友人が夢中で読んでいるので、共通の話題のためにと、野次馬根性で読み始めた「ダーム・ギャラント」。 都内の図書館から取り寄せて貰った物であるが、途中まで読んで、あまりにくだらないので、もう沢山という気になり、3日間で、返してしまった。 艶書と言っても、似たような話を、これでもかこれでもかと、繰り返しているだけ。 ロマンもなければ、本当の意味でのエロティシズムもない。 この本が、バルザックやラ・ファイエットに影響を与えたと言うが、ホントかいなと思う。 こういう本があるのを知ったと言うだけが取り柄である。 この本のひとつの逸話から、河野多恵子が「後日の話」という小説を書いたというので、それも読んでみたが、こちらの方が余程面白かった。 しかし、いずれも、私好みではない。 私が今まで読んだ中で、最大の恋愛書だと思うのは、「アベラールとエロイーズ」である。 12世紀はじめ頃のフランスの哲学者アベラールと、彼の愛人であり後に妻となったエロイーズの間に交わされた往復書簡集。 ふたりは、はじめ師弟の間柄だったが、すぐに恋愛関係になり、やがて不幸な出来事によって、間を引き裂かれ、別々の修道院にはいる。 10数年後、アベラールが友人に当てて送った、生涯の物語を書いた書簡が、エロイーズの手に渡り、それに在りし日の恋愛感情を蘇らせた彼女が返事を送ったことで、ふたりの間に、手紙の遣り取りが始まる。 その12通の書簡集である。 私がこれを読んだのは、20歳の時。 大学3年の時であった。 合唱仲間のある男性が、この本を読んでいたく感激したことを聞き、早速買って読んでみたのである。 12世紀はじめと言えば、日本は平安末期から鎌倉時代に入る頃。 同じ頃に、海の向こうでは、こんな激しい愛の物語があったのかと、ショックを受けたことを覚えている。 今もその本は手元にあるが、岩波文庫で、旧仮名で書かれてある。 アベラールとエロイーズが俗世の恋愛関係にあったのはわずか3年。 その後は両者は、共に修道院で神に仕える身となり、往復書簡を取り交わすだけで、一度も会ったことはなかった。 特に、17歳でアベラールと出会い、彼との愛に生きたエロイーズの、真剣で一途な手紙は感動的である。 肉の愛の思い出と、神への愛とのはざまにあって、苦しむ痛ましい叫びが、生々しく語られ、心を打つ。 彼女は20歳からの人生を、修道院で、アベラールの指示に従って、敬虔な祈りの中で送り、アベラールの死後、その遺体を引き取って、遺言された修道院に埋葬したのである。 いまもう一度読んでみると、若い頃によくわからなかったことが、気づかされる。 往復書簡は、後半は基督教の教義や哲学的考察が主になっていて、なかなか難しい。 どういう本かと訊かれても、一口には説明できない。 書名は知っていたが読んでないと言う友人に貸した。 彼女が艶書と比べて、どんな感想を持つか、興味がある。 「アベラールとエロイーズ」。 これ以上の恋愛書を、他に知らない。
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