妄想日記 

2003年07月27日(日) 初恋(ヨコヒナ)

某芸能人が別れたというニュースを見ていて、やっぱりなあ〜なんて話から付き合い方の話になり。
「長く付き合うコツってなんですかね?」
「そら、飽きさせないことちゃうか?」
何時の間にか恋愛相談状態になっていた昼下がり。あーだこーだと議論しあう後輩を見ていた渋谷は、かわええなあと見守っていたが突然。
「横山くんと村上くんは、なんであんなに仲良いんですか?」
小さい子の代表ともいえる真鳥からつぶらな瞳で見つめられて。あまりにも純粋な目に、最初は何を言われたのか気付かなかったけれど。
「あんなに長くお付き合いできるって、なんでですか?」
「ホンマや。あんなに一緒にいるのに飽きないって、なんかコツでもあるんですかね?」
次々飛んでくる質問の数々に、さすがに何を聞かれたのか理解した渋谷は。


チビにまで気付かれてるやないか。


付き合ってるとか、そんな宣言したようなことは言ったことはないけれど。近くでも見ていた関ジャに8のメンバーは気付かれるだろうと思っていた。
言葉にしなくても、あんなにあからさまなのだから。一緒にいて気付かないわけがないだろうと。
しかし、まさか小さい後輩達にまで気付かれてるとは。渋谷でさえ思わなかった。
あのバカップルには困ったもんだわ。と苦笑い浮かべた。
「長続きするコツか?」
「はい!」
目をキラキラさせて自分の言葉を待つ子供に、どう答えたらいいかと答えあぐねていたけど。
まあ、思ったこと素直に言うたらええやろな。
バカっプルを一番近くで見てきたのは自分なのだから。

「あの二人はなあ・・・お互い片思いが長かったからなあ」
「ええ?あの二人がですか?」
「ああ。お互い・・・つうか自分の気持ちに気付くの遅かったからなあ」


あのときはえらい騒ぎやったなあ・・・・と渋谷は当時のことを思い出して苦笑いを浮かべた。








「ヨコのこと、好きになったみたいや・・・・」
突然思いつめた表情を浮かべて呟く村上を、渋谷は軽い気持ちで受け止めていた。いつもの相談かと。話がある〜言っては誰を好きになったけどどうしようと言われて。惚れやすい村上は好きになるたびにすぐに行動してフラれて。そのたびに慰めてる渋谷は、またいつもの冗談かと思い軽く返事をしようとしたけれど。
「そうか〜ヨコチョのこと・・・・・ヨコチョ?!」
自分で名前を言ってから、村上の思い人という人物にやっと気づいた。横山言うたら、一人しかおれへんよな?
「うん」
コクンと、恥ずかしそうに頷く村上。



横山と村上。
一見仲良く見える関ジャニだけれど、この二人には大きくて厚い壁があった。




見るからに好意を持ってる横山と。
「嫌い」だと公言する村上。




好きと嫌いという、越えられない厚い壁が二人の間にはあった。




誰にでも懐くと思われる村上が、唯一「嫌いや」と公言していたのが、他ならない横山のことだった。
あの頃は渋谷と同じように、村上もまだ育ってないような小さい体型なのと「甘えた」な本来の性格からなのか。
同い年から年上まで、村上の周りのやつらは甘えさせ放題だった。
仕事で失敗したときやヘマしたとき。キツクしかったりもしたけれど。泣き虫な村上が目に涙を浮かべるたびに「ええよ」と許してしまっていた。
最後には、怒ってるはずの相手のほうが謝ったりしているときもあった。
けれど、横山だけは違っていた。
ダメなもんはダメ。いけないことはいけないとハッキリしていた。
それどころか、優しい言葉をかけることのほうが少ない気がした。
「阿呆」のオンパレード。村上がドジったり失敗したり、なにかあると必ず見つけては笑ったり飽きれたり。
そのたびに村上は涙目になりながら他の人に泣きついていた。



天邪鬼な横山と、泣き虫な村上。
この二人はダメだろうとだれもが思っていた。
あまにりも正反対の二人だから。





まあ、周りがとやかく言ってもしゃーないけどな。


いくら不釣合いでも。
本当かどうかなんて、本人にしかわからないのだから。
実際、ダメだろうと思っていた横山の恋が成就しそうなのだから。
世のなか、何があるかわからへんなあ・・・と渋谷はあらためて思った。



