今日の日経を題材に法律問題をコメント

2003年08月29日(金) 控訴しないといってる被告人に、なぜ控訴させようとするのだろうか

日経(H15.8.29付)社会面に、池田小事件の裁判で死刑判決が下されたことに対し、弁護団が詫間被告に控訴するよう説得を続けていると報じていた。


しかし、なぜ弁護団が、控訴したくないといっている被告人に対し、控訴するよう説得しているのだろうか。


 事実関係に争いがあるわけではない(責任能力の有無については争いがあるが)。


 何の罪もない小学生が何人も殺されたという事案では死刑判決はやむを得ず、刑が重過ぎるというわけでもない。


 そもそも、被告人自身が控訴しないと言っているのである。



 弁護団が控訴審で何をしたいのか、私にはよく分からない。



2003年08月28日(木) なぜ酒屋さんだけが保護されるのか

 日経(H15.8.28付)1面に、酒類販売参入を1年間凍結できる「逆特区」が922地域に上ると報じていた。


 酒類販売については、これまでは距離制限、人口制限があるため新規参入がなかなかできず、既存店は規制に守られていた。


 その規制は平成15年9月にすべて撤廃とされることになったのであるが、ところが一定の要件を充たせば、酒類販売の新規参入への規制が最長二年間継続されることが認められたのである。



 特定の業種(酒類販売だけでなく、薬局や公衆浴場)に認められていた距離制限は、憲法で保障されている「営業の自由」の侵害になるのではないかという問題があり、憲法の必須論点であった。


 結論としては、違憲ではないというのが圧倒的多数説である。

 その理由は、営業の自由に対する規制については、政治的自由と異なり、厳しい司法審査に服さず(二重の基準)、行政が営業の自由を制約しても、その制約に合理的理由があれる限りは違憲ではなく、距離制限は、弱者保護という合理的理由があるからである。


