ぴよの映画めった斬りコーナー
ぴよが見た新作映画・ビデオ・DVDを個人的趣味でぶった斬るコーナー
ぴよと意見が合わないからっていじめないでぇ〜ん!(^_^;)
【ネタバレも含んでますので注意してねん♪】

2009年04月30日(木) 余命1ヶ月の花嫁

監督:廣木隆一
出演:榮倉奈々
    瑛太
    柄本明、他
オススメ度:☆☆−


【あらすじ】
イベントコンパニオンの千恵は、広告代理店に勤める太郎とあるイベント会場で知り合い、デートを重ねるようになった。太郎から正式に交際を申込まれるものの躊躇する千恵だったが、結局2人は付き合い出して同棲するまでになる。ところが千恵は太郎と知り合った直後に自分が「若年性乳癌」である事が発覚したのだった。内緒で付き合い出したものの癌は悪化し、乳房切除を余儀なくされる。太郎に別れを告げ、1人闘病生活に臨もうとする千恵だったが・・・


【感想】
2007年7月にTBSで放送され大反響を巻き起こした同名タイトルドキュメンタリーを映画化。
映画化前に書籍化もされているそうでそちらも大ヒットだそうですが、ぴよは本作に関する知識はゼロで鑑賞。個人的事情ですが父親を癌で亡くしているので、この手のドキュメンタリーは正直言うと苦手な部類です。

大々的に報道されているので、本作の主人公「千恵と太郎」が実在する人物で、千恵さんが生きる事を切望しながらも24歳という若さでお亡くなりになっているという事実も周知の事だろうと思います。
映画中にも千恵さんご自身が信念を持ってドキュメンタリーに出演する事を望まれたというくだりが出て来るので、それが書籍化、更には映画化されて千恵さんのご遺志が広く世間に伝わるのは、彼女には望外の喜びなのかもしれません。

ところで本作の作り、コレでは千恵さんが望んだ事がきちんと伝わっているんでしょうか?首を捻りたくなります。
映画中の千恵は「若年性乳癌についてネット等で調べてもほとんど情報がない。だから世間に広くこの病気について知って欲しいし同じ苦しみを持つ女性達に勇気を与えたい」というような事を語っています。
素晴らしい志だと思うのですが、残念ながら映画では「若年性乳癌」についての知識見聞を広めるという効果、乳癌に対する知識啓蒙に役立っているとはお世辞にも言えず、ただただ「若手人気役者を使ったお涙頂戴ドラマ」な作りになっているのが残念で仕方がない。

本当に千恵さんのご遺志を伝えるという目的ならば、映画では千恵さんが乳癌になって何を思ったか、特に若年性乳癌という比較的レアなケースに見舞われた自分が、その病気についてどう調べ、どう向き合い、そして自分の命を削ってまでもドキュメンタリーに出演して世の女性達に知って欲しいと願うまでに至ったのか・・・ここの部分にスポットを当てて描いて欲しかったなーと思う訳です。

少なくとも本作の作りでは、映画を見終わった後に「私も乳癌検診の予約を入れよう!自分で調べられる事は調べてみよう」と思い立って実行に移すという10代・20代の女性はかなり少ないんじゃなかろうかと。
ぴよなんて既に進んで(と言うか絶対に)乳癌検診をしなければいけない年齢なのに、それでも本作を見ても全くそういう切迫した気持ちにはなれませんでしたから(^-^;

映画の内容というか話の流れについてはどうこう口出し出来ませんわね。だって事実なんですから。
多少の演出は勿論あるでしょうけど、事実を捻じ曲げている訳ではないでしょう。個人的には病室で太郎と千恵のお父さんが向かい合ってケーキを食べていて、千恵のお父さんがむせび泣きながら太郎に「ありがとう」を言うシーンにはジーンと来ましたね。柄本明さん、アンタは上手い!

それから当然ですが千恵がいよいよ天に召される〜死後に太郎が千恵のビデオメッセージを見るくだり辺りは周囲はすすり泣きの嵐になりますよ・・・ごめんなさい。ぴよは余り泣けなかった。
自分の身内の死を乗り越えているので、この手の「お涙頂戴」に耐性が出来てるのかも。

本作を見て、若年性乳癌に関して興味を持たなかったとしても、命の大切さ・生きているという事の素晴らしさを、少しでも若い世代の人達が感じられる事が出来たなら、それはそれで千恵さんの遺志が多少は伝わったという事になるでしょう。
ですが多くの若い世代には、本作の作りでは「ありがちな泣ける映画」という域を出ないのでは?と危惧します。
正直、「本作は実話の映画化です」と聞かされているにも関わらず、ぴよは「まるで絵空事のようだ」と感じてしまった。

天国の千恵さんは、本作を見て喜んでくれているのだろうか・・・謹んでご冥福をお祈りします。








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2009年04月28日(火) バビロン A.D.

