蓼科の小屋にいる連れ合いに電話する。 6月から光ファイバーを導入、プロバイダーが代わり、それにつれて電話のひとつをIP電話にしたので、市外はなるべくこちらを使う。 ずいぶん料金が違うようだ。 向こうからは呼び出し音があって、何回か鳴らして切ると連れ合いの電話の合図である。 そこで、こちらからかけ直す。 「まだ来ないのかい」と言っている。 1週間ひとりでいると、自炊生活も飽きたのかも知れない。 私のほうは、暑さを我慢すれば、東京での一人暮らしは、なかなか快適だが、一昨日で、行事が一段落し、今週は暇なので、行くことにした。 朝、インターネットで特急「あずさ」を予約、午後4時32分八王子発の切符が取れた。 最寄り駅から八王子まで、30分見ればいい。 切符をみどりの窓口で受け取る手続きがあるが、10分か15分くらいあればいいだろう。 そう計算して、留守中の新聞の留め置きを頼んだり、ゴミを出したり、家の中を少し片づけたりし、パソコンの電源も切って、3時ちょっと過ぎ、家を出た。 ボストンバッグとリュック、ウエスとポーチくらいの荷物である。 駅に着いたのは、3時20分、少し早かったなと思いながら、みどりの窓口に行って驚いた。 長蛇の列なのである。 みな、お盆休みの帰省の切符などを取るので並んでいるらしい。 駅員に「もうインターネットで予約してあって、受け取るだけなんですけど」というと、そこに並べという。 仕方なく、列の最後尾に着いた。 八王子までの中央線に乗るには、4時がぎりぎりだが、40分近くあるから、大丈夫だろうと思った。 しかし、切符の窓口は3カ所あるものの、見ていると一向に列が進まない。 これから乗る客と言うより、むしろ、翌日以降の切符の予約に来ている人が多いように見えた。 駅員は、一人一人、時刻表を見ながら丁寧に応対していて、一人5分ぐらいかかっている。 この調子じゃ、「あずさ」に乗り遅れてしまう。 列に荷物を置いたまま、2人ぐらいの駅員を見つけて、「並んで待っていたのでは列車に遅れそうだから、何とかなりませんか」と言ってみたが、あくまで「並ぶことになってますから」との一点張りで取り合ってくれない。 じっと我慢したが、ついに、時計の針が4時を指そうとしている。 私の前には、まだ10人の客がいる。 予約してある切符を受け取るだけなのに、何で乗り遅れなければならないのか。 茅野駅の到着時間には、連れあいが車で迎えに来ることになっている。 その列車を逃したら、次は何時になるのか。 たまりかねて、窓口がひとつ空いたところを見て、ロープ越しに声を掛けた。 「皆さん並んでいらっしゃるのに、大変申し訳ないんですが、4時32分八王子発の特急券をインターネットで予約してます。 受け取るだけなんですけど、ダメですか。 もう40分並んでます。いまから行って間に合うかどうかぐらいなんですけど」 窓口の係は、時計を見て、席を立ち、私をロープの中に入れてくれた。 「ちょっと待ってください」と言って席を立ったが、すぐに戻ってきて「5分後に特別快速が出ます。それに乗れば間に合います。」と、私の予約のメモを見ながら、すぐに、コンピュータを弾いてくれた。 切符が出て、クレジットカードで支払い、列の先客に「済みません。ごめんなさい」と挨拶し、「あと2分ですよ」との声を背に、荷物を持って階段を駆け下りた。 同時に中央線特快がホームに滑り込んできた。 乗り込んで席に掛けて、ドット汗が出てきた。 何だか腹が立って仕方がなかった。 わざわざインターネットで、クレジットカードの番号まで書き込んで登録し、予約している。 予約番号も名前も入っている。 窓口で、「何日の何時頃の列車ありますか」なんて、時刻表まで調べさせて切符を取っている悠長な客と、なぜ一緒くたに扱うのか、窓口をわければ済む話ではないか。 ハイシーズンには、窓口が込むのは仕方がないが、なぜもっと臨機応変に出来ないのか。 「当日用」と「翌日以後」と、手続きをわければいいのである。 それに、イオカードなどを販売している駅員だって、急いでいる客のために、何とかしてくれたっていいではないか。 私の仕事ではありませんといった感じで、客の身になって考えようとはしなかった。 その駅には「何か解らないことがあったらどうぞ駅員まで」と書いてあった。 40分も待った挙げ句、予約の列車に乗り遅れたら、どうしてくれるのか・・。 予約番号を持っていれば、すでにコンピュータに入力されているはず、直接乗って、列車の車掌が手続きすればいいではないか。 そんなことを反芻しながら、憤懣やるかたない気持ちでいるうちに、電車は八王子に着いた。 一旦ホームにおり、幸い同じホームに目的の列車が来ることがわかってホッとした。 4分後、「あずさ」が到着、無事、乗ることが出来た。 巡回のサービスで、熱いコーヒーを頼んで、やっとホッとした。 到着駅には、連れあいが待っていた。 切符の受け取りに40分もかかって、危うく乗り遅れそうになった話をし、怒りをぶちまけたら、「だって国鉄時代のDNAで動いてるんだもの、そう簡単に体質が変わる訳じゃないよ」と連れ合いは言った。 「折角インターネットで予約という最新のシステムを取り入れていても、現場は、旧システムで動いてるんだろうね」と笑っていた。 私は、ネット上で、特定団体、個人の実名を上げて誹謗中傷めいた事を書くのは、ルールに反することを知っているし、いままで、このたぐいのことは書いたことがない。 しかし、今回は、特定団体と言うにはあまりに巨大な鉄道の話、ちっぽけな私のような女が太刀打ちしても叶わない相手であり、実際に体験したことだから、敢えて書かせてもらった。
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