 司法試験でこの問題が出ても、そのような書くのが決まりだった。


 しかし、私は勉強していた当時から、なぜ特定の業種だけが保護されるのか分からなかった。
(司法試験でこんなことに疑問を感じ始めると合格は1年延びる。)。


 町の八百屋さんも魚屋さんも、何の保護もなく、スーパーの進出でどんどんつぶされていった。


 酒屋さんだけがいまだに「逆特区」まで設けて保護されるのはいかがなものかと思う。



2003年08月27日(水) 被害者への配慮と、被害者による直接の尋問

 日経(H15.8.27付)社会面に、「被害者配慮に動いた司法」という見出しで、池田小事件の裁判で、裁判所、検察庁は遺族らの被害感情に最大限配慮したと書いていた。

 裁判所は、被告人と顔を合わせるのも嫌だという声の配慮して、別室で証言することを認めたし、検察官は公判のたびに説明会を開いたのである。


 このような対応は、これまでの裁判と比較すると異例のことであるが、殺された子どもの親の気持ちを考えると、この程度の配慮は当然といえよう。


 ただ、その記事の中で、欧米では被害者が被告を直接尋問できるが、日本ではそれはできないと書いていた。

 その後の報道によっても、被害者が被告人に直接尋問できる制度が検討されているとのことである。


 確かに、被害者が被告から直接犯行の動機を聞きたいという気持ちは分かる。


 しかし、直接尋問しても、結局は被害感情をぶつけるだけになり、裁判が混乱する可能性は高いのではないだろうか。


 被害者の立場は最大限尊重されるべきと思う。

 しかし、それは被告に対する直接の尋問以外の方法によってなされるべきではないだろうか。



2003年08月26日(火) 商工ファンド社長の関連会社に130億円の申告漏れ

 日経(H15.8.26付)社会面に、商工ファンド社長の関連会社に130億円もの申告漏れがあったと報じていた。


 ものすごい利益であるが、その利益の源泉は、顧客からの利息収入である。



130億円もの金となると、個人では使いようがない金であり、そんなに稼いでどうするのだろうと思う。


 それよりも、社会的に批判されない程度の利息収入を取って稼いだほうが精神衛生上もいいのではないかと思うのだが。


 記事では、その130億円を投資運用していたそうであるから、その記事を読んで、人間の欲というのは限りがないのだなあと思った。



2003年08月25日(月) 人はなぜ犯罪を起こすのか

 日経(H15.8.25付)15面広告欄に雑誌「プレジデント」の広告が載っていたが、その見出しに「検証!『犯罪少年』はどんな家庭で育ったのか」とあった。


 その雑誌では、原因として、家庭の問題、遺伝的な問題を挙げていた。



 犯罪少年と家庭との関係は、少年事件を扱っていて考えることがしばしばある。


 一般的にいえることは、犯罪少年には、両親の愛情を十分に受けていない少年が多いということである。


 もちろん、ここでいう「愛情」は「でき愛」とは異なる。

 でき愛というのは、子供を犬や猫と同じに扱っているだけだからである。


 しかし、問題は、両親が愛情を持って育てているのに、犯罪を起こす少年がいることである。


 そのような場合は、「なんでこうなったんだろう」と両親と一緒に考え込んでしまう。


 人がなぜ犯罪を起こすかについては古くから研究があり、チェザーレ・ロンブローゾは、犯罪者かどうかは生来的なものであるという説(生来的犯罪者説)を唱えたが、今日では誤りであるとされている。


 しかし、その考え自体は誤りだとしても、犯罪の原因として、環境だけではなく、ケミカル的な要素(抽象的でごめんなさい)があるのではないかという気がしている。



2003年08月22日(金) 電子商取引のサイトの9割で情報もれの欠陥

 日経(H15.8.22付)17面に、電子商取引のサイトの9割で情報もれの欠陥があることが判明したと報じていた。

 
 原因は、クッキーに暗号処理を施していなかったというものだそうである。


 クッキーは甘くておいしいが、食べ過ぎると太ったり虫歯になったりする。

 それと同じでクッキーと呼ばれている情報は、利用者にも便利なシステムであるが、反面、サイトの利用履歴などが記録されることから、プライバシー侵害の危険がある。


 そのクッキーが情報漏れする恐れがあると言うのだから、問題であり、サイト運営者は損害賠償責任を負う可能性がある。


 もっとも、記事では「欠陥」があれば損害賠償責任が認められると書いていたが、これは誤りだろう。

 なぜなら、製造物責任法が適用されれば、「欠陥」が認められれば賠償責任を負うが、ソフトの欠陥責任は適用されないとされているからである(但し、議論はある)。


 したがって、ソフトの「欠陥」だけでなく、サイト運営者に「過失」があることまで立証しなければならない。

 もっとも、クッキーに暗号処理する必要性は従来から指摘されていたようだから、実質的には「欠陥」を立証すれよく、「過失」の立証は比較的容易であろう。



 かりにサイト運営者の過失により情報漏れした場合、その賠償額は1人5万円だとしても、10万人集まれば50億円になる。


 いずれ、誰かが音頭を取って情報漏れによって損害を被った人たちを集めて集団訴訟を提起する時代がくる気がする。



2003年08月21日(木) パート裁判官誕生

 日経(H15.8.21付)社会面に、弁護士が週一回だけ裁判官となる、パート裁判官が誕生すると報じていた。

 
担当する事件は調停事件に限定するようである。


 しかし、調停事件の裁判官に弁護士がなったからといって、どれだけ意味があるか疑わしい。


 調停は裁判所での話し合いという制度であり、調停委員が2人いて、その調停委員を介して、双方が話し合いをする。


 そして、話し合いがまとまりそうになると、おもむろに裁判官が出てきて、最終的な調停案を作成するのである。


 つまり、調停事件においては裁判官の役割は大きくなく、むしろ調停委員が中心になって処理されている。


 しかも、調停委員には従来から弁護士がなっていた。


 その意味で調停事件の裁判官に弁護士がなったからといって、直接的な効果は期待できない。

 ただ、パート裁判官制度は、弁護士が週一回裁判官になるのだから、弁護士と裁判官の垣根が少し低くなるという点では意味があるのかもしれない。



2003年08月20日(水) 27%もの利益を謳う勧誘は危険

 日経(H15.8.20付)4面に、証券取引監視委がみずほインベスターズ証券の投資勧誘が違法であると指摘した検査結果に対し、同証券が異議を唱える「意見申し出」を行ったと報じていた。


