今日の日経を題材に法律問題をコメント

2005年09月30日(金) 大阪高裁が、首相の靖国参拝は違憲と判断

 日経(H17.9.30)夕刊に、大阪高裁が、小泉首相の靖国神社参拝は「宗教的行為」にあたり、違憲であると判断をしたと報じていた。


 この裁判では、原告の損害賠償請求は棄却しているので、原告が上告しない限り、被告である国に上告の利益はなく、高裁の判断が確定することになる。


 違憲という重大な判断について、最高裁の最終的判断がなされないまま確定してしまうということは、何となくしっくりこないが、制度上仕方ないということなっている。




2005年09月28日(水) 1億円ヤミ献金事件で、自民党参議院議員会長が証言

 日経(H17.9.28)社会面に、自民党旧橋本派の1億円ヤミ献金事件で、自民党参議院議員会長の青木幹雄氏が証言したと報じていた。


 青木氏は、「記憶にない」を連発したそうであり、それに対し、裁判官が、「幹部会があったことは思い出せないというが、大事な事実である。どんな気持ちで証言しているのか」と聞いたそうである。

 この様子では、裁判官は、「記憶にない」という青木証人の証言は虚偽であるという心証を持っているようである。


 虚偽の証言をしているという心証をもたれる人が政治家であるというのは、いかがなものかと思う。



2005年09月27日(火) 間違い送金で、銀行に返還命令

 日経(H17.9.27)社会面に、間違い送金訴訟で、東京地裁が、銀行に対し、間違って送金した金額を返還することを命じたという記事が載っていた。


 記事によると、会社が、振込先を間違えて119万円を送金したところ、その振込先が倒産状態であり、その債権者である銀行が、自己の債権と相殺してしまったとうことのようである。


 銀行は、誤って送金したことをうすうす認識していたようである。

 それにもかかわらず、債権回収をしているのだから、誠に図々しい行為であるといえる。



2005年09月26日(月) 松下電器の退職年金給付率の引き下げは適法

 日経(H17.9.26)夕刊に、松下電器が退職年金の給付率を一方的に引き下げた事件で、大阪地裁は、「引き下げは適法である」とする判断をしたと報じていた。


 判断の決め手は、「経済的情勢に大きな変動があれば、制度を改廃できる」という規定があったためである。


 当初、年金規定を作ったときに、この条項によって給付利率を引き下げることまでは念頭になかったも知れない。


 しかし、一般的にいって、永久不滅の制度を作るべきではない。

 この事件は、事情の変更があれば制度を変えることできるような条項を必ず入れておくべきということを教えるものと思う。



2005年09月22日(木) 契約書は重要である

 日経(H17.9.22)社会面に、カードシステム開発会社が、NTTコミュニケーションズに対し、1億円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は、NTTコミュニケーションズに、請求どおり1億円の支払いを命じたという記事が載っていた。

 記事によれば、この事件は、カードシステム会社のシステム採用をNTTコミュニケーションズが約束したのに、それをほごにしたというもののようである。


 大手企業が、中小企業と何らかの合意をしながら、その約束をほごにするという話は比較的よく聞く。


 その場合、中小企業側は、契約書をきちんと交わすことなく、担当者間の口頭ベースで話が進めることが多く、そのため合意の内容が明確でなく、約束をほごにされても、泣き寝入りするしかないことも少なくない。


 したがって、NTTコミュニケーションズに対する1億円もの請求を認めたというのは珍しいように思う。


 記事によれば、覚書を作成していたようであり、それが効をそうしたのかもしれない。


 ただ、裁判長が、行政訴訟で行政側をことごとく負かした有名な裁判官なので、控訴審でどうなるかは分からないが。



2005年09月21日(水) NHKが、受信料未払い問題で、法的手段を導入

 日経(H17.9.21)3面で、NHKは、受信料未払い問題で、法的手段を導入すると表明したと報じていた。


 法的手段(「支払督促」を利用するようである)をとるのは構わないが、法的手段をとっても支払わない場合に、強制執行するのかどうかをきちんと決めているのだろうか。


 その点を曖昧にしたまま、とりあえず「支払督促」をして不払い者を減らそうという考えであれば、法的措置を取るのは止めた方がいいと思う。


 この件では、かなり多数に対する請求が予想される。

 その場合に、法的手段に訴えて、最終的には強制執行までするのか、そこまではしないのかという点をきちんと決めておかないと、方針がぶれてしまい、不公平な結果になる恐れがあるからである。



