a Day in Our Life


2006年12月22日(金) もう君以外愛せない。(横雛)


 「なあ、ヨコぉ」

 その呼び声はひどく甘ったるくて、横山は普段よりゆっくりめに振り返った。
 「ちょおそこに跪いて」
 「?」
 何かのプレイかと訝しがりながらも言う通り膝をついた横山に、無言のままの村上が近付いて来た。と、思った瞬間にその両腕に抱き止められた。横山が膝を折っているせいで、ちょうど頭が村上の胸の辺りに当たる。肘を折り曲げて、両腕ごと頭を抱え込まれた。
 「…」
 ぎゅ、とその胸に抱き込まれたまま、さて横山は思案する。冗談でも悪いプレイでもなさそうな村上の様子を、窮屈な状態のまま、上目遣いで盗み見た。
 (…そういや何か、書いとったな)
 出たばかりのその雑誌を見たのはたまたまの偶然で。入所したての頃じゃあるまいし、自らの載っている記事をわざわざ買い求めたりはしない。だからたまたまその雑誌のたまたまそのページが開いていたからたまたま目を通しただけで、しかもたまたまその項目に目を止めたのも、たぶん偶然だった、と思う。
 (ラジオ終わりの午前1時に人恋しくなるとかナントカ)
 それを読んだ時は喧嘩でも売られているのかと一瞬眉を顰めた横山だったけれど、村上がそんな回りくどい喧嘩を売るタイプではない事にすぐに思い至った。むしろ可能性としては、喧嘩ではなく。
 (………)
 こつ、と気持ち頭を傾けて、村上の胸に顔ごと預けてみる。案外強く抱き留められているせいで、動きとしては僅かなものだったけれど。
 それは窮屈な体勢だったけれど、悪い気分ではなくて。ハードスケジュールの中で少しだけ疲れた顔をした村上の、洗いざらしのシャンプーの匂いを嗅ぎながら。
 (…コイツは今、人恋しいんか、癒されたいだけか、どっちなんかな)
 正直どちらでもいい、と横山は思った。珍しい状況で珍しい村上の抱擁を受けながら、たまにはこんなのも悪くない、とも。
 「…ヨコ」
 横山の思惑をよそに、頭上からぽつ、と村上の声がする。
 「何やチクチクして抱き心地悪いわぁ。やっぱヨコの髪はもっと長い方がええね」

 好き勝手な言われように思わず、横山は苦笑いを浮かべた。



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雛紺初日感想文。

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