沢の螢

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勁い女の美しさ
2005年11月28日(月)

NHKドラマ「義経」が終盤に近付いている。
前回は「しづやしづ」、昨日は、安宅の関、勧進帳のくだりであった。
いずれも、昔から、歌舞伎や、映画でも欠かせない有名な場面である。
私は、もう10年以上も前になるが、歌舞伎座で、松本幸四郎演ずるところの、「勧進帳」弁慶を見て、魅せられてしまったことがある。
この役は、難しいが、大変やり甲斐があると見えて、いろいろな役者、映画俳優達が演じている。

静の役も、若い美人の新人女優の、出世役になっているようだ。
NHK大河でも、古くは、藤純子(現 富司純子)が19歳で演じ、その相手役、義経の菊之助(現 菊五郎)とは、後に結婚と言うおまけが付いた。

今回の静役は石原さとみ。
きれいなだけで、大根だと思っていたら、20日の「義経」では、素晴らしい演技を見せた。
頼朝の前に引き出された静が、弟である義経を討つのはなぜかと頼朝にただす場面、義経の子を産み、頼朝方に取り上げられたことを知って、半狂乱で政子に迫るところ、頼朝勢の居並ぶ中での、義経を思って舞う場面、いずれも、素晴らしい迫力だった。
ひたすらに、義経に心を寄せる女の一途さを表現して、見事だった。
ドラマに描かれた政子の強さと、静の勁さの違い。
女だてらに、国を左右するほどの影響力を持った政子は、表に出た文字通りの強さ、今の日本で、強い女と思われている大半はこのタイプ。
だが、静のそれは、内に秘めた耐えるつよさである。
決して大声も出さず、自己主張はしないようでいて、実は表に出ない、したたかで、生半可なことではくじけない意志を持つ。
大切なもののためには、イザとなれば命を賭ける強さ。
私の知っている人にも、ほんの少数であるが、存在する。
こういう人には、かなわないなあ、と文句なく脱帽する。
そして、皆、ふつうの主婦たちである。
「本当に強い人は、人にやさしくなれるんだよ」と、いつか息子が言ったことがある。
小学生から中学生の頃まで、私は、息子を叱ってばかりいた。
そんな母親の私に、どういういきさつからだったか、息子が私に向かって言ったのである。
その言葉は、ずしんと響いて、今も私の心の中にある。
耐えるつよさ。
人にやさしくなれる強さ。
「義経」に描かれた静のそれを見て、勁い女の美しさに、感動してしまった。



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