監督:マチュー・カソヴィッツ
出演:ヴィン・ディーゼル
    ミシェル・ヨー
    メラニー・ティエリー、他
オススメ度:☆


【あらすじ】
放射線汚染地帯がアチコチに点在する荒廃した近未来。新セルビアで生活するトーロップは、大金の為ならどんな危険も顧みない最強の傭兵として知られていた。ある日トーロップに浅からぬ因縁のある国際的マフィアのボスから奇怪な依頼が入る。それはモンゴルにいるある娘を6日以内にアメリカ・NYに届けろというものだった。


【監督】
俳優としても活躍するマチュー・カソヴィッツ監督×ヴィン・ディーゼル主演の近未来SF映画。
出演役者がムダに豪華だったりする。ヴィンとミシェル・ヨーの共演というだけでも「すげーな♪」と思うのだが、他にもシャーロット・ランプリングやジェラール・ドパルデュー等のフランスを代表する名役者が雁首揃えてご出演。
出演役者だけ見ても期待値がババーン☆と跳ね上がるのですが・・・本当にムダに豪華なだけだった(笑)

あ、しまった。いきなり結論書いてるぞ自分(^-^;

まあ何でしょうねぇ。どこからツッコミ入れていいのか判らない位凄かったですよ、コレは。
映画冒頭は結構期待させてくれる感じなんですが、見てる内にどんどん「あいたたた」になって行くという妙技。ここまで徹底して既存の映画の焼増しをやられると、もしかしたら「みんなツッコミ入れて!ほらココも!アソコもだよー♪」というのが売りなのか?でも余りに悲劇的に痛いので、ツッコミ入れるのも気の毒になってしまうし・・・と逡巡させられる程ヒドい。

「トランスポーター」とか「レオン」等の「ロードムービー&バディムビー」を掛け合わせて「トリプルX」っぽく味付けして劣化させて、最終的にネタ放置してファンタジーっぽくしてみた、そんな感じ。
うがー!感想の書きようがない!!

一応「お届け品@修道院出の小娘」の出自辺りが本作の最大のキモなんじゃなかろうかと推察する訳ですが。
ぶっちゃけどーでもいいですね(こら)、多分マチューもどーでもよかったんじゃないだろうか?だって最終的にネタばらしもなければ「完全オチ放置」でしたから(笑)
一応彼女のママとパパがあの人とあの人だったの!?みたいなトコロが「驚きのオチ」辺りになるんでしょうか?別に驚くに値するとは思えませんがね(きっぱり)、本当に「どーでもいい感」がひしひしと伝わる迷作ですわ。

せめて「処女懐妊」と「特殊能力」の秘密くらいは納得出来るオチをつけてくれないと、ツッコミようもありません。
ついでに言うと「死体蘇生法」についての解説も頂ければ尚有難いんですがー、まさか・・・「本作はキリスト教的宗教感を下地に構築された云々、」みたいな壮大なスケールの〜・・・ないわな。ないわ。絶対ない(^-^;

一応見せ場として「アラスカ氷原地帯でエクストリームスポーツ的アクションシーン」等がありますが、この程度のクオリティの絵は今なら邦画でもちょこっと金掛ければ作れますからね。ワクドキする程でもありません。
ミシェル・ヨーの使い方もなぁ〜。どーなんだろ、あの中途半端感は。ってか彼女すごく老けたわ。ちょっとショック(涙)

まあ、ヴィンは相変わらずマッチョなのに実は瞳が可愛いいいヤツやってるし♪シャワーシーンにちょい萌えだし♪
そんな「ヴィンが見れれば後はもういいや」と割り切れる方なら、いい暇潰しにはなるんじゃなかろうかと思います。それから生まれて初めてこの手の近未来SF映画を見た!というお子様辺りなら案外楽しめちゃったりするかも?
・・・後の方は自己責任でドーゾ(^-^;








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2009年04月23日(木) 新宿インシデント

監督:イー・トンシン
出演:ジャッキー・チェン
    竹中直人
    ダニエル・ウー、他
オススメ度:☆☆+


【あらすじ】
中国・黒龍江省の寒村に住む「鉄頭」は、先に日本に渡り消息の掴めなくなった恋人「シュシュ」の行方を捜すべく、密航船に乗り日本にやって来た。仲間のアジトがある東京・大久保に辿り着いた鉄頭は、先に密入国していた友人「阿傑」らと共に日雇い仕事等を始めた。新宿のナイトバーで阿傑と皿洗いのバイトをしていた鉄頭は、ある日恋人シュシュをようやく見つけるが、シュシュは新宿を取仕切る日本のヤクザの妻となっていたのだった。


