a Day in Our Life


2007年02月28日(水) 倉雛ブーム。


 「二人共、もっと絡みお願いしまーす」

 カメラマンからの声に、ソファに背中深く座ってべったりくっついた状態でこれ以上どう絡めって言うんかな…とぼんやり考えた大倉をよそに、村上はにっこり笑ったようだった。
 ようだった、というのは彼が自分より体一つ分後ろに位置していたからで、しかもやや村上に凭れる形の大倉的には、頭一つ上から村上の笑う気配が感じられたのだった。
 どうするのかな、と思う大倉の頭上から、穏やかな村上の声が降り注ぐ。
 「やって。たつよし、もうちょいこっちおいで」
 「え、」
 言いながら肩辺りを捕まれて、ぐいと引っ張られる。それまでだって結構密着していたのに、それ以上、大倉の腕が村上の太腿に乗り上げる。なす術もなく体重を村上に傾けて、手のひらの置き場所に困って結局、太腿の上に乗せるしかなかった。サッカーを始めて随分と筋肉のついた村上の太腿は、適度に硬い質感を手のひらに与えた。
 何やろ、犬みたいや。
 今のこの自分の体勢と、そうされる扱いが。おいで、とまるで子どものように呼びかける声が。実際の村上は犬を飼ったという話は聞いた事がないし、それ以前に犬が苦手だと聞いているのに。
 それで大倉はふと、思い当たる。
 犬じゃない。そうや、この人は”大型犬”の扱いに慣れてるんや。
 普段、自分と同じくらいかそれ以上の大きな人間を相手にしているから、たぶん、こんな扱いは天才的に上手かった。それでなくても扱いの難しいあの人を、本来の意味で飼い慣らす事が出来るのは彼くらいしかいなかっただろう。
 その事が、自分的にマイナス要素だったのかプラス要素だったのか、大倉には一瞬、判断しかねた。
 横山に接する同じやり方でやんわりと大倉を受け止めた村上に、悪気なんかほんの少しもなかったに違いない。
 殆ど寝そべるような体勢で、珍しく下から見上げる村上を、大倉はこっそりと盗み見た。真直ぐにカメラを見詰めるその表情は”仕事”の顔になっていて、自分の一番いい顔を探りながら、どう撮られているかをきちんと計算している。ブサイクにはブサイクなりのやり方があるねん、と言う村上は、貪欲なのだろうと思う。
 それなら、と大倉も思う。
 導かれたこの体勢に、自分は便乗しようと思う。年上の彼に甘えるような、それでいて小生意気な、そんなキャラクターを演じてみる。口角をゆるやかに上げて、微笑みを浮かべる。笑みを刻みながら上目遣いでカメラを挑発する、村上に恋をする年下の俺、はどんな風に写っているだろうか、と思った。



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TVライフ萌え。

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