| 2003年07月04日(金) |
『お誕生日』(赤ヒナ) |
ラジオあとに時間もありますか!?って電話かかってきたからあとはホテル帰るだけやしヒマやで〜って答えたら。 「じゃあ、終ったら行っていいですか?」 「ええ?」 いつもだったら電話するくらいのことしか言わないのに。今日に限って会いたいと言われて返事につまった。 目の前では舞台の相談してた横山が、中断されて怒ったような表情浮かべてる。それにごめんと頭下げながら、明日のことを思ってどうしようかと考えた。 明日も午後から舞台のリハあるから朝ゆっくり出来ないだろうし。寝ときたいんやけど。 東京の仕事と大阪のリハと行き来は結構しんどくて。仕事のない時間は出来ることなら誰にも会わずにゆっくりしていたい。 そう思って答えようとしたけれど、再度伺うように聞こえてきた声があんまりにも必死だったから。 「ええよ」 思わず答えてしまった。甘やかしすぎやわ、自分。 「じゃあ、あとで行きます!」 ものすごい機嫌よく返されてしまい、今更なしなんて出来ないだろうし。 それに、赤西と二人で会うのも久しぶりだし。 「わかった」 返事を返して、携帯を切る。
「遅刻すんなよ」 会話から今の相手が誰かってわかったんだろう。横山に嫌味みたいな口調で釘さされた。 「わかってますよ」 横山さんじゃあるまいし。一言つけたすと途端にものすごい顔で「阿呆!」と怒られた。
挨拶もそこそこにしてまっすぐホテルに戻ると、フロントで赤西が待っていた。 「お疲れ様です〜」 「ありがと」 「はい・・・・・」 何かを訴えるような視線を向けられて、なに?と問いかけるとなんでもないです。と凹みながら言われて。 気になって考えてもその視線の意味がわかんなくて。なんやあ?と思ったけど赤西が言わないからどうしようもないし。 まあ、ええか。思いながら二人でたわいもない会話しながら部屋に入る。 しかし玄関先で立ったまま中に入ろうとしない赤西に村上が近寄ると、凹んだままの顔をあげて。 「今日、なんの日かわかりますか?」 「え・・・・?」 さっぱりわからなくて呟くと、さらに落ちこんだ表情を浮かべてた。
「今日、誕生日なんですけど・・」 「え?!」
どうしよ。
さっぱり忘れてた・・というか知らなかった。 やって、違うグループやし。自分も言わないから俺が知るわけないやん。8人覚えるので精一杯やし。 なんて言ったらますます凹んでしまうんだろうなあと思いながら、しょぼんと下向いたままの赤西に、どうやって立ち直らせようかと考えた。 プレゼントなんて用意してるわけがない。かといってあとで渡してもあんまり喜ばないかもしれない。 きっと赤西は今、何かお祝いしてほしいんだろう。だから今日会いたいと伝えてきたのだろうから。 きっと、言葉だけじゃ足りないだろう。 しゃーない、奥の手だ。
「なんか、してほしいことあるか?」 「え?」 「プレゼント用意してへんから、その代わり俺が出来ることならなんでもしたるよ」
ええ?と考える仕草をしながら、あれでもないこれでもないと呟く赤西の言葉はあまり聞き取れなかったけれど。 ときどき自分を見ながら赤くなったりするのを見て、あーやっぱそっち系か・・・と思った。 そっち系。いわゆるエッチ系。 なんでもする、なんて言われたら。大抵の男はそーいうお願いをしてくるだろうとは思っていたから。 だからあまりこの奥の手は使いたくないんだけれど。 けど、誕生日やしな。 まさか、あんまりにも無理難題を言うわけもないだろうし・・・・・なあ? けど、相手はあの赤西だし。
・・・・・なんや、不安になってきたわ。
「よし!!」 やっと決まったらしく。手をぐっと握り締めながらそばによってくる赤西。 「すっげしてほしいことあるんですけど、いいですか?」 何故か頬染めて、恥ずかしそうに見つめてくる。それを見て、やばいこと言うたかな?と思った。 こいつのことだから、ものすごいこと言ってくるんじゃないだろうか・・・・・この前拒んだあれとか? もしかしたら、あれやれとか? 誰の影響かビデオの影響か、この頃余計な知識を増やしていくのを思い出し。 もしかして、大変なこと言うたんじゃないか?と後悔し始めた頃。 「ちゅう!」 「は?」 「村上くんからちゅうしてくださいよ!」 「はあ?」 何を今更。あまりにも予想してない言葉に、返事につまった。 やることやってるのに。普段はもっとすごいことやってるしてあげたりもしちゃってるのに。 してほしいことが「ちゅう」なんて。
どこの中学生やねん。
けれど目の前の赤西は「言っちゃった!」なんて呟いて。顔を赤く染めてるし。 もっとすごいこと言われるんじゃないかって身構えてた自分が、阿呆みたいだ。 あんまりにも純な仕草をする赤西に対して、こんなことしか浮かばない自分は、汚れてるんかなあなんて苦笑いした。
「ほんなら、目ぇ閉じて?」 上目使いの出血大サービスを繰り出すと、赤西は嬉しそうに目を閉じた。 ちゅうっと、軽く唇が当たるくらいのキスをすると、すぐに離した。 「これで・・」 ええ?と聞き終わる前にぎゅうと抱きしめられて、そのまま後ろにあったベッドに押し倒された。 おいおい、何暴走してんねん。 止めようと口を開いたとこに赤西の唇が重なって、そのままさっきよりディープなキスをされた。 あ〜・・・帰ってきたばっかやし風呂に入りたいんやけど。 けれど赤西の勢いは止まることはなく。赤西の手が服のなかに入ってきたときには勢いは止まらないだろうと諦めた。 何歳になっても変わらへんな、コイツは。 思いながら、段々と考える余裕もなくなってきた頃。
あ、肝心なこと言うてないわ。
赤西の背中を軽く叩く。それに気付いた赤西が不満そうな表情浮かべながら唇を離す。 「そない顔せんでも、させないわけやないから」 苦笑い浮かべながら、赤西の顔を真っ直ぐに見つめる。
「誕生日、おめでとう」
忘れてててごめんな。そんな気持ちもこめながら、目の前で嬉しそうに笑う赤西をぎゅっと抱きしめた。
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