【感想】
ジャッキー・チェン主演最新作の本作は「ジャッキーがアクションを封印」という事で話題になっています。
本作では「アジア映画のレベルアップを!」という事で、中国・香港・日本のスタッフ・役者がジャッキープロデュースの元に集結して製作されたという「アジアン・プロジェクト」の第一回作品・・・なんだそうです。

えー。恥ずかしながらジャッキー大好きなこのアタクシ、映画はなるべく前知識入れずに鑑賞したいタイプでして。
本作も予告編未見・どんなあらましの話なのか・ましてやジャッキーが「アクション封印」して製作したという事すら何も知らずに、ただ「ジャッキー主演の最新作」という事だけの情報で鑑賞。
まあ、ここまで何も知らずに鑑賞するのは「先入観を持ちたくない」というより「面倒臭がりの常識知らずのバカ」としか言い様がないのですが・・・少なからずショックでしたね。ジャッキーの老けぶりには(涙)

要するにコレ、ジャンルで言うと「任侠モノ」「やくざ映画」ってヤツなんですよね?ある意味「社会派」とも言う?
少なくとも「ジャッキーの【アクション映画】ファン」には余りオススメ出来ない作品だと思います。映画の題材的に暴力的なシーンは多数登場しますが「暴力シーン」であって「アクションシーン」ではない。

実はー・・・「やくざ映画」って全くと言っていいほど見た事がないんです。
「極妻」「仁義なき戦い」他、人気の極道シリーズもただの1本も見た事がない。全く興味のないジャンルなんですわ。
だから正直本作が「極道映画」としてどれくらいのクオリティで、何が面白いツボなのかもさっぱり判らない。やたら意味不明な程暴力的で残忍で、カッコイイともステキとも思えないし気の毒とも痛ましいとも思えない。

ダニエル・ウー君の事も大好きなので、ヘタレで気のいい兄ちゃんだった頃の阿傑の様子にはワクドキしたんですが、その後のアホアホなメイクで転落の一途を辿る様子は目も当てられなかった(涙)

ただ、かつて(本作はバブル崩壊直後位の設定かな?)日本には多くの中国人が大量に密入国して来て、新宿を中心に巨大な犯罪集団として跳梁跋扈していたという事実はあった訳で。
もっとも今でも「中国人武装スリ集団」のニュースはよく流れますから、状況がそれほど好転しているという事でもないのかもしれませんが、彼らには彼らなりの苦しい事情や思惑があって、この日本で生きているのだと。
でもそれは決して正しい道ではなく、日本で大金を掴むというのはそれなりのリスクと制裁を味わう事になるのだと。

いや、全く同情の余地はないんですけどね(苦笑)
少なくとも本作を見ると、大量の中国人密入国者がどういう経緯を辿って転落していくのかは判ります。店頭に置かれたゴルフバッグなどを堂々と盗んで行くくだりなんて「日本人って本当にお人好しでバカにされてんだなー」なんて、妙に感心しちゃいましたね。日本人の「性善説」は時としてアジアの治安を悪化させるんだなーと(^-^;

この手のジャンルに全く興味がないので、正直見ていて疲れるだけだったし(あわわ)、本作が訴えたいツボや主旨が多分まるで判っちゃいないんだろうと自分でも思う訳ですが、映画の見方は人それぞれ。
少なくとも日本はいつまでも安全で平和な国ではないのだ、お互いの気遣いや小さな親切だけでは治安は良くならない、今後は積極的自衛を心掛けなければ21世紀を生き抜いてはいけないのだ・・・と思わされただけでも勉強になったなと。

ジャッキーファンとしてはアクションなしの本作はかなり寂しい気持ちでいっぱいでしたが、ジャッキーだって年齢的にもう無茶な事ばかりやっていられないのはよく判る。それを望むのが酷だというのも理解しているつもり。
だから今後も「アクション封印」で色んなジャンルに挑戦してもらいたいです。

ただ、この手のジャンルじゃなくて次回は出来ればジャッキーの優しい笑顔が似合う、ちょっとホロリと出来る人情物コメディ辺りでお願い出来ないでしょうか?(^-^;








