今日の日経を題材に法律問題をコメント

2007年03月30日(金) 「シェーン」の著作権は消滅

 日経(H19.3.30)社会面に、知財高裁は、映画「シェーン」の著作権は消滅と判断したという記事が載っていた。


 著作権法を改正して、2004年1月1日から、映画の著作権の保護期間を50年間から70年間に延長した。


 これにより、立法者は、2003年末で著作権が切れる作品(「シェーン」など)にも適用され、著作権保護期間が延長されると考えていた。


 しかし、知財高裁は2003年末で著作権が切れる作品には適用されないと判断したようである。


 私は立法者意思を尊重すべきではないかと考えていたが、知財高裁でこのような判断がされた以上、最高裁で覆ることはないだろう。



2007年03月29日(木) 『生存の可能性は3割』の根拠は?

 日経(H19.3.29)社会面に、リンチ殺人事件で、警察に捜査ミスがあったとして、遺族が県などに損害賠償を求めた事件で、東京高裁は、「適正捜査をしても、生存の可能性は3割程度」として、捜査の怠慢と殺害の因果関係を認めた一審判決を破棄し、賠償額を9分の1に減額した、という記事が載っていた。


 この判決に対し、遺族は、「『適正捜査をしても、生存の可能性は3割程度』という根拠が何も示されていない」と批判していると報じていた。


 確かに、「生存の可能性は3割程度」といっても、「3割」というのは想像に過ぎない。

 根拠はないに等しい。


 ただ、因果関係が、「ある」か「ない」かというように二者択一であるとすれば、この事件では捜査ミスと殺害とには因果関係は「ない」という結論にならざるを得なかったのだろう。


 その場合には、遺族の請求は棄却という結論になる。


 そのため、「適正捜査をしても生存の可能性は3割程度」と認定することによって、一部でも損害賠償を認めようとしたのだろう。



2007年03月28日(水) 誤って殺人の容疑者として写真を掲載された事件の和解金が150万円

 日経(H19.3.28)社会面に、毎日新聞が、殺人事件の容疑者として誤って別人の写真を掲載したことに対し、写真を掲載された女性が毎日新聞に損害賠償を求めた事件で、同社が解決金150万円を支払うことで和解したという記事が載っていた。


 殺人の容疑者として写真を掲載されたのだから、その精神的損害が著しいことは容易に想像できる。


 それで150万円というのは賠償額として低い気がするが・・。



2007年03月27日(火) 簡易裁判所ではときどき大胆な判決がでる

 日経(H19.3.27)社会面で、世田谷区のごみ集積所から古新聞を無断で持ち去ったとして条例違反に問われた古紙回収業者に対し、東京簡裁は、条例が無効であるとして無罪を言い渡したと報じていた。


