Monologue

2008年02月10日(日) 幻の沼

劇団オルガンヴィトーの『幻探偵』を下高井戸にて観覧。

オルガンヴィトーは私が舞台にハマり始めた20代の頃から観ている、特に深い想い入れが有る劇団の一つだ。

一度活動休止していた時期が有ったのだが、最近再び活動を再開した。

活動再開後の舞台を観るのは今回が初めて。

以前出演なさっていた役者さんは、ほとんどいなかったが、その代わりに他の劇団で何度も拝見させて頂いていた役者さんが三人も参加なさっていたのに少し驚いた。

物語は『ハムレット』を下敷きにした復讐譚。

以前観た、おそらくオルガンヴィトーのライフワークの一つであろう作品に改訂が加えられていた。

「産まれて来た事が地獄」だと母親に言われる程に呪わしい血の宿業を背負っている子供でも、その生命は『光』に向かって逞しく泳ぎ続ける・・・
彼らの力強い姿に励まされ、私も生きる勇気を貰った。

酷な物語の中にも幾つか笑えるシーンが盛り込まれていて、特に恋に破れて発狂し溺死した妹の兄が妹の形見のピンクの着物を着、赤いリボンで髪を二つ結びにして登場したシーンでは大爆笑してしまった。

オルガンヴィトーは舞台装置の創り込みにも毎回驚かされるのだが、今回は何と舞台全体の床が底無沼になっており、役者さん達は全身ずぶ濡れになって演技なさっていた。
役者さんの熱演に依って客席にビシャビシャ飛んで来る水飛沫を、客席前に用意されたビニールシートを被って防ぐ観客の私達は、あらかじめ開演前にレインコートまで着用させられていた。

それはスリリングで、とっても楽しかったのだが、それにしても何故こんな寒い時期に、冷たい水に潜る芝居を演るのだろうか?
役者さんは、かなり大変そうだった。

終演後、外に出たら周囲が雪で真っ白に様変わりしていたので、
まだ芝居の中に存る様な不思議な気分にさせられた。

その雪も地元の駅に帰り着いた時には、もう跡形も無く、幻の様に消え失せていた。


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