の侵害に対する厳罰化は難しい

 日経(H26.7.17)社会面で、ベネッセの顧客情報漏洩問題で、警視庁は、データ管理委託先の外部業者で働いていた派遣社員を不正競争防止法違反(営業秘密の複製)の疑いで逮捕する方針という記事が載っていた。


 この件ではベネッセの顧客情報管理にも若干落ち度があったようであるが、どれだけ管理を厳格にしても、内部の者による情報漏えいを100%防止することは難しいと思う。


 そのため、抑止策として刑事罰を厳罰化することが考えられる。


 ところが、不正競争防止法の営業秘密の侵害についての刑事罰はたびたび法改正され、法定刑は「懲役3年以下」「懲役5年以下」「懲役10年以下」と次第に厳罰化している。


 窃盗罪や業務上横領罪の法定刑が懲役10年以下なので、それとの均衡を考えると、これ以上の厳罰化は難しいであろう。


 そうすると、企業としてはセキュリティをより一層厳格化したり、万が一の漏洩に備えて情報を小分けにしたり、場合によっては情報を持たないなどの対策を取るしかないように思われる。



2014年07月16日(水) 痴漢事件 二審で逆転無罪

 日経(H26.7.16)社会面で、路線バスの車内で女子高生に痴漢をしたとして、東京都迷惑防止条例違反に問われ、一審で有罪判決を受けた中学教諭に対し、東京高裁は逆転無罪を言い渡したと報じていた。


 判決理由で裁判所は、携帯電話のメール送受信記録とバスの車載カメラの映像という客観証拠から、「右手は携帯電話を扱い、左手でつり革をつかんでいたと考えるのが妥当。被害者はリュックサックの接触を勘違いした疑いもある」と指摘した。


 常識的な判断であると思う。


 ところが、一審では被害者の供述が全面的に信用され、その結果有罪になっている。


 痴漢事件は訴えられた側にとっては恐ろしいと言わざるを得ない。



2014年07月15日(火) 沖縄「密約文書」で最高裁判決

 日経(H26.7.15)社会面で、1972年の沖縄返還時に日米両政府が交わした「密約文書」について、元新聞記者らが国に対し、情報公開法に基づき開示を求めた訴訟で、最高裁は、開示を認めなかった二審判決を支持し、原告側の上告を棄却したという記事が載っていた。


 最高裁と二審判決の結論は、開示を認めないということでは同じである。


 ただ、その結論の当否は別にして、二審判決では、密約文書がかつて作られたことを認定した上で、それを破棄したのであれば、破棄したことの立証責任は行政側にあるとした。


 これに対し、最高裁は、過去に作成されたことが立証された文書について、行政機関が保有していたと推認できるかどうかは「文書の性質、作成の経緯、保管状況などに応じて個別具体的に検討すべきだ」として、立証責任の転換までは認めなかった。


 しかし、かつて作成された文書であれば、開示請求の時点でも文書が存在する蓋然性は高い。


 しかも、仮に行政機関が破棄したのであれば、それを記録として残すことは容易であるから、不可能を強いるわけではない。


 そうであれば、請求する側が文書の存在を立証した以上、その後その文書を破棄したと主張するのであれば、破棄したことの立証責任は行政側にあるとした二審判決の方が論理的なように思える。



2014年07月14日(月) ベネッセの情報漏えいの損害賠償額

 日経(H26.7.14)社会面で、ベネッセの顧客情報漏洩問題の続報が載っていた。


 この事件では、ベネッセの顧客データベースの保守管理を受託しているグループ企業から、少なくとも760万件の情報漏えいがあったことが確認されている。


 そのため、その賠償金額はいくらになるかという憶測がネット上に書かれている。


 そのような記事では大抵、早稲田大学での江沢民国家主席の講演会参加者名簿1400人分を大学側が無断で警察に提供した事件では、裁判所は1件あたり5000円の慰謝料を命じてことを例に挙げている。