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2009年04月20日(月) GOEMON

監督:紀里谷和明
出演:江口洋介
    大沢たかお
    広末涼子、他
オススメ度:☆☆☆


【あらすじ】
1582年、信長が天下統一目前で明智光秀の謀反によって暗殺され、秀吉が光秀討伐と豊臣幕府を開いた事により、ようやく天下泰平が訪れたかに見えた時代。かつて信長の忍だった石川五右衛門は、自由を求めて義賊になり町の英雄となっていた。ある日盗みに入った紀伊国屋文左衛門宅の財宝の中に見慣れない南蛮製の箱を見つける。興味のなかった五右衛門はそれを捨ててしまうのだが、この箱こそがかつての君主・信長暗殺の真相を語る重要な手がかりだったのだ。


【感想】
「CASSHERN」で鮮烈な監督デビューを果たしたらしい?紀里谷監督作品の第2弾。
映画の主題歌は宇多田ちゃん・・・ではなく(こらこら)、どうやら本作は前作「CASSHERN」製作時には既に構想が練られていたそうで、延べ製作日数が実に3年間も費やされて製作されたんだそうだ。
ちなみに前作未見です。前作の評判をよく知らないんですが、見に行った友達が確か「クソ」って言ってた気が(^-^;

タイトルでお解りの通り「GOEMON→石川五右衛門」のお話な訳ですが。
映画冒頭で石川五右衛門が紀伊国屋文左衛門宅で盗みを働き、その後追っ手から逃れてお祭り中らしい?市中で金子をばら撒くシーンを見た段階で「ああ、コレは戦国時代のどこぞのパラレルワールドのお話なんですね」と誰もが思う。
だから五右衛門が「猿飛佐助」と行動を共にしていても、その後に「霧隠才蔵」が登場して、才蔵が真田信繁(幸村)の手下ではなく、何故か石田光成の手下でも、そんな事ぁ〜全く気にならない(笑)
「えーと、真田十勇士って何だったっけー」等と思う人も誰もいない。そもそも真田十勇士自体がフィクションなんだ。

要するに、歴史上の人物や歴史小説に登場した架空のキャラと同じ名前を使った「時代劇エンターテイメント」
だから「コレは歴史モノではなく娯楽映画なんだ」と判ればすんなり楽しめる。そして本作は観客が迷走しないように映画冒頭からキッチリと「コレは時代劇風娯楽映画である」という事を映像でダイレクトに伝えてくれる。見紛う隙間もない。

そんなこんなで映像はスゴイ!
紀里谷監督は元々映像クリエーターなんですよね?(←興味ないのでロクに調べてもいないんですが。苦笑)
とにかくアクションシーンも町の様子、キャラの動きから風情に至るまで、実に映像を作り込んである。セットや衣装等も凝りに凝っていて、一言で言うと「美しい」
どのシーンを切り取っても宣伝用スチールに使える。「邦画のCG技術もここまで来たんだなぁ」と思わされましたね。

まあ、話はむっちゃくちゃなので(こらこら)ツッコミ入れるのも無粋なんですが。
でも見ていて結構楽しかったですよ。単純に楽しめる話です。荒唐無稽な話を荒唐無稽なキャラが演じる。しかも映像はピカイチなので見ていて退屈する事もなく案外ワクドキしながら楽しめる。

個人的には好きな役者さんが沢山出演していたので(江口君も大沢たかお君も好きだし♪)、彼らがツーショットでスクリーンを彩るのを見られるだけでも充分満足出来ますね。
奥田瑛二さんの秀吉キャラも凄く面白かった。ただ、茶々を演じた広末涼子ちゃんはどうなんだろ?なんだか彼女は茶々というキャラクターにはそぐわないような気がするんですが・・・彼女だけが浮いていたような?(^-^;

映像はスゴイし見てる間は楽しめるからいいんですが、特に何も心に残らない作品でしたねぇ(←今更何を言うか。苦笑)
でも「エンターテイメント」だからいいじゃん♪みたいな、まあ荒唐無稽な娯楽映画にカタルシス求めてもねぇ(^-^;








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2009年04月09日(木) ミルク

監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ショーン・ペン
    ジェームズ・フランコ
    エミール・ハーシュ、他
オススメ度:☆☆☆+


【あらすじ】
1972年NY、ゲイである事を隠しながらウォール街で働くハーヴィー・ミルクはスコットと出会い恋に落ち、2人で手を取り合うようにサンフランシスコに移住し、そこでカメラ店を開いた。そのカメラ店はたちまち同性愛者やヒッピーの心の拠り所・溜り場となり、新しい「マイノリティのコミュニティ」が出来ていった。マイノリティや弱者の為にはゲイが政治に参加して声を上げなければならないと考えたミルクは、政界に飛び込む決意をするのだが・・・