 「意見申し出」は、最近導入された制度であり、検査結果に対し異議を唱えることを認め、適正手続きの確保をはかろうというものである。


 従来は、行政の顔色を伺い、指導があればそれをただ受け入れるだけだったから、自分の意見をきちんと主張し、異議を唱えたということはいいことだと思う。



 ただ、記事によれば、証券会社本店営業部長が27%の利益が得られるという勧誘資料を作成し、しかも27%の利益が得られる前提条件の記載さえもなかったそうである。

 しかし、いまの経済情勢で27%もの利益を挙げることは実際には難しい。


 世の中には詐欺まがいの投資勧誘が多いが、配当が20%以上を謳っている場合は、近づかない方がいいと思う。


 今回の証券会社の勧誘手法が詐欺的手法とはいわないが、たとえ「このような条件の下では27%の利益が上げられる」という前提条件の記載があったとしても、27%もの利益を謳う勧誘資料は問題であり、証券会社の「意見申し出」は認められないだろう。
(実際、証券会社の言い分は認められなかったようである。)



2003年08月19日(火) 強姦罪は罪が重いのに、罪を自覚していない被告人が多い

 日経(H15.8.19付)社会面で、女性8年に強姦・強制わいせつをした男性が16年の実刑判決を受けたと報じていた。
(もっとも、強姦罪のことを「性的犯罪」と書いていたが・・。)


 求刑は懲役20年である。

 有期懲役刑の最高は20年だから、求刑は可能な限りで最も重たい刑だったわけである。


 判決も懲役16年だから、殺人罪の平均刑よりも重い。



 女性に対する犯罪はだんだん重くなってきている。


 ところが、経験上、強姦罪については自分のやった罪の重さを自覚していない被告人が多い気がする。


 裁判では「反省しています」とは言うのだが・・。



2003年08月18日(月) 電波法は誰のための規制なのか

 日経(H15.8.18付)社会面の「月曜リポート」で、地下店舗などが設置する違法な電波中継装置のことが報告されていた。


 地下など携帯電話が使いにくいところに、無断で電波の中継装置を設置するところが増加しており、これが電波法に違反していることから、総務省の役人が摘発しているという記事である。


 びっくりしたのは、その中継装置の値段が30万円程度であり、それは携帯電話会社が設置するアンテナの10分の1ということである。


 つまり、携帯電話会社は30万円で設置できるところを300万円も使って設置していることになる。


 違法中継装置は電波が強すぎて電波障害を起こすそうであり、単純な比較できないが、それでも値段が違いすぎである。


 いまや携帯電話が使えない店は客が入らず、商売にならない。


 つまり、地下に携帯電話の中継局を設置するニーズは極めて大きい。


 電波法は規制でがんじがらめにしており、それぞれもっともらしい理屈をつけている。

 しかし、このような状況を見ると、誰のための規制のなのだろうかと思ってしまう。



2003年08月15日(金) 法廷で、尋問事項を指示されたとき

 日経(H15.8.15付)社会面で、鈴木宗男被告の勾留が422日と汚職議員で最長になったと報じていたが、その記事の中で、鈴木被告の公判の様子を書いており、証言をノートに書きとめ、弁護側の反対尋問の際は自らノートに指示を書いて弁護人に示すこともあるとのことである。