2005年09月20日(火) 中央青山監査法人理事長の自宅まで家宅捜査したことは、やりすぎとはいえない

 日経(H17.9.20)社会面で、カネボウの粉飾決算事件に関し、中央青山監査法人の理事長が東京地検から事情聴取を受けたと報じていた。


 中央青山監査法人の公認会計士が逮捕された際、「理事長の自宅まで家宅捜査を受けており、先日、そこまでする必要があるのか」と書いた。


 しかし、東京地検は、中央青山が金融庁に提出した「会計士は粉飾に関与していない」という報告書が、虚偽報告を禁じた公認会計士法に違反しているのではないかとみているようである。


 そうであれば、理事長の自宅を家宅捜査することもあり得る。


 したがって、中央青山監査法人の理事長の自宅まで家宅捜査したことに対する批判は撤回します。



2005年09月16日(金) 控訴趣意書を提出しないことは弁護活動の放棄であろう

 日経(H17.9.16)社会面で、オウム事件控訴審の松本被告弁護団が、「松本被告と意思疎通できない以上、控訴趣意書を提出しない」と改めて強調したと報じていた。


 先日も書いたが、これは弁護活動の放棄ではないかと思う。


 1審弁護団は、松本被告と意思疎通できない中で、苦労しながらも弁護活動をやり遂げているのである。

 
 2審の松本被告弁護団は、裁判記録があまりにも膨大なため、十分精査できず、控訴趣意書を書けないだけではないのかと疑わざるを得ない。



2005年09月15日(木) 慰謝料、1人5000円

 日経(H17.9.15)1面で、最高裁は、海外に住む日本人が選挙区で選挙をできない仕組みになっている公職選挙法の規定は憲法に違反するとして、1人5000円の慰謝料を認めたと報じていた。


 5000円という根拠がどこにあるのか分からない。

 
 ただ、今後、5000円という金額は、被害者が多数に上る場合の慰謝料の一つの基準となると思う。



2005年09月14日(水) 「捜索の必要性」は厳格に考えるべきである

 日経(H17.9.14)1面で、カネボウ粉飾決算事件で、会計監査を担当した公認会計士4人が逮捕されたと報じていた。


 逮捕された公認会計士は、いずれもベテランである。

 それが粉飾決算に手を貸していたというのであれば、他の会社についても似たようなことがあるのではないかと思ってしまう。


 ところで、東京地検は、監査法人の理事長宅も家宅捜査している。

 しかし、逮捕された公認会計士の自宅ならともかく、監査法人の理事長の自宅まで家宅捜査する必要があるのだろうか。


 「捜査のために必要である」と言えばなんでもまかり通る傾向があるが、「捜索の必要性」についてもう少し厳格に考えるべきではないかと思う。



2005年09月13日(火) 住友信託銀行とUFJで和解協議が始まる

 日経(H17.9.13)6面に、UFJと東京三菱銀行の合併について、住友信託銀行がそんな害賠償を求めた訴訟で、住友信託銀行とUFJとの和解協議が始まったという記事が載っていた。


