沢の螢

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旅へのいざない
2006年01月30日(月)

今日からウイークデイの朝、10分間、モーツァルトの生涯と作品を取り上げた番組を、毎日流すというので、早速BS2にチャンネルを合わせた。
音楽はディヴェルティメントの2楽章。
映像は、幼い頃から両親や姉とともに、旅をしていたモーツァルトの軌跡を追う。
ナレーションは山本耕次。
ソフトで耳障りのいい声である。
モーツァルトの音楽は、いつか何処かで耳にしていたように、自然に入ってきて、心地よい。
毎朝、これを見ていたら、今までそれと知らず、知っていた旋律が、モーツァルトだったのかと、あらためて思うものも出てくるだろう。
今、時々「モーツァルトの手紙」を読んでいるが、神童とも、天才とも言われている彼の、人間くさい一面もよく出ていて、興味深い。

番組が終わり、そのままにしていたら、「世界我が心の旅」という、過去に放映したらしい番組の映像に変わり、高野悦子さんがポルトガルを旅したものだったので、そのまま終わりまで見た。
パリの映画学校イデックに学び、監督を志したが、いろいろな経緯で、監督にはならず、岩波ホール支配人を皮切りに、映画の仕事を幅広く続けている高野さん。
世界中に、同じ志を持った友人知人が居て、ポルトガルへの旅も、その縁につながっている。
岩波ホールで上映した作品は、商業ベースに乗りにくいアジア、アフリカの作品や、地味だが問題意識のあるテーマを取り上げたものが多い。
私もよく通ったが、今でも、印象に残って居るのは、インド映画「大地の歌」三部作。
一日に一回の上映で、休憩を挟んで、全部で八時間くらいかかったと思う。
それからドイツの女性監督作品「ドイツ青ざめた母」。
グルジアの「落ち葉」という映画。
題名が思い出せないが、ソ連当時の、優れた作品もいくつか見た。
最近の岩波ホールについては、知らないが、状況が違っているかも知れない。
高野さんにとっては、映画発掘は、旅の続きであるのだろう。
この人の講演も、何度か聞いたが、決して居丈高なところがなく、女性らしい柔軟な、静かな語り口は、とても説得力のあるものだった。
こういう番組を見ると、旅への思いに、心を誘われる。

我が子わが妹、夢に見よ
かの国に行き、ふたりして住む心地よさ
のどかに愛し、愛して死なむ
君にさも似しかの国に

ボードレールの詩の一節。
愛する対象は、人ばかりではない。
その地に根づいた文化、遺跡、暮らしの形。
そして人々が育んできたこころ。
それをもとめるのが、旅の心なのだろう。



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