 実は、弁護士として、尋問中に依頼者から「このようなことを聞いてくれ」と尋問事項を指示されるのはやりづらい。


 というのは、当事者というのは感情が先走りしやすく、何がポイントかが見えなくなっていることが多く、そのため、聞いてくれということの中には、かえってやぶへびになる質問もあるからである。


 しかし、法廷で、そのような質問をすればかえって不利だよと説明する時間はない。



 といって、「聞いてくれ」と言っているのに無視することもできない。

 そんなことをしたら、後で、「うちの先生は何も聞いてくれない」と言われるのが落ちである。



 その結果、板ばさみになり困るのである。


 もっとも、修習中のことだが、証人尋問の準備をまったくしないまま尋問に望む先生もいた。

 そのような先生の尋問は明らかにポイントがずれているから、依頼者が「このようなことを聞いてくれ」というのは当然であろう。



2003年08月14日(木) 公認会計士の不祥事を外部に公表

 日経(H15.8.14付)13面に、会計士協会が、監査法人や公認会計士の不祥事を外部に公表するよう提言したと報じていた。


 現時点で、公認会計士の場合、不祥事を公表していないようである。


 弁護士の場合、以前は、弁護士会の会報に「業務停止3か月」などと処分結果が載るだけで、何をして懲戒になったかは分からなかった。

 しかし、現在では、処分理由が詳細に載るため、どのような不祥事をしたのかが手にとるように分かる。


 その意味では弁護士会の方が少しは情報公開されているのかなあと思う。


 もっとも、会報は市販されていないから、外部に公表していることにはならないという批判もあり、あまり威張れたものではない。


 とすると、物好きな人が、どこかから会報を手に入れ、ホームページ上で弁護士の懲戒処分の理由などをすべて公表すると話題になるかもしれない。
(但し、そのようなことが許されるかどうかは保証の限りでない。)
 



2003年08月13日(水) 弁護士が地方で開業すると10年でビルが建つ?

 日経(H15.8.13付)社会面に、「若手弁護 地方においで」という見出しで、弁護士過疎に悩む地方自治体や弁護士会が、若手弁護士の勧誘策を打ち出しているという記事が載っていた。


 弁護士の都会志向は強く、弁護士過疎に悩む地方で働こうという人は少ない。


 日弁連では、公設法律事務所を設置しているが、今年18か所で人材募集したが、希望者が現れたのはたった2か所だった。

 そのため、地方自治体の中には、新任弁護士に報奨金を出すところまであるそうである。


 その記事の中で、地方のよさをアピールするために、熊本の弁護士が「地方では5年で家が建ち、10年でビルが建ちます。」と述べたそうである。


 しかし、地方にいっても、弁護士が所有しているビルというのはあまり見ない。


 そもそも弁護士はそれほど儲かる業種ではない。


 PRしたい気持ちは分かるけど、「ちょっとこれは『誇大広告』じゃないの」と思った。



2003年08月12日(火) 『ヤミ金の帝王』逮捕

 日経(H15.8.12付)社会面で、「『ヤミ金の帝王』逮捕」という見出しで、ヤミ金の黒幕逮捕の記事が載っていた。

 ヤミ金についてはこのところ毎日のように報道されている。


 少し前まで、ヤミ金被害に遭って警察に相談しても、「借りたものは返さないといけないのじゃないの。」「弁護士さんに相談してみたら」などと言われて帰されていた。


 ヤミ金が家まで取り立てに来たので、びっくりして警察を呼んでみても、近くの派出所から自転車でのんびり現れ、「暴力事件にならない限り警察としては動けない。」と言って帰っていた。


 しかし、いざ捜査を始めてみると、利益の相当部分が暴力団に流れていたことが分かったわけで、報道されていたヤミ金の帝王の場合、1000億円もの金が暴力団に流れていたというのであるから、警察もびっくりである。


