今日の日経を題材に法律問題をコメント

2008年08月29日(金) 帝王切開死亡事件で検察が控訴を断念

 日経(H20.8.29)社会面で、帝王切開で女性が死亡し、医師が業務上過失致死を問われた事件で、検察は、福島地裁の無罪判決に対し、控訴を断念する方針と報じていた。


 控訴断念の理由は、地裁判決では、医師の過失の立証で、癒着胎盤の具体的な臨床症例が示されていないと指摘されたが、臨床症例の提示が困難と判断したためとのことである。


 しかし、検察の主張の根拠は医学書のみであり、具体的臨床症例がないことは初めから分かっていたことである。


 それなのに、「具体的症例がないから控訴を断念する」というのでは、起訴自体に問題があったということになるのではないか。



2008年08月28日(木) 性犯罪の前歴者をGPSで24時間監視

 日経(H20.8.28)夕刊に、韓国で、性犯罪の前歴者をGPSで24時間、行動を監視する制度が導入されるという記事が載っていた。


 装置は足首に装着され、外そうとするとセンターで分かるそうである。


 性犯罪を受けた被害者の不安を考えると、性犯罪者に対して、その刑期が満了した後も何らかの対策は必要であろう。


 ただ、日本では、装置を足に着けて、行動を24時間監視するシステムというのはなかなか理解は得られないだろう。



2008年08月27日(水) マジックミラーでのチェックでは効果は限定的ではないか

 日経(H20.8.27)夕刊に、警視庁が、取り調べ状況をチェックするために、ドアにマジックミラーを設置したという記事が載っていた。


 無理な取り調べをしていないかどうか抜き打ちでミラー越しに監視するためということである。


 悪いことではないと思う。


 ただ、無理な取調べが可能なのは、密室での取り調べだからであろう。


 そうであれば、大きなガラス張りの部屋で取調べをするなど大胆なことをしなければ、あまり効果はないのではないだろうか。



2008年08月26日(火) 刑事事件で、弁護士を変えると結論が変わるか

 日経(H20.8.26)社会面で、ライブドア事件の堀江被告の弁護団が辞任したという記事が載っていた。


 「上告審は新たな方針で」ということのようだ。


 1、2審で実刑判決だったから、被告人としては、弁護士を変えたら何とかなるのではないかと思うだろうし、その心理はよく分かる。


 しかし、刑事裁判の上告審では、弁護士を変えたぐらいで何とかなるというものではない。


 1審では弁護士の弁護活動によって結論が違ってくることはあり得る。


 とくに、窃盗事件などで、弁護人が示談交渉をきちんとやるかどうかで判決内容が異なることはある。


 あるいは、たまに質の悪い弁護士がおり、それを解任した場合には、結論が変わることはある。


 しかし、堀江被告の裁判は上告審であり、1、2審では同じ判断がなされている事件である。


 弁護団を変えたとしても、堀江被告の実刑判決という結論は100%変わらないだろう。



2008年08月25日(月) 英米法はルールが曖昧なのか

 日経(H20.8.25)5面に、トロンで有名な坂村教授が、「産業発展のために、大陸法系から英米法系に変えよ」というインタビュー記事が載っていた。


 坂村教授は、

「大陸法は緻密ではあるが、産業界の変化についていけない。」

「英米法は、法律ではあいまいなルールを定めておき、問題が起きたら裁判所が判断してルール化していく。」

「日本でも英米法導入を明確に宣言すべきである。」

と述べていた。


 確かに、産業界の変化に法律が十分ついていけてないという面はある。


 しかし、それは大陸法と英米法の問題なのだろうか。


 「英米法の法律はあいまい」というが、アメリカ法の条文を読むと、法体系ということは重視していないが、規定自体は結構細かい。


 しかも、日本でも最近はどんどん法改正されており、その際、アメリカ法は随分参考にしており、大陸法、英米法ということを意識しているとは思われない。


 もっとも、裁判官の頭が保守的であり、新しいビジネスに比較的冷淡という面はあるのかもしれないが、それは別問題であろう。



2008年08月22日(金) ロス銃撃事件で逮捕された三浦和義元社長−一事不再理効とは−

 日経(H20.8.22)社会面で、ロス銃撃事件で逮捕された三浦和義元社長の検察官と弁護側の主張について報じていた。


 記事では、一事不再理効にいう「同一の犯罪」とは何かが争点になっているとのことである。


 すなわち、日本では『殺人罪の共謀共同正犯』が認められなかったが、これとアメリカの『共謀罪』が「同一の罪」であれば、一事不再理効により『共謀罪』では処罰できないことになり、この点が焦点となっていると書かれていた。