「言うたらええやん」
「そんな簡単に言うけど!同じ仕事仲間やしもし振られたら気まずいし・・・」
「大丈夫やって!」
だって、振られることはありえへんから。 横山が村上のことをずっと見てるのを、渋谷は気付いていた。いや、渋谷だけでなく周りの仲間はみな気づいていた。村上と行動してると必ず横山と視線が合い、しかもその視線がそばにいる自分に向けた険しいものだったら。大抵のやつは気付くだろう。だから。 横山は、村上のことを好きだというのが、暗黙の了解になっていた。素直じゃない横山は、村上に対していじめたり憎まれ口を叩くのが多く。そのたびに泣いてる村上を回りは慰めながら。うまく恋を進めることが出来ない横山に同情していた。「ヨコ嫌い!」 泣きながら呟く村上を見てる渋谷は、残念だけれど横山の恋は成就することはないだろうと思っていた。


こーいうん、逆転サヨナラホームラン!って言うんやろうな。


嫌いだと言ってたのが、180℃回転してしまったかのように好転したのだから。
サヨナラホームラン・コイン一枚でスリーセブン・宝くじ一枚で三億円。
それくらいの確率。




「今から言ってくる!」
相談を受けた次の日の撮りで村上に断言されて。昨日の今日で・・・相変わらず恋に関しては素早いなあと感心しながらもがんばれよとエールを送る。自分には結果は見えているから。心配もなにもない。ただ、成就したと報告を受けるのみだと思っていた。
しかし・・・・・





「おっちゃん、どうしたと思う?」


当時のことを思い、笑いを隠せない表情で言う渋谷に。後輩達は不思議そうな表情なを浮かべていた。その話の流れから、結果はたった一つしか浮かばない。今の二人があるのは、告白が成功したからなのだろうと誰もが思っていた。けれど。どうした?とわざわざ聞いてくるということは何かあったんだろうか?


「わかんないですよ〜!」
降参!とばかりに手をあげる後輩達を見て、ほくそ笑んで。それから急に真剣な表情を浮かべる渋谷に回りで聞いてた子達も緊張しながら、次の言葉を待った。



「逃げたんや」
「ええ?」



爆笑する渋谷を横に、心底驚いた表情を浮かべる後輩達。





「大変やったで〜」



「振られた〜」と泣きながら自分の家に来た村上を、一時間くらいかけて慰めながら。横山の純情すぎる反応にあきれたりもした。
告られて逃げるなんて、最低やわと思いながら。

「ヨコチョらしい反応やわ」

今まで自分のことを嫌ってるだろうと思っていた相手が、まったく逆のことを言ってきたのだから。当然心の準備も何もしてない状況で。
ただでさえ照れやな横山が困った末に逃げ出したのも無理ないだろうとも思った。
だから次の日、わざわざ仲介役をやったのだ。逃げる横山を呼び止めて、話しをする場を作った。両思いなのだから、話合えばうまくいくのだからと横山を説得して。渋る横山を連れてきた。結局、横山の照れ性格よりも村上の押しのほうが強く、うまくいったのだけれど。





「おはよーございまーす」



二人並んで登場するのを見て、噂してたのが聞かれた?とかバレるかも?って慌てるチビ達。
それに笑いを押さえられない顔そのままに、二人に挨拶を返す渋谷。「噂をすれば〜ってのはホンマやなあ」なんて呟く。チビ達が「渋谷くん!」と慌てるのをよそに、ニヤニヤと笑顔を浮かべていると。
そのことにいち早く気付いた横山が不審な顔しながら近寄ってくる。
「なんやねん、噂って」
「なんでもない〜」
笑うと、横山がおもしろくなさそうに怒ってるのを隣にいた村上がなだめていた。


すっかり、ええコンビっつーかええ夫婦ていうのかこの場合?



自分の発想におかしてさらに笑いを深くさせると、「なんやねん」と言いながらさきに座っていた村上の隣に座る横山の姿があった。
あれから数年たったんだけど、いまだに二人の間は新婚並に暑かった。
相手の視線を追って、無意識にそばにいるとこなんて。
夫婦というよりもばかっぷる状態だった。




末永くお幸せにな。






「これが、うまくいくコツやねん」
夫婦漫才でもし始めそうな勢いの二人を指差しながらいうと、感心したように頷く子達にさっきよりも大きな声で笑った。


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薫 [MAIL]

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