 この事件で、住友信託銀行は1000億円の損害賠償を求めている。

 しかし、合併契約が成立してもいないのに、合併していれば得られたはずの利益まで損害金として請求することは無理であろう。


 UFJは数億円程度の和解案を出しているようであるが、和解が成立したとしても、UFJの案に近い金額になるのではないかと思う。



2005年09月12日(月) 最高裁裁判官の国民審査

 日経ネットニュース(H17.9.13)で、衆院選と同時に行われた最高裁判所裁判官の国民審査で、全員が信任されたと報じていた。

 
 これまで国民審査で罷免された裁判官はいない。


 国民審査制度は、終審である最高裁判所の裁判官の適否を、主権者である国民が直接判断するものである。

 すなわち、法の支配の原理と民主主義の原理との微妙な調和をはかろうという素晴らしい制度である。


 しかし、実際にはまったく役に立っていない理念倒れの制度である。


 国民審査は、もう止めたらどうかと思う。


 ただ、憲法で定めている制度なので、憲法を改正しない限り廃止できないのであるが。



2005年09月09日(金) 遺産分割前の賃料は法定の相続割合で。

 日経(H17.9.9)社会面に、最高裁は、賃貸不動産を相続した場合、遺産分割前の賃料の配分は法定の相続割合で行うべきという初の判断を下したと報じていた。


 賃料は、不動産という元本から生じる果実であると考えると、遺産分割前の賃料は、遺産分割結果に従って分けるべきということになる。


 これに対し、賃料は金銭債権であることを強調すると、法定の相続割合で分けることになる。


 いずれが正しいというものでもない。


 このような争いは、ルールを決めることが重要である。

 ルールが決まっていれば、紛争を事前に回避することができるからである。


 それにしても、この事案の賃料総額は2億1000万円であったようであり、それだけの金額だったから最高裁まで争われたのだろう。



2005年09月08日(木) 「感動を与えた弁護士の感動できない話」

 日経(H17.9.8)3面に、週刊新潮の広告で「24時間マラソンに出て感動を与えた弁護士の感動できない話」という内容の記事が載っていた。


 記事の内容は、通常の弁護士であれば50万円から100万円程度の仕事を1000万円も受領していたというものである。


 記事によれば、依頼者が委任した事項は「財産の処分についての指導並びにアドバイスの提供。贈与対象者への接触と趣旨説明、並びに受諾要請と支払い手続き」とのことである。


 この程度であれば、私の感覚では、100万円でも高いなあと思うが・・。


 もっとも、週刊新潮は、何度も名誉棄損で訴えられ、賠償金の支払いを命じられているから、記事が本当かどうかはよく分からない。



2005年09月07日(水) 個人情報を持つメリットよりも、個人情報を持つリスクが大きい

 日経(H17.9.7)3面に、民放のデジタル放送5社が、保有する視聴者の個人情報を抹消することになったと報じていた。


 デジタル放送は、双方向サービスが容易であるが、その際、個人情報を蓄積していれば、「有用なサービスが提供できる」という考えの下に、これまで放送局は個人データを蓄積してきた。


 しかし、情報流出の事故が後を絶たないから、個人情報を持つことのメリットよりも、流出リスクのデメリットの方が大きいと判断したようである。


 賢明な選択であると思う。



2005年09月06日(火) 飲酒問題で、アナウンサーの立件を見送る

 日経(H17.9.6)夕刊に、「NEWS」のメンバーの飲酒問題で、宮城県警は、フジテレビのアナウンサーの立件を見送ったと報じていた。


 法律は、未成年者の親権者、または、親権者に代わって監督する者は、未成年者が飲酒している場合、これを制止しなければならないとしている。

 そして、これに違反すれば科料(1000円以上、1万円未満)の制裁がある。


 県警は、このアナウンサーは一緒に飲んでいただけなので、親権者に代わって監督する者に該当しないと判断したというわけである。


 穏当な判断だと思う。



2005年09月05日(月) 内部告発による残業代未払いの発覚は多い

 日経(H17.9.5)2面広告欄に、週間東洋経済の広告で「日本マクドナルドに新事実 賃金不払いさらに100億円か」という見出しが載っていた。

 雑誌を買っていないので、記事の内容は分からないが、おそらく残業代の不払いがあったのだろう。


 残業代に未払いについては、会社側から相談を受けることがある。

 大体は内部告発により、労基署から調査が入ったというたぐいである。


 小さな会社では、従業員のサービス残業によって会社経営が成り立ってきたということは否定できないと思う。


 実際、夜遅くまで電気がついているビルは多いが、それらのすべてに残業代が支払われているとは思えず、サービス残業は、いまでも広く行われていると思う。


 そうは言っても、労基署が入って、後からまとめて支払うことになると経営上も大変である。


 それよりも、残業代をその都度きちんと支払ったほうが、会社にとっても結局はいいと思う。



2005年09月02日(金) 商品先物取引の売買高が減少

 日経(H17.9.2)32面に、商品先物市場の今後に関する記事が載っていた。


 今年5月の商品取引法改正により売買高が大幅に落ち込んでおり、今後、商品先物取引市場は減少に向かうという悲観的見方が多いという内容であった。


 ところが、業界のアンケート調査では、今後重点を置く事業分野として「個人向け対面販売」を挙げているのである。


 これでは、今後もトラブルが続き、先物取引による被害者も後を絶たないだろう。



2005年09月01日(木) 控訴趣意書の不提出は問題である

 日経(H17.9.1)社会面に、オウム事件の松本被告の弁護団が控訴趣意書を提出しないと報じていた。


 控訴趣意書を提出しないと、控訴は棄却になる。


 それを承知で控訴趣意書を提出しないのであるから、いかなるの理由があれ、弁護人として重大な過誤であると思う。


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