 一事不再理効とは、「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない」というものである。


 そして一事不再理効の解釈としては、罪の同一性ではなく、裁こうとしている行為の同一性が問題にされるべきであろう。


 それゆえ、争点は『殺人罪の共謀共同正犯』と『共謀罪』が同一かどうかではなく、裁こうとしている行為は何かとなるべきであり、法廷の議論は少しズレているように思うのだが・・。

(但し、これは日本の法律解釈を前提にした評価であり、この事件はアメリカ法の解釈の問題であることは当然である)



2008年08月21日(木) 裁判員制度の実施延期もあり得る?

 日経(H20.8.21)社会面に、日弁連会長が、裁判員制度について「予定どおり実施するよう求める」との緊急声明を出したという記事が載っていた。


 この時期に「予定どおり実施を」という声明を発表したのは、実施が危惧されるからであろう。


 裁判員制度に対して、弁護士でも反対の声を上げている人は多い。


 実際に裁判員になる国民の不安は強く、マスコミも最近では裁判員制度に好意的ではないようである。


 ここで政治が動き出したら、裁判員制度の実施延期ということもあり得るかもしれない。



2008年08月20日(水) 帝王切開死亡事件で無罪判決

 日経(H20.8.20)夕刊で、福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性患者が死亡した事件で、福島地裁が無罪を言い渡したと報じていた。


 ただ、判決の要旨を読むと、微妙な判断である。


 判決では、医師が癒着胎盤と認識した時点で、剥離を継続すれば胎盤剥離面から大量出血することを予見することは可能だったとしている。


 また、直ちに子宮摘出手術をすれば出血量は相当少なかったであろうから、結果を回避する可能性もあったと判断している。


 大量出血の予見が可能であり、その結果を回避することが可能ならば、それを回避せずに胎盤剥離を続けたことには過失があるというのが通常の論理的流れである。


 ところが判決は、剥離を続行することが標準的な医療措置であるとして医師の過失を否定した。


 これは、剥離を続行せずに子宮摘出することは可能であったが、それをする義務まではないとしたものだろう。


 すなわち、結果回避可能性はあったが、結果回避義務まではないということである。


 なかなか難しい判断であり、高裁が同じような判断をするかは分からない。


 ただ、裁判官は世論に敏感である。


 この事件では、医師を起訴したことに対する医療現場からの批判は強く、その点は裁判官も無意識のうちに考慮するだろうから、高裁でも判断は覆らないのではないだろうか。



2008年08月19日(火) シーシェパードに逮捕状

 日経(H20.8.19)社会面に、調査捕鯨船が妨害行為を受けたとして、シーシェパードのメンバー3人を威力業務妨害容疑で逮捕状を取ったという記事が載っていた。


 他の新聞記事によれば、「南極海は公海のため通常、日本の捜査権は及ばないが、公安部は妨害活動が海上でのテロ行為と認定し、海賊行為などを禁じた『海洋航行不法行為防止条約』を初適用した」とのことである。


 しかし、刑法1条2項では、日本船舶において罪を犯せば日本の刑法が適用できると定めている。


 そして、「罪を犯す」とは、犯罪行為の一部が日本国内や日本船舶内で行われた場合も含むとされている。


 映像を見ると、シーシェパードのメンバーは、発煙筒を投げ込んだり、ロープを投げてスクリューに絡みつかせたりしているから、犯罪行為の一部が日本船舶で行われているといえる。


