今日の日経を題材に法律問題をコメント

2003年07月31日(木) 野村證券課長もインサイダー取引で告発される

 日経(H15.7.31)社会面に、ニチメン子会社株を巡るインサイダー取引容疑で、野村證券課長が告発されたと報じていた。


 この株については、大和証券SMBCの2人も告発され、公判中である。


 一つの株の公開買付を巡り、大手証券会社の社員が3人も告発されている。


 この3人はまったく連絡がなく、それぞれ行ったものである。


 この株取引だけが特別だったとは思えない。他の取引でもインサイダー取引があるのではないかと疑わざるを得ない。


  
 それにしても、野村證券の元課長はインサイダー取引で得た利益は255万円だったそうである(インサイダー取引では利益がなくても違法となるが)。


 それだけの利益を得るために一生を棒に振ることになってしまった。

 バカなことをしたものである。



2003年07月30日(水) 、「阪神優勝」の商標を阪神球団に譲渡

 日経(H15.7.30)社会面で、「阪神優勝」の商標を登録した人が、阪神球団に商標を譲渡することで合意したと報じていた。


 「阪神優勝」の商標登録料は6万6000円である。

 弁理士を頼んで登録した場合は、その費用もかかっている。


 阪神球団が払う譲渡代金は数十万円とのことであるが、登録にかかった費用を考えるとまあまあ妥当な額かなあという感じである。



2003年07月29日(火) ネットの無料音楽交換で、個人に賠償請求

 日経(H15.7.29)3面に、ネットの無料音楽交換の問題で、アメリカレコード協会が、個人の利用者に対して損害賠償請求をする方針と報じていた。


 これまでは、無料音楽交換をサービス提供する会社が標的とされていた。


 しかし現在の無料交換システムは、個人同士が直接ファイルを交換するシステムのため、個人に対し提訴せざるを得なくなったのである。


 記事によれば、一曲当たりの損害額は750ドルから15万ドルとみなすそうであり、10曲程度交換している人の場合、請求額が最大で150万ドルになる可能性があると書いていた。


 この記事を読んで、「えっ!」と思った。


 日本の法律では、請求できる損害賠償額は、個人が無料交換したことと因果関係のある損害に限られる。


 したがって、当該個人によってその曲が何回交換されたかを推定し、その分だけCD販売の機会を失ったとして請求することになる。


 この記事がアメリカの法律を理解して上で書いているのか、誤解しているのかはよく分からないが、日本の裁判では、一曲の損害が15万ドルだから、10曲交換すれば150万ドルの損害という考え方は取り得ないことである。



2003年07月28日(月) プロミスのIR広告を見て

 日経(H15.7.28)22面広告欄に、消費者金融のプロミスの広告が載っていた。


 その広告には、「経営倫理を基盤にリスクマネジメントを高度化し、コンプライアンスを徹底しています。」と書いていた。

 このような広告を読んで、お金を借りようと思う人はいない(と思う)。

 「お金を借りて欲しい」という広告であれば、日経新聞ではなく、夕刊紙の方が効果はあるだろう。


 このような広告を出すのはIR(投資家への広報活動)のためである。

 つまり、投資家に対し、「わが社は経営倫理を徹底しており将来性が豊かなので、わが社に投資してください」と言っているのである。


 ところで、その広告によれば、「コンプライアンス教育を軸とした人材育成を推進している。」とのことである。


 このようなことを本当に実践するのならば、プロミスは消費者金融会社の中で頭一つ抜けた存在になるかも知れない。



2003年07月25日(金) 犯罪被害者を救済する手立てをもっと考えるべきである

 日経(H15.7.25)社会面に、文京区の女児が殺害された事件で、殺人罪で服役中の山田被告が、毎月の命日に約8万円ずつ賠償金を支払う約束をしたのに、まったく払っていないと報じていた。