 そして、これをベネッセの事案二当てはめると380億円という巨額の慰謝料になっていまうことになる。


 しかし、早稲田大学の事案では、「無断で個人情報を警察に開示した」という事情があり、それが賠償額に反映していると思われる。


 ところが、ベネッセには故意に開示したという事情はないし、委託先の会社はかなり厳格に情報管理していたようである。


 そのような事情を考慮すると、とても1件5000円という額にはならないであろうし、かりにベネッセが、受講料を免除する方で還元するならば、裁判所は、それ以上の慰謝料は認めないのではないだろうか。



2014年07月10日(木) 脂の乗り切った弁護士が提携弁護士になっている

 日経(H26.7.10)社会面で、多重債務者の債務整理を弁護士資格のない者からあっせんを受けていたとして、東京地検特捜部は、東京の弁護士3人を弁護士法違反の罪で在宅起訴したという記事か乗っていた。


 在宅起訴された弁護士は、宮本孝一弁護士(46)、岩渕秀道弁護士(81)、吉田勧弁護士(53)である。


 気になるのは、これまで提携弁護士になるのは高齢の弁護士がほとんどだったと思うが、46歳、53歳という脂の乗り切った弁護士がこのようなことに手を染めていることである。


 弁護士が増えすぎ、飯が食えなくなったことが原因となっているのかもしれない。



2014年07月09日(水) 法定利率を5%から3%に引き下げ

 日経(H26.7.9)1面で、民法改正案の原案として、遅延損害金(いわゆる遅延利息)の法定利率を現行の5%から3%に引き下げ、3年ごとに1%刻みで改定する変動制を導入するという記事が載っていた。


 この改正は交通事故の被害者などの損害賠償額にも大きな影響を与えることになる。


 死亡した場合や後遺障害が残った場合には、事故に遭わなければ得られたはずの逸失利益から、運用して得られる利息分を差し引いて損害額を計算する。


 利息分を差し引くのは、将来得られる収入を、現時点で一括して得られるからである。


 最高裁は、この利息の利率は、法定利率にあわせて5%にすべきとしている(H17.6.14)。


 これが3%となれば、請求できる損害額が増えることになるから、実務に与える影響は大きいであろう。



2014年07月08日(火) 一審は懲罰的損害賠償に親和性のある判決である

 日経(H26.7.8)夕刊で、ヘイトスピーチを繰り返し、授業を妨害したとして、京都朝鮮学園が在特会などを訴えた訴訟で、大阪高裁は、学校の半径200メートル以内での街宣禁止と約1200万円の賠償を命じた一審判決を支持し、在特会側の控訴を棄却したと報じていた。


 この事件のヘイトスビートが違法であることは間違いない。


 問題は、一審の裁判所が「人種差別撤廃条約2条1項及び6条により,加害者に対し支払を命ずる賠償額は,人種差別行為に対する効果的な保護及び救済措置となるような額を定めなければならない」としている点である。


 「人種差別行為に対する効果的な保護及び救済措置となるような額を定めなければならない」というのであるから、これは懲罰的損害賠償の考え方に近いように思われる。


 そして、そのような解釈の結果、約1200万円というかなり高額の損害賠償を命ずるに至っている。


 しかし、わが国の法行為における損害賠償においては、懲罰的損害賠償の考え方は採用していない。


 大阪高裁は、賠償金額については一審を支持したが、記事からは前述の一審の考え方まで支持したのかは分からない。


 大阪高裁がどのような判断の枠組みで1200万円の損害金を認めたのか興味のあるところである。



2014年07月07日(月)

 日経(H26.7.7)夕刊で、東京女子医大が臨時理事会で、同医大病院で首を手術した2歳男児が死亡した医療事故で病院側の対応を批判していた学長を解任したという記事が載っていた。


