今日からウイークデイの朝、10分間、モーツァルトの生涯と作品を取り上げた番組を、毎日流すというので、早速BS2にチャンネルを合わせた。 音楽はディヴェルティメントの2楽章。 映像は、幼い頃から両親や姉とともに、旅をしていたモーツァルトの軌跡を追う。 ナレーションは山本耕次。 ソフトで耳障りのいい声である。 モーツァルトの音楽は、いつか何処かで耳にしていたように、自然に入ってきて、心地よい。 毎朝、これを見ていたら、今までそれと知らず、知っていた旋律が、モーツァルトだったのかと、あらためて思うものも出てくるだろう。 今、時々「モーツァルトの手紙」を読んでいるが、神童とも、天才とも言われている彼の、人間くさい一面もよく出ていて、興味深い。 番組が終わり、そのままにしていたら、「世界我が心の旅」という、過去に放映したらしい番組の映像に変わり、高野悦子さんがポルトガルを旅したものだったので、そのまま終わりまで見た。 パリの映画学校イデックに学び、監督を志したが、いろいろな経緯で、監督にはならず、岩波ホール支配人を皮切りに、映画の仕事を幅広く続けている高野さん。 世界中に、同じ志を持った友人知人が居て、ポルトガルへの旅も、その縁につながっている。 岩波ホールで上映した作品は、商業ベースに乗りにくいアジア、アフリカの作品や、地味だが問題意識のあるテーマを取り上げたものが多い。 私もよく通ったが、今でも、印象に残って居るのは、インド映画「大地の歌」三部作。 一日に一回の上映で、休憩を挟んで、全部で八時間くらいかかったと思う。 それからドイツの女性監督作品「ドイツ青ざめた母」。 グルジアの「落ち葉」という映画。 題名が思い出せないが、ソ連当時の、優れた作品もいくつか見た。 最近の岩波ホールについては、知らないが、状況が違っているかも知れない。 高野さんにとっては、映画発掘は、旅の続きであるのだろう。 この人の講演も、何度か聞いたが、決して居丈高なところがなく、女性らしい柔軟な、静かな語り口は、とても説得力のあるものだった。 こういう番組を見ると、旅への思いに、心を誘われる。 我が子わが妹、夢に見よ かの国に行き、ふたりして住む心地よさ のどかに愛し、愛して死なむ 君にさも似しかの国に ボードレールの詩の一節。 愛する対象は、人ばかりではない。 その地に根づいた文化、遺跡、暮らしの形。 そして人々が育んできたこころ。 それをもとめるのが、旅の心なのだろう。
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