【感想】
1978年に暗殺された、政治家にしてゲイの権利活動家「ハーヴィー・ミルク」の半生を映画化。
本作でショーン・ペンが2度目のアカデミー賞主演男優賞を受賞したという事でも話題になっていますが、アメリカ史上初の黒人大統領が誕生した年にこういう映画が製作されるというのは、何か意図的なモノを感じないでもないです。

ハーヴィー・ミルクは1999年には「タイム誌が選ぶ20世紀の100人の英雄」にも選出された、アメリカでは誰もが知っている有名な方なんだろうと思いますが・・・この映画を見るまでこういう方がいらっしゃったという事を知りませんでした。世の中本当に知らない事だらけですねぇ。
まあ、ぴよが単に常識も知識もないおバカなだけなんですが(苦笑)

話はミルクがスコットと出会ってから暗殺されるまでの8年間の事を描いています。
実際はどうだか知りませんが、映画中では物凄くお気軽に出会って(つーか、地下道でナンパだよ)、そのまま行きずり状態でラブな関係になって・・・と随分と駆け足に2人の関係が描かれています。
知り合いや友人にゲイがいない(少なくともカミングアウトしたゲイはいない)ので、「ゲイの恋愛事情」に今一つ明るくないのですが、何となくノリ?で2人はNYから離れてサンフランシスコにやって来た、という風に見て取れます。

実際は違うんだろうと思います。
当時(今もか?)カリフォルニア、特にサンフランシスコは移民が多く、全国からヒッピーや同性愛者が集まる聖地のような様相を呈していた模様で、ゲイというマイノリティを受け入れつつ生きていこうと思うと、自然とそういうマイノリティが集まる場所に行かざるを得なかった、というのが本当のトコロなんだろうと推察。
言い方は悪いけど、いわゆる「ハッテン場」ってヤツだったんでしょうねぇ(^-^;

「アメリカ=自由の国」というイメージがありますが、そこに至るには様々な困難と犠牲を払ってきた訳です。
奴隷扱いしていた黒人に人権を認める事も、女性が政治や社会に進出して行く事も、政治的偏見と差別(赤狩り)をなくして自由な思想活動が出来るようになる事も、そしてゲイ等の超個人的マイノリティに対して耳を傾け受け入れて行く事も、そこには常に「戦いの歴史と犠牲」を払う事でようやく成し遂げたという経緯があるのです。
ハーヴィー・ミルクは正にその「マイノリティに対する権利」を獲得する為の生贄になった人だという事でしょう。

非常に魅力的なキャラクターだったというのは、映画中のミルクの演説シーン等で見て取れます。
抜きん出たカリスマと人を惹き付ける巧みで判り易い演説、ゲイに限定せずに老人福祉等への取組み、地域住民がマジョリティ・マイノリティに関わらず等しく快適に生活出来る為の努力等、映画中で次々と語られて行くので「ハーヴィー・ミルクという人はこういう活動をしていた人なのだ」という事はとてもよく判るし「なるほどなぁ〜」と思います。

ただ、映画としては正直それ程魅力的な演出ではなかったように思うんですよね。
彼が成した活動内容や功績についてはとてもよく判る、政治活動をしながらプライベートとの板ばさみになって苦労する様子もきちんと描いている。
それなのに、何か上滑りな印象は否めません。もっともっとミルクの心の内を知りたかったし見せて欲しかった。
映画中ではフランコとジャック、2人の恋人との様子を描いていますが、見ていてミルクがそれ程彼らを愛していたという風に感じなかったし、彼らに対してどんな思いでいたのかもよく判らなかった。

ミルクの政治家としての半生を描いた作品なので、彼のプライベートな感情については描き切る必要はなかったのかもしれませんが、見ていてミルクという人の人間性が今一つ理解出来なかったと言うか、簡単に言うと彼の行動や発言に思い入れを持つ事が出来なかったと言うのか・・・

自分がノーマルだから思い入れを持つ事が出来なかった?とは思いたくないですね。
もっと「ミルク」という人物の魅力を、人間性を見たかった。彼の功績は素晴らしいと思うし、今回本作を見てその一端に触れられた事はとても有意義だと思いましたが、何か後もう1つ欲しいのに・・・その「後もう1つ」が足りなくて平坦な伝記映画を見ただけ、という印象になってしまいました。








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2009年04月07日(火) グラン・トリノ

監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド
    ビー・バン
    アーニー・ハー、他
オススメ度:☆☆☆☆☆