 無効の理由が記事からはよく分からないが、条例が無効であると判断するのは裁判官として勇気がいる。


 条例が無効と判断した場合、これが上告審でどのように判断されるのかは気になるし、変な判決を書いて出世に影響してはいけないと思うのは人情だと思う。


 それに比べて、簡易裁判所の裁判官はほとんどがそのまま定年退職を迎えるから、出世は関係がない。


 そのせいかどうか、簡易裁判所ではときどき大胆な判決がでる。



2007年03月23日(金) 宮内被告にも実刑

 日経(H19.3.23)社会面で、ライブドア事件で実刑となった宮内被告が保釈されたと報じていた。


 堀江被告は、懲役2年6月の実刑判決であり、この判決のときは、「執行猶予が予想される宮内被告とバランスが取れず、刑が重過ぎるのではないか」と思った。


 ところが、宮内被告が実刑ということであれば、堀江被告とのバランスは取れる。


 そうはいっても、宮内被告の供述がなければ事件の全体像は把握できなかったのであり、反省の態度も見せていた。


 それでも実刑だから、重たいなあというのが実感である。


 弁護人は執行猶予が付くことを確信していただろうから、「立場がないだろうなあ」と同情してしまう。



2007年03月22日(木) マニフェスト解禁 しかし制限は多い

 日経(H19.3.22)14面で、統一地方選挙の知事選が告示されたことに関連して、マニフェストが首長選への解禁についての記事が載っていた。


 しかし、首長選にもマニフェストは配布できるようになったものの、配布できるマニフェストは最大A4判1枚だけ、枚数は政令指定都市の市長選でも7万枚でしかない。


 これでは投票者の全員に行き渡らない。


 せめてインターネットでの閲覧を認めるべきではないだろうか。



2007年03月20日(火) 個人情報保護法にガイドライン

 日経(H19.3.20)1面トップで、主要省庁が、緊急時に例外的に認められる個人情報の第三者提供について、そのガイドラインを示す方針と報じていた。


 例として、「事故等で意識不明になった患者の安否情報の提供を病院に認める」ということが挙げられていた。


 そんなことまでガイドラインを示さないと情報提供できないのかと思う。


 ただ、個人情報の第三者提供については、みんな必要以上に神経質になっているから仕方ない。


 その意味でガイドラインの作成には賛成であるが、問題の根本は、個人情報保護法の規定があまりに曖昧なことにあると思う。



2007年03月19日(月) 社外取締役としての立場と、顧問弁護士としての立場の利益相反

 日経(H19.3.19)19面で、法律事務所が大型化し、当事者双方から依頼を受ける可能性が高くなっており、その予防に追われているとの記事が載っていた。


 その記事の中で、ある法律事務所では、継続的に業務を受任している企業の場合、弁護士がその会社の社外取締役に就任することを禁止していると書いていた。


 確かに、社外取締役に求められる独立性と、業務として受任した弁護士が求められる役割とは違うから、筋の通った考えであると思う。


 ただ、大企業ならばいや知らず、中小企業で弁護士が社外取締役に就任している場合、企業は、社外取締役の役割と顧問弁護士としての役割との両方を期待しているのではないだろうか。


 なかなか難しい問題であり、今後、大手法律事務所では議論になってくるかもしれない。



2007年03月16日(金) 病気腎移植問題で、調査委員会の委員13人中12人が徳洲会の関係者

 日経(H19.3.16)社会面に、宇和島徳洲会病院の病気腎移植問題で、病気腎移植の妥当性を検証している調査委員会の委員13人のうち12人が徳洲会グループと関係があったという記事が載っていた。


 そして、このうち弁護士2名の委員は、徳州会グループの顧問弁護士と同じ事務所に所属する同僚であったとのことである。(但し、ネットニュースではこの部分が削除されている)


