今日の日経を題材に法律問題をコメント

2005年11月30日(水) 得したのは銀行か?

 日経(H17.11.30)1面で、「TBSと楽天が和解協議入りで合意」と報じていた。


 合意した内容は、「楽天は、保有するTBSの株の一部をみずほ信託銀行に信託し、議決権を行使しないことを約束したうえで、提携の協議をする」というものである。


 しかし、議決権行使をしないというのであれば、なにも銀行に信託しなくても、当事者間の合意だけも可能であろう。


 今回の合意の方法は、何だか、博徒の世界で、力ある仲介人に武器を預けて、話し合いをするような感じである。




2005年11月29日(火) アスベスト被害の立証は難しい

 日経(H17.11.29)社会面に、アスベスト訴訟で和解という小さな記事が載っていた。

 記事のよれば、原告の請求額は約8700万円であったが、和解額は700万円であり、請求額の10%にも満たない。


 このような低い和解金額になったのは、アスベストの粉塵と肺がんとの因果関係の立証が非常に難しく、判決となると、原告敗訴が必至だったからであろう。


 この種の裁判では、被害者は、いつも因果関係立証の壁が立ちはだかっている。

 そのため、和解というのは現実的解決であり、やむを得ないと思う。


 ところで、先日、中古ビルの売買契約書をチェックしたところ、特約で、「売主はアスベストの有無については確認しておらず、アスベストによる被害が生じたとしても売主は一切の責任を負わない」という条項が入っていた。


 アスベストに関し、相当注意を払うようになっているようである。



2005年11月28日(月) 西村議員が弁護士法違反で逮捕

 日経(H17.11.28)1面に、「西村議員が弁護士法違反できょう逮捕」という記事が載っていた。

 弁護士が、多重債務者を食いものにする整理屋に名義貸しするということはよく聞くが、国会議員が名義貸しするというのは初めて聞いた。

 しかも、報道によるとその報酬は高く、依頼者は、他の弁護士に依頼するよりもかえって損をしているように思われる。


 したがって、西村議員が弁護士法違反で刑罰を受けるのは当然であろう。



2005年11月25日(金) 偽造建築士に弁明の機会を与える

 日経(H17.11.25)1面に、耐震強度偽造問題で、姉歯建築士の免許取り消しにあたり、弁明の機会を与える聴聞を開いたと報じていた。


 憲法31条は、刑事手続きについて法定手続きを保障しているが、行政処分であっても手続きの適正を確保するために、できるだけ告知と聴聞の機会を与えるべきであるという考えに基づいている。


 そのため、いきなり建築士の免許を取り消すことはできないわけである。



2005年11月24日(木) 配当基準を東京方式で統一

 日経でなく、朝日夕刊(H17.11.24)に、競売売却益について、関東方式に軍配という記事が載っていた。


 これまで、競売の売却益について、請求額を基準に配当する大阪方式と、もともとの債権額を基準に配当する東京方式があった。

 最高裁は、これをもともとの債権額を基準に配当する東京方式に統一したものである。


 基準を統一することは望ましいことである。


 ただ、大抵は東京の基準で統一が図られているようであり、大阪の関係者は面白くないかもしれない。



2005年11月22日(火) 構造計算書偽造問題について

 日経(H17.11.22付)3面で、マンションの構造計算書を偽造した問題について、「どうなる被害補償」という囲み記事が載っていた。


 その記事では、品確法によって、売主は10年間は責任を負うし、また、過失を立証できれば施工業者、民間検査会社にも不法行為責任を追及することが可能であると書いていた。


 そのとおりであり、購入者としては、売買契約を解除して代金の返還を受けるのが一番確実であろう。


 問題は、販売会社が倒産し、施工業者、民間検査会社に不法行為責任を問わざるを得なくなった場合である。


 不法行為責任を問う場合の問題として、まず施工業者、民間検査会社の過失の立証が容易ではないということがある。


 また、たとえ過失が立証できたとしても、購入価格全額が損害と認められることはないと思われる。

 なぜなら、欠陥マンションとはいえ、そのマンションの価値がゼロとはいえず、そのマンションの現在価値の分だけ損害額から差し引かれるからである。


 そうなると、マンション販売会社が倒産しないことを祈るしかないし、そのためには国による緊急融資も検討されるべきではないだろうか。



2005年11月21日(月) 販促目的の場合は引用が認められる範囲が狭くなるか

 日経(H17.11.21付)19面の「リーガル3分間ゼミ」というコラムで、自社製品の販売促進のため、紹介された記事を引用したいが著作権侵害にならないかことについて書いていた。

 その記事の中に、「著作権法が引用を認めているのは、言論の自由を保障しようとしたものであるから、販売促進目的の場合には、引用が認められる範囲は狭くなるのではないか」という趣旨のことを書いていた。