【あらすじ】
フォードに定年まで勤め上げたウォルト・コワルスキーは、自分の中に持つ「正義」に忠実で、それから外れるものを許さない頑固で偏狭な男だった。妻を失ったウォルトの日々は庭掃除と飼い犬に話しかけながら飲むビール、そして愛車のヴィンテージ・カー「72年製グラン・トリノ」を洗車して愛でる事だった。ある日隣に住むアジア人家庭の息子「タオ」が不良仲間に脅されてウォルトの愛車を盗もうとした。それを追い払ったウォルトだったが、この事件をきっかけに隣家と交流が始まる。


【感想】
クリント・イーストウッド監督最新作&監督ご自身が主演。
何でもイーストウッドは本作を最後に俳優業からは完全引退をして、監督業に専念するとおっしゃっているとか?
本作を見ると誰もが思うハズ・・・「貴方はまだまだハリウッドに必要な【役者】です。貴方は監督としても素晴らしい才能を開花させているけど、俳優としても今尚第一線で輝く超一流ですよ」と。

正直、ここ数年製作されている彼の作品に、世間が絶賛するほどのモノは感じていませんでした。
アカデミー賞作品賞を受賞した「ミリオンダラー・ベイビー」も、絶賛されるのはさもありなんとは思うけれど、個人的には決して好きな作品ではなかった。
何となくやり方のあざとさが鼻に付くと言うのか・・・イーストウッド監督作品は絶賛しなければ映画好きとは呼べないとでも強要されているような気分になって、手放しで誉めたくない人だったんですよね。
・・・まあ単なる天邪鬼なだけなんですが(苦笑)

でも本作はツボったなぁ!
何て言うのか、静かで地味な作りでしてね。(←いきなりこの言い方もちょっとどーよ?滝汗)
出演している役者でも名前を見て判るのはイーストウッドご本人しかいない。しかも映画序盤の彼ったら、頑固で嫌味でその上とてつもない人種差別主義者、全く箸にも棒にも掛からないような食えないクソ親父(苦笑)

それが、隣家と関わりを持つようになって(と言うか、勝手に隣家が関わってきた)勝気で聡明でキュートな女の子・スーと生きる目的を見失って迷走している青年・タオの姉弟と交わるようになってから、ほんの少しずつクソ親父が覚醒して行く。
・・・でも相変わらず言う事嫌味っぽくて食えないんだけど(笑)

エピソードの見せ方が実に上手くてね。
全体の話のネタ的には結構ドス黒いんだけど、意外な事に実にコミカルに仕立てている。何度も笑わせてもらった。
特に隣家のバーチャンとの絡みは最高ですよ!床屋の親父とのやりとり、更にタオに「大人の男・指南」する為に床屋に連れて行くくだりなんていいですよぉ〜♪
当に枯れてるお年頃(←変な言い方)の親父なんだけど、ちょっぴりスーに萌え♪な様子も何とも微笑ましかったり。

そしてコミカルネタとシリアスネタを交互に被せる事で、タオやスー達への思いが深まる様子をそつなく見せたり、親父のささやかだけど確実に変わっていく心境を観客に上手に提示していたと思います。
コイツの存在って必要あるの?とすら最初思っていた「童貞牧師(こら)」までもが、全て必要不可欠にして絶対無二の存在だったと後に思わせる。
全てのピースに無駄がない。そして全てのピースが観客の心に血を通わせ、心豊かにし、深い感慨を呼び起こす。

「意外な結末」と宣伝しているみたい?なんですが、察しのいい人ならウォルトが吐血しているという状況、その上新しいスーツを仕立てに行くくだりで彼が何を考えているのかが判るだろうと思います。
と言うか、もし自分がウォルトの立場だったら、ウォルトのような過去を持ちつつ生き長らえていて、そしてこの状況になったら自分は何をしてやれるだろうか?自分ならどうするだろうか?・・・と考えた時、ぴよもウォルトと同じ事をするだろうと映画を見ながら考えていました。そして結末も正しく想像した通りでした。

決して大団円のめでたしめでたし、ではない。
けれどそこに「魂の救済」があった。タオもスーも救われた。タオはこれからはきっと前を向いて信念を貫ける、粋な大人の男になれるに違いない。そして何よりウォルトが一番救われただろう。
「自己犠牲」とか「偽善」とか、そんな風に思わないで欲しい。この話で一番救われたのはウォルト自身だろうと思う。

久し振りに心の底から「いい映画を見たなぁ」と思える作品でした。DVD発売したら永久保存版として購入決定だな!