 被告人は刑務所に入っているのだから、毎月8万円ずつ払うことは不可能である(刑務所での労働は、懲役刑として行っているのであるから、ほとんど対価は貰えない。)。


 しかし、山田被告は、刑事裁判で「一生かけて償う」と言ったそうである。


 それが一回も払っていないのだから、被害者の立場からすれば、「一生かけて償う」といっても、自分の刑を軽くするためにうそを言ったと思うだろう。


 被害者にとっては、約束が裏切られることによって、二度被害を受けることになってしまうのであり、とてもつらいことだと思う。



2003年07月24日(木) 盗難通帳の払戻で銀行の過失責任を認める

 日経(H15.7.24)社会面に、盗難通帳で払い戻しをされた被害者が、銀行に対し訴えていた裁判で、東京高裁は銀行の過失を認めたと報じていた。

 この裁判では第一審では銀行の過失がないと判断しているから、逆転判決である。


 銀行は、これまでは印影が少々へんだと思っても、トラブルを恐れて、そのまま払い戻しをしていた傾向がある。

 しかし、それでは印鑑照合する意味がないだろう。



 盗難された通帳による払戻は非常に多く、被害額は1000万円以上になることもある。


 それに伴い、払い戻しをした銀行に過失があるとして、被害者が銀行に対して訴訟をするケースが急増している。



 裁判所は当初は銀行の過失をほとんど認めなかった。

 数年前に知り合いの弁護士から聞いた話であるが、どう見ても払戻票の印影と、通帳の印影とが違うのに、裁判所は銀行の過失をまったく認めなかったそうである。


 裁判所は、「金融システムの円滑な運用」を重視する傾向があり、銀行の注意義務を加重すると、「金融システムの円滑な運用」の障害になると考えている節がある。



 しかし、最近はあまりの訴訟の多さに、風向きが変わった気がする。


 新聞記事によると、裁判所は印影を詳細に比較して、「押し方や朱肉の付具合などでは説明できない違いがある」と認定している。


 このように、印影を詳細に比較するという手法自体、払い戻しの際にも詳細な印影の照合を要求する結果になり、銀行に相当の注意義務を課すことになるだろう。




2003年07月23日(水) 「捜査ミスといわれれば、そういわざるを得ない」?

 日経(H15.7.23)社会面に、大阪地検が、時効になっているのに贈賄罪の容疑で逮捕してしまったという記事が載っていた。


 贈賄罪の時効は3年であるが、海外渡航をしていた場合は時効の進行が停止される。


 この事件では、被疑者に海外渡航歴があるので時効が成立していないと判断して逮捕したのであるが、逮捕した後に調べたところ、海外渡航歴がないことが分かったというのである。


 逮捕された側はたまらないわけで、地検としてはきちんと誤りを認め、謝罪すべきであろう。


 ところが、地検特捜部長は「捜査ミスといわれれば、そういわざるを得ない」と述べたそうである。


 なんだか歯切れが悪いなあ。「ミスは分かっているけど、それを認めたくない。」という気持ちがありありである。


 しかし、「捜査ミスといわれれば、そういわざるを得ない」という日本語の意味は、捜査ミスを認めたことである。

 そうであれば、「捜査ミスであった。今後は注意する。逮捕した方にもきちんと謝罪したい。」と言うべきである。


 
実は、検察官だけでなく、役人とか、裁判官もこういった、もって回った言い方をよくするのである。

 しかし、それはあまり印象のいいものではない。



2003年07月22日(火) 新電電5社が、総務省に対し行政訴訟を提起

 日経(H15.7.22)3面に、KDDIなど新電電5社が、総務省に対し、NTTの接続料の値上げを認めたことは違法であるとして行政訴訟したことについて解説的な記事を書いていた。


 これまで通信業界は、ひたすら行政にお願いし、その了解の下にやってきたから、それに比べると、行政に不満がある場合は訴訟ではっきりさせるという姿勢はいいことだと思う。