 ただ、その記事でも、「最終的には引用の目的はあまり重視されないだろう」としていた。


 
 引用が認められる範囲を狭く解すると、たとえそれが経済的な表現行為であっても、表現行為が萎縮することは同様であり、望ましいことではない。


 したがって、販促目的だからといって、引用が認められる範囲を狭く解する必要はないと思う。



2005年11月18日(金) 保険会社には契約の名義変更に応じる義務はないとの判決

 日経(H17.11.17)社会面に、当面の治療費などを得るために、加入している生命保険を保険買い取り会社に売却した男性が、保険会社に対し、契約名義の変更を求めた訴訟で、東京地裁は男性の請求を棄却したと報じていた。


 主な理由は、名義変更する義務が保険会社にはないということのようである。


 一般的にいって、契約というのは相手方を信頼して締結するものであるから、契約者が一方的に変更できるとなると、安心して契約関係に入ることができなくなる。


 それゆえ、契約者の変更には、相手方の同意が必要とされている。


 その意味では、東京地裁の請求棄却の判決は、オーソドックスな判断といえる。



 ただ、アメリカでは、生命保険の売買は一般的なようである。


 そのため、今後、外資系の保険会社が、保険の譲渡を認めるということをうたい文句にした保険商品を販売するようになるかもしれない。



2005年11月17日(木) 「自白」は、難解な法律用語?

 日経(H17.11.17)社会面に、裁判員制度の導入に向け、日弁連が、難解な法律用語の言い換え例を提案したという記事が載っていた。


 例えば、「自白」を「自分が犯したことについて自ら話すこと」と言い換えている。


 しかし、これでは言い換えではなく、国語辞典みたいである。


 そもそも、「自白」という言葉は一般化していると思うのだが、そうではないのだろうか。



2005年11月16日(水) 監督が参加する選手会は労働組合といえるか?

 日経(H17.11.16)スポーツ面に、ヤクルトの古田新監督は、選手会に残留できるのかという記事が載っていた。


 選手会は、自らを労働組合と位置づけている。

 ところが、使用者側の立場にある者(条文上は「使用者の利益を代表する者」)が入っている組織は、労働組合法にいう労働組合とは認められない。

 そして、監督は使用者側の立場にある者として、監督が入っている選手会は労働組合と認められないのではないかという疑問があるからである。


 問題は、どのような場合に「使用者側の立場にある者」になるかである。


 一般的には課長以上は「使用者側の立場にある者」とされているが、そのような役職名だけで決めることはできず、指揮監督関係等を個別具体的に検討するしかない。


 そこで、プロ野球監督の具体的権限等を見てみると、監督は、獲得して欲しい選手や、コーチの採用について球団に意見を言うことは多いようである。


 それだけを見ても、プロ野球の監督は、選手側というよりも球団側の立場に立っているといえるのではないだろうか。


 となると、古田新監督が選手会に加入したままだと、選手会は労働組合と認定されない可能性は高いと思う。



2005年11月15日(火) 車掌が、乗務中、風景などをカメラ撮影

 日経でなく、朝日ネットニュース(H17.11.15)で、JR東日本の新幹線車掌が、乗務中に運転台の様子や風景などをデジタルカメラで撮影し、自分が開設したホームページで公開していたとして、懲戒解雇されたと報じていた。


 懲戒解雇理由は、「職務専念義務に違反している」ということのようである。


 カメラ撮影の時間は一瞬であろうし、それによって、実際上、被害を被った人はいないであろうから、懲戒解雇は厳しいように思うかもしれない。


 しかし、撮影に気が取られ、本来の業務がおろそかになることは十分推測できる。
 
 とくに、車掌という業務は安全が重視されるのであるから、本来の業務がおろそかになるということは問題であろう。


 また、そんなことをしていることを乗客が知ったら、安全に対する不安が生じ、会社の信用失墜につながりかねない。


 したがって、懲戒解雇が厳しすぎるとはいえないと思う。



2005年11月14日(月) ブティック型法律事務所?

 日経(H17.11.14)19面に、「中小法律事務所が、専門店型(ブティック型)法律事務所で生き残りへ」いう記事が載っていた。

 
 現在、大手法律事務所の所属弁護士は200人を超しており、いまだに規模の拡大を図っている。

 それに対し、中小法律事務所が、数よりも質を強調して独自路線を歩んでいるという内容の記事であった。


 その路線は正しいと思う。

 大手法律事務所に規模で対抗しても仕方ないし、また、ほとんどの案件は弁護士が数人いれば処理は可能である。


 私の事務所も小さいので、大手法律事務所がやらないことをする「ニッチ型」法律事務所を目指している。



2005年11月11日(金) イラストによる場合も肖像権侵害になるか

 日経(H17.11.11)社会面で、和歌山毒物カレー事件の林真須美被告の法廷内の肖像をイラストで描いたことが肖像権侵害になるかについて、最高裁は一部のイラストを適法と判断したと報じていた。


 これに対し、1審の大阪地裁は、「イラストであるか写真であるかは肖像権侵害の有無を決定する本質的な問題ではない」「但し、その写実性が写真に劣る場合には、違法性阻却事由の有無や肖像権侵害の程度を判断する要素として斟酌される」と判断している。