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2009年04月04日(土) ザ・バンク −堕ちた巨像−

監督:トム・ティクヴァ
出演:クライヴ・オーウェン
    ナオミ・ワッツ
    アーミン・ミューラー=スタール、他
オススメ度:☆☆+


【あらすじ】
インターポール捜査官のサリンジャーとNY検事局のエレノアは協力して国際的メガバンク「IBBC」を捜査していた。内部告発をしようとした銀行幹部との接触を試みたエレノアの同僚がサリンジャーの目の前で殺され、更には告発しようとした幹部まで事故死に見せ掛けて暗殺されてしまう。証言者を求めてミラノに飛んだ2人は、IBBCが兵器取引きの仲介をしようとしている事実を知るが・・・


【感想】
クライヴ・オーウェン×ナオミ・ワッツ共演のサスペンス・アクション。
本作に登場するメガバンク「IBBC」は1991年に倒産したルクセンブルクに本社のあった巨大犯罪銀行「BCCI」をモデルにしているそうで、映画中のIBBCの本社もルクセンブルク。つーか名前で誰もが「BCCI」以外想像出来ないわね(苦笑)

実は相方が金融関係に勤めているので、この映画は非常に楽しみにしておったですよ。
BCCIがモデルで巨大なダークマネーに絡むサスペンス、しかも主演はクライヴ・オーウェンと来たら、どんなストイックでワクドキ出来るシリアスなドラマが展開されるのだろう・・・と、期待は高まるばかり!!
って、こーいう書き方しちゃダメじゃーん。この先何書くか察しが付いちゃうじゃーん(苦笑)

まー。相方吠えまくってましたねぇ(^-^;
「リアリティゼロじゃねーかっ!殺し屋雇ってる銀行なんてある訳ねーだろっ!(怒)」から始まり、「そもそも貸した相手が借金まみれで首が回らなくなったら意味ねーっつーの!」・・・まあ、ギャーギャー吠える、吠える。
まあ、私も「コレ、別に銀行ネタじゃなくてもいいよな。ってか銀行が相手の話って感じしないな」とは思った(笑)

シリアスを期待していたので拍子抜けしましたが、「荒唐無稽なアクション@銀行が舞台だからちょっと知的っぽい?」程度の気分で見るにはそんなに悪くないんじゃないのー?とは思ったんですが。

アチコチでロケってましてね、ドイツ、NY、ミラノ、イスタンブール、次々舞台が変わります。
コレは旅好きとしては美味しいご馳走でしたねぇ。特に自分が行った事のある場所なんて「わー♪懐かしい〜」な気分で見られるので思わぬサプライズ・プレゼントをもらえた感じです。
特にイスタンブールは良かった。ブルーモスクや地下宮殿、グランドバザールが登場するとワクドキでしたネ♪またトルコに行きたいですよ。いい国でしたわ。是非皆さんも行ってね!

・・・って、ちがーう!コレ映画の感想とちがーう!!(^-^;

正直内容はどーでもよかったです(をい)
グッゲンハイムでの銃撃戦シーンなんてすっごい迫力だしアクション映画としてはそこそこ面白いんですが、コチラとしてはシリアスで息詰まる金融サスペンスを期待していただけに・・・余りにも荒唐無稽過ぎて「これはないわ」としか言い様がなかったというのか。そもそも全く金融サスペンスじゃなかったし(苦笑)

強いて言えば、煮え切らないオチだけはリアリティあったかも。個人的な恨みを晴らしたって意味ないんだよね。
「私がいないと会社が回らなくなっちゃうの〜」という人によく言ってやるんだけど「アナタがたとえ今日交通事故で死んだからといって会社が潰れる訳じゃない。多少は困ってもアナタの代わりはいくらでもいるし、ちゃんと会社は回って行くから安心して仕事休んでも辞めてもいいぞ」ってね(笑)

クライヴ・オーウェンもナオミ・ワッツも演技はよかったなぁ〜。2人共好きな役者さんですよ。
ちょっと残念なのは、サリンジャーはインターポール捜査官になる前はロンドン市警の捜査官だったらしい?んだけど、思わせ振りにサリンジャーの過去ネタを振っておいて、結局大したオチもなくサラリと流されてしまったり、登場人物の個人的な背景やキャラが判り難いというか感情移入し難い作りだったという事でしょうか。

シリアスを期待しないで「アクション娯楽」だと割り切って見れば、そこそこ楽しめる仕様なんじゃないかと思いますよ。
ただし・・・本作を見て「メガバンクってみんなこんな汚い事してるんだぁ〜」なんて誤解はしないで下さいね(^-^;








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2009年04月01日(水) マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと

