泡とガラス玉


2007年05月31日(木)      ユウダチ


魂の抜けてしまった君が

ドアの向こうに立っていたので

僕はたくさんの涙を流しながら

君を強く抱き締めました。

外は暖かい雨が降っていて

灰色の空の中を黒い鳥が横切って飛んでいきました。

地面に叩きつけられた雨粒は

狂ったように数億の小さな輪を描いていました。

君の変わり果てた姿は

辺りの雨音を無にしました。


苦しみを分けて下さい。

言っても聞こえないならこうやっていつまでも抱きしめています。

君を温めて、そこから救い出しましょう。

果てしない世界から、君は最後の気力で僕を求めて

このドアの前までやってきたのだから。



2007年05月19日(土)      デジャヴ


憧れることはその強い引力をもってしても現実には変わらない
ただ、待ちわびていることしかできなくて。
それは、切に願っても叶わなかった想いとそっくりで
もうすでに行き詰った気がする。
これから起こることなんて
今までにも何度も経験してきたことなのだ。



2007年05月18日(金)      ホシゾラノマチ


隣の家の窓に
柔らかな明かりがついた
やがて世界中の窓に明かりが灯され
蒼い夜の街は星明かりのように美しく変わっていった

唯一この部屋はまだ暗いままで
その中には私だけが居た
静かな闇が一枚一枚重なって
私自身の色も失われてゆくようだった

古びた床の上でひざを抱えていても
誰も帰ってこなくて

窓から見える街の明かりが遠く
星の海のようだと思っていた



2007年05月17日(木)      ニット


もう一度あの頃に戻ってみたい。
笑顔も言葉も0のまま。
忘れていることを確かめてみたい。

それから今をより丁寧に紡ごうと思うだろう。
いつかの言葉を待ち続けながら。



2007年05月12日(土)      ポケット


どうせ嘘だと思って 裏返しの布ばりの空を叩いた

息が苦しかった

裏返しのポケットに入ってる本当を教えて
幼い眼に見せつけて

布張りの向こうの色が青かったなら

ごめんって思うかもしれない


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