 しかし、いかに写実的に描いたとしても、イラストによる場合は、写真と受ける印象が違うのではないだろうか。


 記事によれば、最高裁は、イラストも受忍限度を超えれば違法になることがあるとして、1、2審よりも違法となる場合を狭く解している。


 これはイラストと写真とが本質的には違うことを前提にしており、妥当な判決であると思う。



2005年11月10日(木) 弁護士検索システム稼働中

 日経(H17.11.10)社会面に、厚生労働省が、医師の氏名や、行政処分を受けた場合は、処分期間中はその内容を検索・確認できるシステムを導入する方針であると報じていた。


 その記事の最後に、弁護士については日弁連がすでにそのようなシステムを稼動中であると書いていた。


 それで、日弁連のホームページで弁護士検索画面を出すと、名前や住所で検索することができ、業務停止中の弁護士はその旨も表示されることになっている。


 知らなかったなあ。



2005年11月09日(水) 警察庁の記者会見に雑誌社を排除することは違法か

 日経(H17.11.9)社会面に、雑誌社などが、警察庁の記者会見に出席させないのは報道の自由の侵害であるとして取材参加を求める仮処分を申請したことに対し、東京地裁は、仮処分申請を却下したと報じていた。


 却下決定の主な理由は、「報道の自由は、取材を受ける義務まで課すものではない」ということのようである。


 しかし、警察発表という公的な情報提供の場なのだから、国民の知る権利の見地からは、できるだけ多くのマスコミに情報を提供すべきであろう。


 それゆえ、記者会見に新聞社の出席だけ認めて、雑誌社を排除していいのかという疑問はある。


 ただ、雑誌社といっても多様であり、どこかで線引きをせざるを得ない。

 それゆえ、記者会見に出席できるマスコミを限定することも、それが著しく不合理でない限り許されるということになるのだろう。



2005年11月08日(火) ジャンボ尾崎が民事再生

 日経(H17.11.8)スポーツ面に、民亊再生手続が開始された尾崎将司について、日本プロゴルフツアー機構の幹部会は、全員一致で、尾崎選手が試合に出場することに問題はないとしたと報じていた。


 しかし、民亊再生は、経済的再生をはかるための手続きであり、試合出場することに問題ないのは当たり前である。


 そんなことをわざわざ話し合うこと自体、民事再生の趣旨を理解していないのではないか。


 むしろ、「経済的に再生して、今後もいい成績を残して欲しい」くらいのエールを送るべきではなかったかと思う(ただし、私は尾崎選手のファンではない)。



2005年11月07日(月) 消費者金融は儲けすぎではないか

 日経(H17.11.7)23面広告欄に、消費者金融プロミスがかなりのスペースを使って、中間期の業績を報告していた。


 できるだけ情報を開示しようとする姿勢は好感が持てる。


 それにしても、その広告によれば、2006年3月期通期計画では582億円もの純利益となる予定である。


 プロミスは消費者金融ナンバー1ではないが、それでもそんなに儲かっているのである。


 ちなみに、プロミスのホームページにある貸借対照表と損益計算書から大雑把に計算してみると、貸付利息平均は年利21.4%、借入れ利息平均は年利1.9%となる。


 これでは儲けて当たり前といえる。



2005年11月04日(金) 遅すぎるネットでの選挙運動の解禁

 日経(H17.11.4)1面トップで、ネットでの選挙運動ができるよう法改正する見通しと報じていた。


 ところが、記事によれば、その施行は2007年ころということらしい。


 そもそも、ネットでの選挙がアメリカの大統領選挙で話題になったのは10年も前である。


 せめて、2006年中に法改正し、直ちに施行するということはできないのだろうか。


 あまりののんびり具合に、呆れてしまう。



2005年11月02日(水) 先物取引会社グローバリーが、毎月7件以上も顧客とトラブル

 日経(H17.11.2)社会面に、商品先物取引会社の大手であるグローバリーの社長らが逮捕されたと報じていた。

 逮捕容疑は、顧客とのトラブルが、3年間で実際は258件もあったのに、139件と過少に虚偽報告していたというものである。


 3年間で258件となると、1か月で7件以上も顧客とトラブルを起していることになる。


 これは多い。


 ただ、商品先物取引会社の中で、グローバリーだけがとくに悪質であったという評判は聞かない。


 とすると、他の先物取引会社も、毎月7件近くののトラブルを抱えている可能性がある。



2005年11月01日(火) 新法務大臣が、死刑執行しないと発言

 日経(H17.11.1)社会面に、法務大臣に就任した杉浦法相が、「心の問題、宗教の問題、哲学の問題」という理由で、死刑の執行命令に署名しないことを明言したと報じていた。


 裁判所が死刑判決を下した場合、行政はそれを執行する義務を負う。

 それなのに、法務大臣が、「死刑執行しない」と明言することは許されるのだろうかと思った。


 ところが、その発言の1時間後に、この法務大臣は、署名拒否の発言を撤回したそうである。


 この人には、大臣としての資質はないだろう。


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