 報道を見る限りでは、解任された学長の方に理があるように思える。


 ただ、たとえそうであっても解任の有効性にはほとんど影響しない。


 会社や学校法人などの内部紛争で解任決議の有効性が問題になることがあるが、当事者は解任の正当性の問題に拘泥して、手続きを無視していることが意外と多い。


 しかし、解任の有効性で最も重要なことは、決められた手続きをきちんと履践することである。


 東京女子医大の問題も、理事会で手続きを踏んでさえいれば、学長が争うのは難しいと思われる。



2014年07月03日(木) PTAは強制加入団体ではないが

 日経でなく朝日ネットニュース(H26.7.3)で、熊本市内の男性がPTAに対し、小学校のPTAに強制加入させられたのは不当として、会費など計約20万円の損害賠償を求める訴訟を熊本簡裁に起こしたと報じていた。


 この訴訟で損害賠償請求が認められるかどうかは別として、PTAは強制加入ではなく、任意加入団体であることは間違いないであろう。


 文科省も、PTAは任意加入団体であるとの見解を示していたと思う。


 しかしそれではPTA役員のなり手がなくなり、一部の父兄に負担が集中してしまうので、大っぴらには任意加入団体であるとは説明していないのが実情であろう。


 任意加入団体であるという法律上の理屈と整合性を取るのであれば、PTAを現状のあいまいな位置づけではなく、完全なボランティア団体として位置づけ直すのが正論である。


 しかし、果たしてそれがよいことなのかどうか。むしろ、あいまいなままにしておくのがよいのかも分からない。
 

 難しい問題である。



2014年07月02日(水) 盗撮用の運動靴の販売は迷惑防止条例のほう助犯

 日経(H26.7.2)社会面で、カメラを仕込んだ盗撮用の運動靴をインターネットで販売したとして、京都府警は、通信販売会社経営者を府迷惑行為防止条例違反のほう助容疑で逮捕したという記事が載っていた。


 その靴は、甲の部分にカメラを仕込み、レンズを上に向けているので、下から女性の下着を撮影することが可能であり、また、リモコン操作で撮影した動画を消去できるようにしていたそうであり。


 包丁を販売しても、殺人罪や傷害罪のほう助とはならない。


 しかし、それは料理をするという有用な用途がある以上、社会通念上、包丁の製造販売が犯罪のほう助に当たる評価することはできないからであろう。


 それに対して、靴の甲の部分にカメラを仕込み、レンズを上に向けている場合、盗撮しか使い道はないであろう。(靴の先だと、「迫力ある動画撮影のため」と言い訳できるかもしれないが。)


 それゆえ、迷惑行為防止条例違反のほう助と評価されてもやむを得ないと思われる。


 ただ、容疑者が頑強に「盗撮に使われるとは思わなかった」と言って犯意を否定すれば、ほう助の故意の認定はなかなか難しく、検察官は起訴しないかも知れない。



2014年07月01日(火) 菊地被告に一部無罪になるも懲役5年の判決

 日経(H26.7.1)社会面で、1995年の東京都庁小包爆弾事件に関与したとして、殺人未遂ほう助罪などに問われたオウム真理教元信者、菊地直子被告の裁判員裁判で、東京地裁は、懲役5年(求刑懲役7年)を言い渡したと報じていた。


 この事件で菊地被告は、爆発物取締罰則違反ほう助罪でも起訴されていたが、それについては、「爆発物がつくられるとまでの認識はなかった」として無罪とされている。


 求刑が7年であるから、爆発物取締罰則違反ほう助罪が有罪であっても懲役5年程度が通常であろう。


 その上、爆発物取締罰則違反ほう助罪は3年以上8年以下の懲役または禁錮とかなり重い罪であり、それが無罪となったのだから、懲役3年か4年が量刑相場であると思われる。


 そうすると、懲役5年の判決はやや重いなあという印象であるが、オウム真理教事件の悪質さが考慮されたのであろう。


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