沢の螢

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逢うときはいつも他人
2006年01月27日(金)

先日、夫が、眼の検診のために、大学病院の眼科に行った。

9年前、飛蚊症があるというので、近所の眼科に診て貰った。
多少白内障の気もあるらしく、「今はまだ大丈夫ですけど、そのうち手術することになるかも知れませんよ」と言われた。
いつも気にしながら過ごしていたが、この1年ほど、パソコンの画面が見にくいとか、字を間違えやすいとかいうことが多くなり、「いよいよ手術しなきゃだめか」と、まず、行きつけの開業医に、大学病院への紹介状を書いてもらいに行った。
白内障の手術は、難しいものではないらしいが、失敗例は、よく聞く。
私の知っている人でも、手術の後にばい菌が入って、3週間もの入院に至った例がある。
夫の知人にも、似たようなことがあった。
いい病院だと言われていても、手術は執刀医次第だから、いきなり行くよりも、一筆書いて貰えば、いくらか安心かというくらいのことである。
そこで、紹介状を持って、大学病院に行ったと言うわけである。
眼に関する様々な検査を受けたらしい。
その結果、「特に手術しなければならないような症状はありませんよ。眼鏡が合わないのかも知れませんね」と言われ、眼鏡は半年前に新調したばかりだが、眼鏡屋に行った。
病院でも、眼鏡用の検眼はしてくれるが、目に異常のない場合は、眼鏡屋の検眼の方がいいようだ。
すると、検眼を終えて眼鏡屋の言うには、「私どもは商売ですから、作れと言われれば作りますが、今の眼鏡で、合わないことはないですよ」との返事だった。
強いて言えば、片方のレンズが少し度が合わなくなっているが、片方だけ変えることは出来ないので、もうしばらく、今の眼鏡で、様子を見たらどうですかと言う。
つまりは、大学病院でも、眼鏡屋でも、夫の視力と疾患について、特に何もしなくていいという結論だったことになる。
「まあ、目も老化しますから、多少は、見えにくくなりますけど、手術とか、すぐに眼鏡を変えるとか言う段階ではないですよ」ということである。
9年前に診た眼科医の言った言葉が、一種のマインドコントロールになっていて、何でも、白内障のせいにしていたことになる。
私も、最近夫の撮ったデジカメ写真が、どうも、みな白っぽく写っているので、これも白内障のせいかと思っていたが、関係なかったことがわかった。
「眼というのは、見えないと思っていると、よけい見えないんだな。すっかり思わされてたよ」と、憤懣やるかたない表情である。
そして夫が、私の顔を見てつくづく言うには、「今まで見ていた君の顔は、やっぱり、真実の君だったんだな」。
ん、ん?
これってどういう意味?
白内障だから、見えていたのは、私の顔じゃないと思っていたわけ?
こんな筈じゃないと思っていたってこと?
「・・・と言うことだよ」と、夫はさっさと自室に逃げてしまった。



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