 それゆえ、日本の刑法が適用できるケースであり、条約を適用するまでもなかったように思うのだが。



2008年08月18日(月) 弁護士紹介をビジネスとすることについて

 日経(H20.8.18)16面で、「増員時代 生き残りをかけ弁護士もマーケティング」という記事が載っていた。


 「紹介待ち」から「選ばれる事務所」への脱皮を目指して、広告を工夫したり、ITを駆使したりしている事務所を紹介していた。


 その記事の中で、現在、弁護士を紹介することで手数料をとることは禁じられていることが書かれていた。


 そのとおりであり、理由は、事件ブローカーが暗躍し、事件漁りが横行する恐れがあるからである。


 ただ、リーガルサービスを受けることを望んでいる人と、顧客を獲得したいと思っている弁護士とを橋渡しし、それをビジネスにすることは理念としては悪くないと思う。


 もちろん何らかの規制は必要であろうが、弁護士紹介をビジネスとすることは、いずれは解禁されるべきではないだろうか。



2008年08月15日(金) 法律事務所は『サービス機関』である

 日経(H20.8.15)5面で、「特許庁が顧客対応室を設置」という記事が載っていた。


 特許の申請をする企業や個人などの要望や苦情にこたえ、『サービス機関』としての意識を徹底する狙いだそうである。


 私の事務所は特許に特化しているわけではないから、特許庁と対応する機会はそれほど多くはないが、印象としては特許庁の対応は悪くはないのではないか。


 それだけに、さらに「サービス機関の意識を徹底させる」ということはとてもいいことである。


 それに比べて、法律事務所の電話対応はあまりよくない。「うちの事務所はあんな対応しないよう気をつけよう」と思うことがときどきある。



2008年08月14日(木) 「企業内弁護士に注目が集まる」、のか?

 日経(H20.8.14)3面の『なるほどビジネスTime』というコラムに、弁護士が急増し、「これからは企業内弁護士に注目が集まる」と書いていた。


 しかし、企業内弁護士については、弁護士資格があることで特別扱いしてもらえると考える弁護士側と、他の社員の給与体系との整合性に苦慮する企業側とでずれが生じやすく、企業は採用に躊躇している。


 今後は、正社員として入社希望する人が、たまたま資格として弁護士資格もある程度に考えなければ、企業に就職するのも難しくなるかもしれない。



2008年08月13日(水) ストーカー規制法違反の判事が上訴権放棄

 日経(H20.8.13)社会面に、ストーカー規制法違反に問われ、懲役6月、執行猶予2年の有罪判決を受けた下山判事が、上訴権放棄を申し立て、有罪判決が確定したという記事が載っていた。


 実刑判決を受けたときに上訴権を放棄することはしばしばある。


 1審判決を受けた後は未決勾留中も受刑したのと同じとされるので、上訴期間が過ぎて自然確定しても、上訴権放棄しても、満期日は同じである。


 それでも上訴権放棄するのは、早く受刑者としての環境に移りたいと考えたり、一日でも早く刑務所に行き、中で先輩となった方がやりやすいと考えたりする人がいるからである。


 しかし、下山判事は執行猶予判決であったから、上訴権放棄をした理由はよく分からない。


 判決を早く確定させて、一日でも早く執行猶予の期間を終わらそうとしたのであろうか。



2008年08月12日(火) LDH(旧ライブドアH)が堀江被告らを提訴

 日経(H20.8.12)社会面で、LDH(旧ライブドアH)が、堀江被告らライドプア旧経営陣らに対し、堀江被告らの証取法違反により会社が損害を被ったとして、総額35億円の損害賠償を求める訴えを提起したと報じていた。


 会社に損害を与えた以上、訴えは当然であろう。


 ただ、損害額を固めにみているようであるが、旧経営陣が会社に与えた損害はその程度で済むのかという疑問はある。



2008年08月11日(月) 会社でのメールの監視はどこまでできるか

 日経(H20.8.11)14面で、「会社での社員のメールの監視はどこまでできるのか」という記事が載っていた。


 その中で次のような裁判例を紹介していた。


 部下の女性社員からセクハラ容疑をかけられた男性上司が、その女性のメールをシステム担当者に指示して転送させ、常時監視していた。

 業務システムだったことなどを理由に男性側が裁判に勝った。

 しかし、「メールの私的利用の禁止や監視基準が社内で告知されていなかったうえ、個人的理由による監視だった」として、この裁判には批判が出ている。



 この記事で言っている判決は平成13年12月3日付け東京地裁判決のことであろう。


 確かに、会社としては、無用なトラブルを事前に防止するために、メールの監視基準を明らかにすることが望ましい。


 しかし、メールの私的利用の禁止や監視基準が社内で告知されていなければ、メールの監視が当然にプライバシー侵害になるわけではない。


 そもそも、上記判決は、事実関係を詳細にみると、問題ある判決とはいえないと思う。


 裁判所が認定した事実は次のとおりである。

 男性上司にセクハラの事実がなかった。

 メールの私的利用の禁止や監視基準が社内で告知されていなかったが、パスワードは各人の氏名がそのまま用いられており、プライバシーが保護されているという期待は低かった。