 外部専門家らでつくる専門委員会では、「病気腎の摘出は必要なかった」とする報告をしている。

 これに対し、この調査委員会では、「病気腎移植は『適切』『容認できる』」という見解を示している。

 そのため、記事では、「検証結果の公正性が問われそうである」としていた。


 しかし、もともとこの調査委員会は、病院内部の委員会なのだから、委員が徳洲会グループと関係があっても、それだけで不公正とはいえないであろう。


 調査委員会での検証過程を外部に明らかにし、そこに不公正な経緯が伺われなければ、問題にすることはないと思う。


 ただ、この事件はマスコミ等の注目を浴びている。

 それゆえ、徳洲会グループの顧問弁護士と同じ事務所の弁護士が委員になることはあらぬ誤解を招くことは予想されたはずである。


 そうであれば、委員になるのは自粛した方がよかったのではないかと思う。



2007年03月15日(木) 明日 堀江被告の判決

 日経(H19.3.15)社会面に、「ホリエ流の残像」という記事が載っていた。


 明日がライブドア事件の堀江被告の判決なので、他の新聞でも何らかの企画記事を書いていた。


 どのような判決になるかは分からないが、これまでの記事からすると、有罪は間違いないだろう。


 問題は実刑になるかどうかであるが、他の被告人とのバランスを考えると、実刑ではなく、懲役3年執行猶予5年の判決になるのではないだろうか。



2007年03月14日(水) 「組織的」とは

 日経(H19.3.14)4面に、日興コーディアルの不正会計問題で、東京証券取引所が上場を維持する判断をしたことについて、その解説記事が載っていた。


 解説によれば、東証は、上場廃止の基準として、組織的かどうか、悪質か否かなどを判断要素としており、日興の場合には組織性がなかったと判断したとのことである。


 組織的という言葉はしばしば言われる。


 しかし、「組織的」という言葉はあいまいなである。


 社長や専務クラスが関与していれば「組織的」といえそうである。


 平取締役の場合はどうだろうか。


 部長クラスでも、関与する人数が10以上いれば、組織的といえるようにも思う。

 
 結局何が「組織的」かはあまりはっきりしない。


 それを判断基準とすることに無理があるのではないだろうか。



2007年03月13日(火) 赤ちゃんポストは適法か

 日経(H19.3.13)社会面に、赤ちゃんポストの問題で、法務大臣が、保護責任者遺棄罪には当らないとの見解を示したという記事が載っていた。


 「赤ちゃんポスト」とは、事情があって親が育てられない赤ちゃんを受け入れる施設であり、熊本市の慈恵病院が設置する計画を進めている。


 遺棄罪における「遺棄」とは、生命・身体が危険となるところに置くことをいう。


 赤ちゃんポストの場合は、受け入れを前提とした病院に預けるのだから、遺棄罪を適用することには無理があると思う。


 しかし、それは刑法犯に該当しないというだけである。


 民法では、親権を行う者は、子どもの監護及び教育をする権利と、義務を負うとされている。


 赤ちゃんポストは、その親の義務を一方的に放棄することであり、そのようなことに国がお墨付きを与えていいのかという気がする。



2007年03月08日(木) 松本被告の弁護人に、裁判所が懲戒請求を申し立て

 日経(H19.3.8)社会面に、オウム真理教事件の松本被告の弁護人に対し、裁判所が懲戒請求を申し立てたという記事が載っていた。


 2審の審理をすることなく死刑を確定させた責任は弁護人にある。


 それゆえ、懲戒処分が相当であるとは思う。


 ただ、裁判所もしつこいなあという感じはする。


 一度挙げたこぶしを降ろせなくなったということなのだろうか。



2007年03月07日(水) 民事再生手続きは、現経営陣の思い通りにできるわけではない

 日経ではなく、朝日(H19.3.7)夕刊で、平成電電の巨額詐欺事件で、同社が民事再生の申立てを申請する直前まで、業績好調と偽って出資を募っていたと報じていた。


 民事再生手続きは法律に基づいた手続きであり、裁判所の関与や債権者の監視があるから、怪しいことがあると発覚する極めて可能性は高い。


 それなのに平気で民事再生を申し立てたこと自体が不思議である。


 会社更生手続きと違い、民事再生手続きは、経営陣が残ることができるからら、それまでと同じように、自分の好きなとおりにできると勘違いたのだろうか。


 そうであれば、民事再生手続きを甘く見ていたというしかない。



2007年03月06日(火) 私用での運転なのに『業務』というのはおかしい

 日経(H19.3.6)社会面で、法制審議会は、「自動車運転過失致死傷罪」を新設し、自動車運転事故の罰則を強化することを答申したと報じていた。


 これまで自動車運転には「業務上過失致死傷罪」が適用されてきた。

 ところが、この罪は最高刑が懲役5年でしかないことから、被害者感情に配慮し、新たに運転過失致死傷罪を新設し、最高刑を懲役7年以下とするとのことである。


 「自動車運転過失致死傷罪」を新設することは、刑の引き上げという点だけでなく、自動車事故に「業務上過失致死傷罪」という罪名を適用することの不自然さを回避するという意味でも賛成である。


 というのは、個人がマイカーを運転していた場合にも「業務上過失致死傷罪」という罪名を適用することは、『業務』という言葉の本来の意味からしておかしいと思うからである。


 それゆえ、「自動車運転過失致死傷罪」の新設後は、「業務上過失致死傷罪」と併用せず、自動車事故には「自動車運転過失致死傷罪」のみで起訴することが望まれる。



2007年03月05日(月) 裁量労働制は営業種には適用できない

 日経(H19.3.5)18面の「リーガル3分間ゼミ」というコラムで、裁量労働制について書いていた。


 裁量労働制とは、仕事の仕方や時間配分を使用者が細かく指示することが適切でない業務について,実際に働いた時間と関係なく、予め労使で決めた労働時間を一日の労働時間とみなす制度である。


 業種は専門業務型と企画業務型とがあり、かなり厳しい要件が定められているため、採用している会社は多くないようである。


 ところで、ときどき営業について裁量労働制を採用したいという相談を受ける。


 働いた時間ではなく、営業の成果によって賃金を支払いたいということなのだろう。 


 しかし、営業については裁量労働制は認められていない。


 そこでそのような回答をすると、がっかりされることがある。



2007年03月02日(金) 電気ストーブで化学物質過敏症

 日経(H19.3.2)社会面で、電気ストーブを使ったため化学物質過敏症になったとして、販売したスーパーを訴えた事件で、最高裁は上告を受理せず、販売責任を認めた二審が確定したと報じていた。


 化学物質過敏症の事件で難しいのは、原因との因果関係の立証である。


 とくに、電気ストーブが原因で化学物質過敏症になるということはあまり考えられないから、よく因果関係を立証できたなあと思う。


 よほど製品がひどかったのだろうか。



2007年03月01日(木) 名古屋市地下鉄談合事件で、自主申告したハザマ担当者は逮捕されず

 日経(H19.3.1)1面で、名古屋市地下鉄談合事件で、独禁法違反容疑で担当者らが逮捕されたと報じていた。


 ところが、不正関与を自主申告したハザマの関係者は逮捕されなかったもようである。


 それだけでなく、今後予想される罰金や課徴金も免除されるとのことである。


 こうなると、今後は談合に関与したと疑われた場合、自主申告せざるを得なくなるだろう。


 < 過去  INDEX  未来 >


ご意見等はこちらに
土居総合法律事務所のホームページ


My追加
-->