 こうなると警察も本気で動く。


 いまでは、ヤミ金被害の事件を受任して、弁護士が受任した旨をヤミ金に連絡したら、ヤミ金からの請求はピタッと止まるようになった。


 こうなると、意識的に踏み倒す人も出てくるかもしれない。


 それゆえ、利息は無効としても、借りた元本は返還すべきではないかという考え方がある。

 少し前まではこの考え方のほうが優勢であった。


 しかし、相手は暴力団であり、莫大なお金が上納金となって流れているのである。

 したがって、元本も返還する義務はないと考えるべきだろう。


 朝日新聞の社説でも同趣旨のことを書いていた。


 暴力団に莫大な資金が流れていたことが判明してから、議論の流れが変わったように思う。 



2003年08月08日(金) 少年犯罪の質の変化

 日経(H15.8.8付)1面で、今年上半期の犯罪統計によれば重要事件が増加していることを報じていたが、その中で、少年犯罪も凶悪化していると書いていた。


 このような少年犯罪の増加という統計が出ると、必ず、かつても少年犯罪は多かった、凶悪事件もあったという論者が出てくる(大体が弁護士なのだが。)。


 その主張の背景には、少年犯罪に対し厳罰化で臨んでも少年犯罪の減少につながらないという考えがある。


 しかし、社会の混乱期の少年犯罪と、豊かになった時代の少年犯罪とでは、犯罪の質が異なっているのではないだろうか。



 現在でも、かつあげ、ひったくりなど、遊ぶ金ほしさの古典的犯罪は多い。


 しかし、貧しい時代の犯罪と異なり、現代の少年犯罪は、金に対する切望感がない気がする。つまり、犯罪に遊びの要素が強いのである。


 また、犯罪を犯す少年も、いわゆるワルというのでなく、会ってみると普通の少年だったりする。



 やはり世の中の変化に伴い、犯罪の質が変わっているのは間違いないのだろう。


 その意味で、かつても少年犯罪が多かったのだから、犯罪が増えたことだけを取り上げて騒ぐべきではないという論調は疑問である。
(私は弁護士会の少年法委員会に入っているのだが、このような事を書いていいのかなあ)



2003年08月07日(木) 日本の裁判は平等主義が強い

 日経(H15.8.7付)社会面で、労働紛争に、民事調停と裁判の中間的な制度として、「裁定制度」が導入されると報じていた。

 その解説コラムの中で、1999年から2000年にかけて東京地裁で労働者側に不利な判決が相次いだが、その多くが高裁で逆転し、その判決のぶれが裁判所不信につながったと解説していた。


 おそらく、その当時労働者に厳しい考え方を持った裁判官が赴任したためだろう。



 しかし、憲法が保証する司法権の独立というのは、政治部門からの独立という意味だけでなく、個々の裁判官が法の客観的意味と自ら信ずるところに従って職権を行使できることを意味している。

 したがって、労働者に厳しい考え方を持った裁判官がいて、その裁判官が、労働者側に不利な判決を書いたとしても、それを責められることはないはずである。


 それなのに、「判決のぶれが裁判所不信につながった」のは、日本ではどの裁判でも同じ結果でないと不公平であるという意識が強いためである。


 これに対し、アメリカの裁判官はより独立性が強く、あまり他の裁判の判決を意識しないという印象がある。



 すなわち、司法において、アメリカはより自由主義的であるが、日本では、平等主義が強いという気がする。


 こんなところにも国民性の違いが表れているようである。





2003年08月06日(水) 田中真紀子元議員の秘書給与流用問題

 今日の日経ではなく、昨日(H15.8.5付)の夕刊であるが、1面で、田中真紀子元議員の秘書給与流用問題で、東京地検は不起訴の方針を決めたと報じていた。


 辻元清美元議員の場合は逮捕されたから、扱いが大きく異なる結果となったが、東京地検の言い分は、秘書としての勤務実態があったかどうかで判断が分かれたということのようである。