 しかし、接続料値上げの件で行政訴訟まですることは疑問である。

 なぜなら、総務省は決められた算定方式に基づいて接続料を決めただけであり、裁量の逸脱はないからである。


 したがって、新電電5社が訴訟で勝つ見込みは少ないだろう。


 そのような勝つ見込みの少ない訴訟を提起して負けた場合、訴訟した側は立場がなくなるだけではない。


 勝つ見込みの少ない訴訟提起して多額の弁護士費用を負担したということになると、株主代表訴訟の対象になりかねない。


 推測だが、大手銀行が東京都に税金訴訟をして勝って以来、大手企業の経営者は行政訴訟を安易に考えている気がするのだが・・。



2003年07月18日(金) 長崎男児殺害事件の少年には、少年院送致こそ適切でないか

 日経(H15.7.18)社会面に、長崎の男児殺害事件で、12歳の少年が、「両親に会いたいが・・」と複雑な心境を語ったと報じていた。

 それを読んで、「あれっ、まだ両親に会っていないのか」と思った。


 
 少年は現在少年鑑別所に収容されており、鑑別所は留置場とは違うから、両親が面会に行くと、格子もない小さな部屋で会うことができる。

 それなのに会っていないということは、マスコミが避けているのだろう。



 ところで、鑑別所と少年院とを混同している人も多いが、両者はまったく違う。


 鑑別所は、少年に適切な処分をするために、心身の状況、家庭環境などを調査するためのところである。


 通常、3週間程度で審判が開かれるから、鑑別所にいる期間も3週間程度のことが多い。


 そして、審判の結果、少年院送致になどの処分が決まる。


 もっとも、長崎男児殺害事件の少年は、おそらく精神鑑定がなされるだろうから、例外的に、長期間鑑別所にいることになるだろう。


 その後、現行法では少年院に送致できないため、児童自立支援施設に入ると報道されている。


 しかし、児童自立支援施設は、児童福祉の観点から支援を行うための施設と位置づけられており、家庭環境に問題のある少年が入所することが多い。


 今回の事件の少年は、家庭環境の問題よりも、少年自身の精神面に問題があるように思われる。

 したがって、矯正こそが必要であり、少年のためにも、処遇体制が整っている少年院に送致できるようにした方がいいのではないだろうか。



2003年07月17日(木) 大学側に前納した授業料と入学金の返還を命じる

 日経(H15.7.17付)1面に、前納した入学金や授業料の返還を求めた訴訟の判決で、京都地裁は、大学側に授業料と入学金の返還を命じたと報じていた。

 記事によれば、入学金については入学を辞退した日によって判断が分かれたようである。

 すなわち、4月1日以降に入学を辞退した学生には入学金の返還は認めなかったが、3月中に入学を辞退した学生には入学金の返還を命じたとのことである。


 確かに、4月1日以降に入学を辞退した場合は、すでに入学しているのだから、その返還を求めるのは難しいであろう。


 では、3月31日までに入学を辞退した場合はどうか。

 
 入学金を、入学を確保するための手付と考えれば、返還は難しいだろう。


 もっとも、手付金として、現在の入学金の額は高い気はする。


 また、入学金を支払えば、大学としては入学手続きをしなければならないのだから、手間がかかる。

 
 それなのに、入学を辞退すれば全額返還するというのは不合理な気がする。


 といっても、その手間は現在徴収している入学金ほどの手間がかかっているとは思えない。


 ということで、これまでのような高い入学金はやはり問題であろうが、手付や手数料として適正な額にすれば返還の義務はないように思う。


 むしろ問題は、入学しない者からの入学金を大学運営の重要な財源としている当てにしている大学側の姿勢であろう。

 裁判でも、そのような大学の姿勢が問われたのだと思う。





2003年07月16日(水) UFJ銀行が不正な口座開設の疑いで強制解約

 日経(H15.7.16)7面で、UFJ銀行が不正な口座開設の疑いで、166口座を強制解約したと報じていた。

 解約したほとんどの口座はヤミ金が使っていた口座と思われる。


 最近はヤミ金に対し警察も迅速な対応をするようになったが、それでもヤミ金の数が多く、すべてを警察に頼るのは限界がある。

 そこで、銀行口座を使わせないようにして兵糧攻めにすることが有効な手段となっていた。


 そのため、これまで各地の弁護士が銀行に対しヤミ金の口座の解約を何度も申し入れていたが、銀行の動きは鈍かった。


