a Day in Our Life


2006年08月08日(火) アントーニオin雛(関∞)


 父上!と、叫んだ主を振り返って、そこにいるメンバーは一様に何か不思議なものを見るような顔をした。

 「…ヒナ。頭おかしなったんか?」
 「父上こそ、どうされたのです。その妙な格好は何なのですか」
 妙なと言われたTシャツにジーパン姿の横山は、シャツがめくれて腹でも出ているのか、それとも食べ物のシミが付いているのかとぐるり体を見回してみたものの、よく考えたら上下ジャージ(しかもあずき色!)の村上に言われる筋合いはない、と正面を向き直った。
 「おまえの格好も見てみろや」
 稽古場の鏡の前に導くと、自分の姿にまた驚いたような村上の様子。どっきりの範疇を越えた迫真の演技に、これはひょっとして、実際演技ではないのかも知れない、と横山が思い至った時。
 「ヒナ、一体どないしてん」
 村上の視界に入り込んだ渋谷を認めた瞬間、また村上の目が見開く。「クローディオ様まで…!その変な髪形は…!」と言われた渋谷は、頭の上でおだんごを作ったヘアスタイルが、村上的にそんなに気に入らないのかと若干凹んだ。のだが。
 「いや、これはまさか…」
 呟きと共に近づいた錦戸は、自分が何と呼ばれるのか予想をしていた。案の定、目が合った村上は、驚きと懐かしさの雑じり合った、複雑な表情になった。
 「…直樹。」
 今、自分を見る人と実際に対峙している時、彼に名前を呼ばれた事はそういえば一度もなかったな、と錦戸は思った。
 「やっぱり。舞台上のキャラが村上くんに降りて来たんですよ」
 「え?!ってことは…この人、アントーニオ?」
 「何故、私の名前を…!」
 早い遅いの違いはあれど、そろそろ場の全員が、事態を把握し始めていた。唐突に理解したらしい安田が素っ頓狂な声を上げたのに、知らない人を見る目で警戒心を露にさせた村上…ではない今はクラッスラ・アントーニオその人と目を合わせた安田は、あれ?と思った。
 「俺の事は知らないんだ?」
 「だって、劇中アントーニオに妖精の姿は見えなかったんだもの。我々の事は覚えていまいよ」
 ちょっとだけ寂しげな顔をした安田に、答える大倉は何だか芝居がかっていて。実際、エルフィンが降りて来た様な物腰になった。
 「うーん、俺に本当に魔法が使えたら、何とかしてあげるんだけどなぁ」
 「妖精…?魔法?この者達は何の話をしているのだ、シートン」
 「いえ僕、丸山です」
 真顔で間違いを訂正した丸山に、当事者達以外の全員が一斉に吹き出す。おいおいマル、違和感なくシートンやと思われてたで!と、指を指して笑い転げるメンバーに、この時点で危機感はあまりなかった。



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二重人格=表裏=遊@王=王様で、書いてみたアントーニオin雛(笑)

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