監督:デヴィッド・フランケル
出演:オーウェン・ウィルソン
    ジェニファー・アニストン
    エリック・デイン、他
オススメ度:☆☆☆☆−


【あらすじ】
共にジャーナリストとして第一線で働くジョンとジェニーの新婚夫婦は、フロリダに移住して新生活をスタートさせた。何事も自分の計画通りに物事を進めるジェニーに快く付き合うジョンだったが、「子供を産む」という彼女の次なる計画に、まだ子育てをする自信がなく、更に記者としての自分のキャリアを積むのに子供が出来ると不自由があるのでは?と危惧するジョンは、友人の勧めで「プレ子育て」として子犬を飼う事にした。ところがこの子犬の「マーリー」がとんでもないおバカ犬で・・・


【感想】
アメリカ人コラムニスト、ジョン・グローガン氏の同名タイトル(邦題)エッセイの映画化。
原作本は本国アメリカで250万部以上を売り上げ、世界26ヶ国で翻訳出版された「ワンコ好き垂涎の一冊」だそうです。こんな書き方をしているので当然ですがぴよは原作未読。ってか原作がある事すら知らなかった。
動物モノは決して嫌いじゃないけど、「何見ても泣かせオチで同じだしな」という感じ。だから正直言うと余り内容自体には興味はなかったし期待もしてなかったんだけど・・・オーウェンが好きだからとりあえず見ておくかー♪なだけで鑑賞。

こーいう期待値の低い作品に限って最近は当たりが多かったりするから、映画ってワカリマセンよ(苦笑)

まず、本作を「ワンコ主役のワンコ映画」と思って見に行った人には不評であろうと推察されます。
タイトルもポスターやチラシもあからさまに「ラブ♪なワンコ映画だよん」というオーラを出していますが、本作主役はワンコではありません。あくまでも主役は「おバカ犬マーリーの飼い主夫婦(家族)」
決してワンコを擬人化したりワンコ目線で人間を観察するような描写はありません。あくまでも犬はジョンとジェニー夫妻の飼うペットとしての位置付けであり、バカ犬と生活する事で夫婦や家族が悩んだり楽しんだりしながら成長していく様を見せて行くだけの話。

だから予告編を見て「生き物の大切さを教えてくれる情操教育ムービーね」と勘違いしてお子様と一緒にご覧になったりしたアカツキには、エローい夫婦生活シーンの連発で目も当てられない状態になってしまうというサプライズ付き(笑)

個人的にはこの作りだったのは、逆に嬉しいサプライズでした♪
犬を飼うという動機からして「大人な事情」だったりする訳ですが、その後もラブラブ新婚時代を経て、やがて子供を持つようになって子育ての苦労や葛藤を体験し、そして子供の成長と共に夫婦も犬も成長し老いて行く。
また「仕事と家庭」の折り合い・・・家族を養う為には自分の目指すモノを諦めなければならないという葛藤や、何もかも計画通りに進んでいた人生が「子育て」だけに関しては決して自分の思惑通りに行かないというジレンマ等、夫側・妻側双方がぶつかる「夫婦として生きる上での壁」をバランスよく見せてくれます。

マーリーとのエピソードの数々は、どれも微笑ましいものばかり(飼ってる本人は微笑ましくないだろうけど)、でもそのどれもがとりたてて情操教育的なお説教染みたモノではなく、ただバカ犬とその犬に散々振り回されて苦労する主人公夫婦の様子を見せるだけに終始しています。
でもペットを飼った事のある人なら判るでしょ?こういう何でもない(どんでもない!?)エピソードこそが、最もペットと飼い主の愛情を強く感じさせてくれるという事を。

健やかなる時も病める時も、嬉しい時も悲しい時も、楽しい時も怒りに震える時も、いつも共にいる。
ペットは家族の一員と呼ばれるけれど決して家族ではない。あくまでも「飼い主とペット」という主従関係があって、その上で時に悲しみを共有するパートナーであり、時に喜びを分かち合う仲間でもある。
そういう「健全な人とペットの関係」を、夫婦の成長物語の上で見せてくれる良作だったと思います。

本作のマーリーに対する最後の処置に対して、賛否両論あるだろうと思います。
でも個人的にはこれもアリだろうと。飼い主としてペットを最後まで責任を持って飼うという事、ペットの為にどういう選択をするのが最良であるかは、やはり共に過ごしてきた飼い主に委ねられて当然だろうと。
この部分だけに囚われて声高に本作を批判して、作品の訴える本質を見誤らないで欲しいと思いますね。

そんな訳で、これから結婚を控えた若いカップル、そして夫婦関係・子育てに悩む世代の方々に広くオススメしたい。
本作は「可愛いワンコムービー」じゃないですよ。あくまで我々と同じ目線の「凡人の素晴らしき人間ドラマ」です。








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