 とくに、UFJ銀行は口座開設の際の本人確認が甘いのか、ヤミ金口座に使われることが多く、また、解約についても積極的ではないといわれていた。


 その意味で、今回、UFJ銀行が口座の強制解約に踏み切ったことは大いに評価できる。



2003年07月15日(火) 東京弁護士会が刑事専門の公設法律事務所を設立

 日経(H15.7.15)社会面で、東京弁護士会が刑事専門の公設法律事務所を設立すると報じていた。


 その弁護士事務所には、刑事弁護のベテランばかり18人を揃えるそうである。

 しかも常勤になるようだから、その弁護士たちは大変である。

 刑事弁護だけでは食べていけないからである。

 
 その法律事務所に勤務予定の弁護士の方々には本当に頭が下がる。



2003年07月11日(金) 衆議院の解散権について

 日経(H15.7.11)2面で、綿貫衆議院議長が、山崎幹事長に対し、「7条解散は憲法上問題があるという見解をよく研究してもらいたい」と指摘したと報じていた。


 解散権の所在については憲法に明文規定がないため、内閣に解散権があるかどうかについて争いがある。


 綿貫衆議院議長が憲法上問題があるといった7条解散とは、憲法7条が「内閣の助言と承認により、天皇が衆議院を解散する」と規定していることから、実質的解散権は内閣にあると解釈する説である。


 確かに、条文を素直に読むと、この規定から内閣に解散権があるとまで読み込むのはやや苦しい。


 しかし、総選挙後に政党が離合集散し、衆議院が民意を反映しているかが疑問になった場合や、国政の重大な問題が生起し、民意を問うことが望ましい場合に内閣の解散権を認める必要性は高いことから、内閣に解散権を認める必要性は高い。


 それゆえ、7条を根拠に内閣の解散権を認めるのが通説である。


 7条解散説には批判はあるが、憲法上問題があるとまでいう学者は、今日ではいないのではないだろうか。


 実際、多くの解散が7条解散によってなされている。


 したがって、衆議院議長とはいえ、いまさら7条解散が憲法上問題があるといっても、ほとんど相手にされないだろう。



2003年07月10日(木) 長崎男児殺害事件

 日経(H15.7.10)1面で、長崎男児殺害事件で、犯人は中学生だったと報じていた。

 この中学生は12歳ということだから、刑事責任は問われない。

 そのため、警察は児童相談所に通告し、児童相談所は事案の重大性に鑑み、家裁に送致した。

 この後は、家裁での調査が始まるが、家裁の調査は少年のおかれた環境などの調査が中心となり、事実を一つ一つ証拠から確定していく警察の捜査手法とは異なる。

 そのため、事実関係の解明は不十分になるかもしれない。



 ところで、この事件をきっかけに、刑事責任を問える年齢の引き下げが論議されている。


 多くの識者は、厳罰化しても犯罪の減少にはつながらないという理由で、年齢の引き下げには反対のようである。


 確かに厳罰化しても犯罪の減少にはつながらないだろう。

 しかし、問題は被害者・家族や世間の応報感情をどうするかである。


 応報感情というのは「やられたらやりかえせ」という考え方である。

 刑罰において応報感情を重視するのは前近代的考え方であるとされている。

 しかし、殺された子どもの親にとっては、中学生とはいえ犯人を殺してやりたいと思うのが自然な感情であろう。

 世論しても、あんなひどいことをしたのだから刑事罰を課すべきであるという意見の方が多いようである。


 このような応報感情がある以上、厳罰化しても犯罪の減少につながらないというだけでは、厳罰化の流れを食い止めることはできないのではないだろうか。



2003年07月09日(水) 早大生らによる強姦事件

 日経(H15.7.9)社会面に、強姦事件で逮捕された早大生が退学処分という記事が載っていた。


 もっとも、新聞では「強姦」とは書かず、「女子大生集団暴行事件」と書いていたが。


 この事件の事実関係については雑誌のつり革広告で見る程度でよく知らないが、逮捕された学生たちが実刑になることは間違いないだろう。



 かつては強姦事件の刑は軽かった。

 しかし、現在では裁判所は被害者が受ける精神的苦痛を重視している。

 とくに最近はPTSD(心的外傷後ストレス性障害)に対する理解も進んでおり、厳罰化の傾向にある。



 また、強姦事件では被害者と示談ができれば執行猶予になる可能性はかなり高かった。

 しかし、被告人が損害賠償を受けることは当然であって、それと執行猶予が引き換えになるのはおかしいと言っている裁判官もいるくらいであり、示談したからといって執行猶予になるとは限らない。