 女性の社内でのメールの私的利用の程度は、許される限度を著しく逸脱していた。

 男性は当該部署の部長であり、監視できる立場にあった。



 女性のプライバシー侵害の主張が認められなかった一番大きな理由はセクハラの事実がなかったということだろうが、結論として妥当な判決ではないかと思う。



2008年08月08日(金) 少年は誘導に乗りやすい

 日経(H20.8.8)社会面で、中学3年生の長女の父親殺人事件で、殺人の動機を「成績が下がり、親の知られる前に殺そうと思った」「両親から叱られイライラしていた」と供述していると報じていた。


 中学生の子どもがなぜ父親を殺さなければならなかったのかという動機を解明することは重要である。


 ただ、少年は誘導に乗りやすいという特質がある。


 その意味で、長女の供述している動機は分かりやすいが、なんだか大人の勝手な解釈に乗っただけのようにも思える。



2008年08月07日(木) ジャスラックが動画投稿サイトを提訴

 日経(H20.8.7)社会面に、ジャスラックが、動画投稿サイト・パンドラTVに対し、「楽曲を無断使用した」として提訴したという記事が載っていた。


 これに対し、パンドラTVは「サイトはプロバイダ責任制限法に基づき運営されている」「サイトで発生する著作権侵害について責任を負わない」と主張しているそうである。


 しかし、プロバイダ責任制限法は、権利侵害の被害が発生した場合であっても、その事実を知らなければプロバイダは賠償責任を負わないとはしているが、それに当てはまる事案ではない。


 パンドラTVの主張は到底通らないだろう。



2008年08月06日(水) 外国公務員への賄賂に不正競争防止法を適用

 日経(H20.8.6)社説で、ODA事業を巡り、ベトナム・ホーチミン市の幹部に賄賂を贈った事件について書いていた。


 この事件の罪名は、刑法の贈賄罪ではなく、不正競争防止法違反であり、一般には意外に思われるかもしれない。


 外国公務員等に対する不正の利益供与の規定は平成10年に新設され、平成16年に日本国民の国外犯処罰が規定されている。


 国際取引は今後も拡大するであろうから、不正競争防止法が活用される場面は多くなってくるだろう。



2008年08月05日(火) 採用に際し、禁煙を条件とすることが違法か

 日経(H20.8.05)夕刊で、禁煙を採用条件とする会社が出てきたという記事が載っていた。


 禁煙を採用条件とすることには喫煙者からは反発があるかもしれない。


 確かに、喫煙を理由に解雇することは、よほど合理的理由がない限りできないだろう。


 しかし、採用については、最高裁は、「企業は、労働者を雇傭するにあたり、いかなるものを雇い入れるか、いかなる条件で雇うかについて、原則として自由に決定できる」と判断している(三菱樹脂事件)。


 喫煙が健康に害があることは明らかであり、企業が喫煙しない社員だけを採用するということはむしろ合理的である。


 それゆえ、採用に際し、禁煙を条件とすることが違法となる余地はないだろう。



2008年08月04日(月) 税金は「出資」か

 日経(H20.8.4)25面に、総務省が推進する自治体会計に日本公認会計士協会が異議を唱えているという記事が載っていた。


 例えば、総務省の基準モデルでは、税金は主権者からの拠出であるから、「売り上げ」ではなく「出資」としている。


 しかし、出資というのは自らの意思で出捐することをいうのではないだろうか。


 税金は法律によって納税義務が課されているのだから、自らの意思で出捐したとはいえず、「出資」とするのは無理があるのではないか。


 公認会計士協会がこれに異議を唱えているとはいえ、総務省が発表しているのだから、税金を「出資」とすることも、会計原則の考え方としてはあり得るということなのだろう。


 会計原則の考え方には、しばしば馴染めないところがある。


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