 しかし、田中真紀子元議員の秘書の場合、どの程度勤務実態があったのだろうか。

 秘書給与の流用が問題になるくらいであるから、ほとんど勤務実態はなかったのではないか。


 少しでも勤務実態があればいいのかというと、そうではあるまい。


 もし勤務していたがそれは僅かということであれば、両者の処分はあまりに違いすぎる。


 実は、同じ日の夕刊で東大副学長が、カラ出張で補助金を490万円も不正受給していたと報じられている。

 これもりっぱな詐欺ではないか。


 これについては東京地検は強制捜査しないのだろうか。


 どうも検察庁の判断はぶれているような気がする。



2003年08月05日(火) 裁判所の保釈の運用には問題がある

 日経(H15.8.5付)社会面に、鈴木宗男の保釈請求が認められなかったと報じていた。

 これで何度目だろう。


 鈴木被告は無罪を主張しているが、無罪を主張している場合は、検察官立証が終わるまで保釈は認めないのが現在の裁判所の運用である。


 証拠隠滅の恐れがあるからという理由である。


 しかし、警察・検察は十分に捜査を行い、証拠があるからこそ起訴したのである。

 今さら、証拠隠滅なんてできるはずがない。


 保釈も認められず長く勾留されるぐらいであれば、さっさと有罪を認めて、執行猶予付き判決をもらって早く外に出たいと思うのが人情である。


 しかし、それは真実発見という刑事訴訟の目的(刑事訴訟法第1条に規定している)に反する結果となる。


 鈴木被告の味方をするわけではないが、無罪を争う場合には保釈を認めない傾向にある裁判所の姿勢は問題であると思う。



2003年08月04日(月) マイホームには神が宿っている?

 日経(H15.8.1)12面に「日曜日の人生設計」という連載コラムがある。

 そのコラムで、前週は、「マイホームをローンで買うのは、お金を借りて投資するのと同じであり、極めてリスクのある行為である」と書いていた。


 今週のコラムでは、「そのようにリスクある行為なのに、誰もが住宅ローンを組んでマイホームを買うのは、マイホームを持って初めて責任ある大人と認められるからである。」「マイホームとは精神的価値の購入であり、賃料がローンに変わるだけで劇的な心理効果がある」と書いていた。


 私もそれに同感であり、マイホームに寄せる人の気持ちは特別であると思う。


 ある破産事件で、マイホームの時価が1000万円なのに、住宅ローンが1500万円も残っていたことがあった。

 当然、その家は手放さざるを得ない。


 ところが、破産する方の奥さんが、実家から援助を受けて住宅ローンを払い、奥さん名義でその家を確保したいと言い出した。


 私は、それは1000万円のものを1500万円で買うようなものであり、考え直したほうがいいのではないかと言った。


 しかし、結局その奥さんは1500万円を実家から借りてきて家を確保した。



 先の新聞コラムの中で、「マイホームは『箱』いうモノであるが、モノには時に神が宿り、宗教的な高揚感を伴って退屈な日常を打ち砕く」と書いていた。


 1000万円のものを1500万円で買うという現実を見ると、やはりマイホームには神が宿っているのだろう。



2003年08月01日(金) 弁護士会の処分は甘いか

 日経(H15.7.31)社会面で、医師、歯科38人に医業停止の行政処分をしたと報じていた。

 処分の理由は、犯罪、診療報酬の不正請求などだそうである。


 犯罪などは論外であるが、診療報酬の不正請求も詐欺罪に該当する立派な犯罪である。


 しかも、不正請求は広範に行われている。


 ところが、医業停止の処分を受けるのはごく例外であり、不正請求が判明してもほとんどは還付させてお終いである。


 その意味で、医師に対する処分は甘い気がする。



 もっとも、世間では、弁護士会の処分も甘いと思われている。


 弁護士会では毎月平均して5人程度が業務停止などの処分を受けているから、年間では60人くらいが処分を受けている計算である。



 医師・歯科医の処分は年間38人、弁護士会は年間60人。


 医師・歯科医の数は弁護士より15倍くらい多いから、弁護士会の処分が甘いとはいえないように思うのだが・・。


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