 したがって、悪質な強姦事件の場合は示談できても実刑になることがある。



 早大生らによる強姦事件の場合は、輪姦であり、それだけで悪質である。

 しかも何件も強姦事件を起こしているようであり(新聞報道ではあるが)、偶発的な事件とはいえない。

 これらを考え合わせると、実刑4年程度は覚悟しないといけないのではないだろうか。



2003年07月08日(火) 刑事裁判での和解の利用が低調

 日経(H15.7.8)社会面で、刑事裁判での和解の利用が低調であると報じていた。

 この制度は、被害者が改めて民事裁判を起こすのは大変なことから、刑事裁判の中で被害者の被害回復をはかるために創設されたものである。



 話は少しずれるが、被告人は情状酌量を求めるために、法廷で「少しずつでも被害者の方に弁償していきます」と言うことがよくある。


 しかし、判決が出てしまうとほとんど支払わないのが実情である。


 修習生のとき、ピンクサロンの経営者だった被告人が、法廷で「反省しています。店も閉めます。乗っているベンツも処分します。」と述べたことがあった。

 そのように反省していることが認められたのか、被告人は執行猶予となった。


 ところが、私の修習地が地方都市で狭い街であったため、判決後、偶然その被告人がベンツを乗り回しているのを見たことがある。


 このような経験もあり、(弁護士がこんなことを言うと問題かもしれないが)被告人が法廷で「少しずつでも弁償する」と言っても、その場限りのことが多いというのが実感である。



2003年07月07日(月) デジタル万引きは著作権法違反か

 日経(H15.7.7)9面で、デジタル万引が増えていると報じていた。

 デジタル万引とは、書店で雑誌をカメラ付け携帯電話で撮影することをいい、撮影するのは映画スケジュールやアイドルの写真などだそうである。


 これらは無断コピーであるので、著作権法違反かどうかが問題になる。


 これについて、朝日新聞は、個人で楽しむためのもの(私的使用)は著作権侵害にならないことから、デジタル万引が違法になるかどうかは微妙だと書いていた。


しかし、書店の店頭でコピーすることが個人で楽しむとはいえないだろう。


 カメラ付き携帯電話で撮影するのが違法でないとするなら、書店にコピー機を持ち込んでコピーしても違法にならないことになってしまう。


 すなわち、私的使用が認められているのは、家庭内等の閉鎖的な私的領域における複製を許容する趣旨であるから、書店という閉鎖的とはいえない場所での複製は認められないと考える。


 したがって、私は著作権違反だと思う。


 ただ、著作権法違反の被害者としては書店ではなく、出版社である。


 実際は、書店も、デジタル万引が蔓延すると本が売れなくなるという意味では被害者なのであるが・・。


 そのため、書店としては、警告のポスターを店内に大きく掲示し、見つけたら注意をして止めさすこと程度しかできないのが現状のようである。



2003年07月04日(金) 弁護士は不況でも儲かる?

 日経(H15.7.4)9面で、アメリカの法律事務所が、景気減速でも手堅く増収していると報じていた。


 新聞記事によれば、多額の報酬が得られるM&Aなど好況時の収入源がなくなっても、破産や企業再生の取り扱いを強化したことによって、景気の好不況にかかわらず収益をあげられる体質になってきているそうである。


 私もよく、弁護士は不況でも儲かるからいいですねと言われる。


 しかし、不況のときは訴訟して裁判で勝っても、回収が期待できないことが多い。

 その結果、訴訟を断念せざるを得ないこともよくある。


 また、依頼者も弁護士費用の支払が大変なことが多いから、標準弁護士費用よりも相当減額せざるを得ない。

 ひどい場合は、弁護士費用を踏み倒す場合もある。


 ということで、個人的見解としては、弁護士も不況よりも好況のほうがいいと思う。



2003年07月03日(木) アナリストの投資判断で損害を受けたとして米投資家らが賠償を求めたが、ニューヨーク地裁は投資家の訴えを棄却

 今日の日経でなく、昨日の日経(H15.7.2)夕刊・3面であるが、メリルリンチのアナリストの投資判断により損害を受けたとして米投資家らが賠償を求めた集団訴訟で、ニューヨーク連邦地裁は投資家の訴えを棄却したと報じていた。


 投資家側は1990年代後半以降のインターネット株ブームの際、メリルリンチの著名アナリストの判断に沿って投資、損をしたと主張していた。

 しかし、裁判所は「(ブームが抱える)リスクを承知していた」「法を(損をした際の)保険と位置づけている」と断じたそうである。



 この判決が妥当かどうかの判断は難しいが、私はやむを得ない結論であると思う。


 アナリストは、くず株と呼んでいたものを推奨していたそうであり、要するに嘘をついていたわけである。

 そうであればアナリストの行為は違法行為といわざるを得ない。


 しかし、投資家はアナリストの推奨だけを信じて投資してよいのだろうか。


 アナリストの推奨株だけ信じて投資するのであれば、それは投資家としては失格であり、保護に値しないと言われても仕方ない。


 実際、そのころはITブームであり、投資家はそのようなトレンドも考慮した上で投資したであろうことは想像に難くない。


 そのように、投資家が、アナリストの推奨だけでなく、そのときのITブームの状況など他の要素も勘案して投資して、その結果、取引で損をしたのであれば、アナリストの違法行為と損失との間の因果関係はきわめて弱くなってしまう。


 しかも、証拠の問題を考えると、損をした投資家が、アナリストの推奨を信じて投資したのか、それ以外の判断で投資したのかは不明であり、立証のしようがないという問題もある。


 以上のように考えると、アナリストの違法行為と、投資家の損失には因果関係がないということになり、投資家の請求は認められないという結論になりそうである。


 もっとも、アメリカの判事は「法を(損をした際の)保険と位置づけている」という粋な表現をしているが、結論は同じでも、日本の裁判所が判決を書くと、そのような表現までは望めないだろう。



2003年07月02日(水) 風が吹いて桶屋が儲かる

 日経(H15.7.2)1面で、不動産登記がネットで行えるようになると報じていた。


 ネットで登記ができることになると、偽造などの危険が増すという恐れはあるが、便利になることは間違いない。



 登記所は形式的審査主義であり、それだけに細かい間違いにもうるさくいわれ、慣れないとなんども訂正(補正)しない。

 しかし、ネットであれば、訂正も楽にできるようになるだろう。



 そうすると司法書士の仕事は減るだろう(税理士も、会計ソフトによって仕事が減ったといわれている)。


 その代わり、司法書士は簡易裁判所の事件の代理人になることができるようになった。

 代理人になるには一定の研修を受けないといけないが、年配の方を除きほとんどの司法書士が研修を受けるそうである。


 その結果、今度は弁護士の仕事は減るかもしれない。



 結局、登記がネットでできるようになって便利になるが、そのために、弁護士の仕事が減るということのようである。

 なんだか、風が吹いて桶屋が儲かるみたいな話である。


 内心は、弁護士の仕事が減るのは困ったことだなあと思ってはいるが、依頼者にとっては代理人になれる資格のある人が一挙に増え、代理人にアクセスする機会が増えるのだから、やむを得ないだろう。



2003年07月01日(火) やみ金事件で実刑はわずか7件

 日経(H15.7.1)社会面で、やみ金事件で逮捕された者の刑罰について、実刑はわずか7件で全体の2.8%にすぎないという記事が載っていた。


 やみ金の連中は一億円以上荒稼ぎしていることが多く、弁護士の間でも、実刑にすべきであるという声は強い。


 ただ、やみ金の場合、一つ一つの被害金額は少ないため、起訴した事件だけの被害金額ではたいした額にならない。

 それが実刑が少ない理由かもしれない。


 新聞記事では、執行猶予では抑止効果は弱いかのように書いているが、たとえ実刑でなくても、執行猶予になれば、今度やると実刑になるのだから抑止効果は結構高いと思う。


 問題は略式起訴が62.7%も占めていることである。

 罰金刑だとほとんど痛みを感じない。


 ヤミ金に対し抑止効果を高めるには、罰金刑にせず、検察官はどんどん公判請求すべきであろう。


 < 過去  INDEX  未来 >


ご意見等はこちらに
土居総合法律事務所のホームページ


My追加
-->