| 2007年01月31日(水) |
いきなり勝手に次回予告(『仮面ライダー・ガタック編』) |
三島と根岸を倒したあの日から約一年後・・・
と ある街の と ある交番に と ある若い巡査がヤル気満々で日々勤務しておりました。
彼は、 ごく普通の警察学校を卒業し、 ごく普通のおまわりさんになったのですが、 たった一つだけ、 普通の人と違っている事が有りました。
それは何かと云うと、 実はおまわりさんは『・・・・・』だったのです。
「ええっと、 青少年福祉会館は、この大通りをひたすら前に突っ走って・・・ あ、いえ・・・歩いて行けば、すぐに判りますよ」
その若い巡査は、 小さな男の子を連れた父親らしい男性に尋かれた建物の場所を 親切な口調で説明した。
「どうもありがとうございます!」
「どうもありがとう!おまわりさん!」
「いえいえ、どういたしまして・・・」と、若い巡査が、 ペコリ・・・と頭を下げた親子連れに向かって、優しく微笑み掛けると、
「あれ?」
ふと顔を上げた少年の父親が、何かに気付いたかの様に、 若い巡査の顔をじぃ〜〜〜ッと穴が空きそうな位に覗き込んだ。
「あの・・・?な、な、な、何でしょうか?」
「もしかして、おまわりさん・・・、 昔『ZECT』の『仮面ライダー』だった人じゃありませんか?」
予想外の問い掛けに、若い巡査は想わずハッと息を呑んだ。
「そうだ!このおまわりさん、 『かめんライダー』にヘンシ〜ン!してたひとだよ! ボク、みたことあるもん!」
「そうだよな! お父さんもTVで観たんだ!ええと、確か・・・」
父親は子供と一緒に並んで首を傾げながら、 しばらくの間、考えを巡らせていたが、 やがて、眉間に深〜く皺を刻みながら答えを述べた。
「ええと・・・ 『仮面ライダー・ガ、ガ・ガ・・・ガンタンク』さん・・・でしたっけ?」
その答えを聴いて若い巡査は、ちょっとバランスを崩してよろめいた。
「・・・・・・・・・いえ、ちょっと、違います」
「ちがうよ!おとうさん! えっとぉ〜『かめんらいだー・ガ、ガ、ガ、ガ・・・』」
「何だっけな・・・『仮面ライダー・ガ、ガ、ガ・・・』 え〜と・・・確か『ガ』が付きましたよね?」
「あ、はい!そうです!」
若い巡査は両掌をグッ!と硬く握り締めて、親子に向かって身を乗り出し、 淡い期待に瞳を輝かせる・・・だが、
「そうだ!・・・えっと『ガタガタ君』だ!『ガタガタ君』だよ!」
「そうだよ!おとうさん! このおまわりさんは『かめんライダー・ガタガタクン』だ!」
「えっ?! いえ・・・あの・・・それは・・・」
「いやぁ!どうも失礼しました!『ガタガタ君』!」
しどろもどろ言い淀んでいる若い巡査の両掌を、 ガシッ!と強く握り締めてブンブンと上下に激しく振った。
「この街の治安を元『仮面ライダー』が護ってくれているなんて 頼もしい限りです。 これからも宜しくお願い致します!『ガタガタ君』!」
「は、はぁ・・・・」
「じゃぁね!ばいば〜い!『ガタガタク〜ン!』」
こちらに向かって、 いつまでも手を振りながら親子連れは仲睦まじく去って行った。
やがて親子連れの姿が小さくなり人ごみに紛れて見えなくなった頃、 若い巡査は“フゥ”と溜息を吐きながら肩をガックリ落とした。
「『ガタガタ君』は良かったな・・・加賀美!」
背後から笑い声と共に掛けられた太い声に振り返ると、 瞳の前には白衣を身に纏い岡持ちを持った一人の逞しい男性・・・ 田所が自転車に跨っていた。
「田所さん!」 「おぅ!」
田所は小さな派出所の内部のほとんどを占拠している机の上に、 岡持ちから取り出した一個の丼をどん!と置いた。
「ホイ!差し入れだ!」
「ありがとうございます! いつもすみません・・・ちょうど腹ペコだったんですよ」
丼に掛けられたラップをぺりぺり剥がしながら、 加賀美は嬉しそうに微笑んだ。 ホカホカと白い湯気を立てているかけそばの上に、 加賀美は派出所内に置いてある 自分専用の『七味唐辛子』の瓶を取り出して振り掛けた。
「それにしても、 かつての『ZECT』最強ライダーが『ガタガタ君』とはな! まぁ俺も、働き過ぎで最近足腰『ガタガタ君』だがな・・・ やっぱり蕎麦屋は大変だ!」
“ガッハッハッ!”と豪快に笑う田所の言葉に 加賀美は“ふ・・・”と苦笑しながら、
「あの子だけじゃないんです。 俺、たまに「『仮面ライダー』ですか?って、声掛けられるんですけど、
“下の名前何だったっけ?『ガンダム』?『ガンバレ』だったっけ?”とか、 こないだ天道も「『仮面ライダー・カブトムシ』?」とか言われたりしてたし・・・
皆、もう俺達の名前なんか覚えてやしないんです」
「いい事じゃねェか・・・」
田所の呟きを聴いて、加賀美は“え?”と不思議そうに首を傾げる。
「『英雄がいない時代が不幸なんじゃない。 英雄が必要とされ、 その名が庶民の口から呼ばれる時代こそが不幸なんだ』・・・って、 ある偉い人が言ってた。 つまり・・・ 今は、もう『カブト』も『ガタック』も必要とされてねェって事だ。 ヒーローの名前が人々から忘れられたって事は、 それだけ世の中が平和だって事だ・・・そうだろ?」
ニヤリ・・・と田所は唇の端を上げてみせる。
「平和、かぁ・・・」
加賀美はかけそばを食べる手を止めて、ふと空を見上げた。 蒼く晴れ渡った空は雲一つ無く、 穏やかに澄んで遥か彼方へと拡がっている。 まさしく田所が言う『平和』の象徴であるかの様に・・・
「そう云や、加賀美、 お前の相方はまだパリから帰って来ねェのか?」
「ええ」
「そうか、 愛妻弁当が食べられなくなって、お前ェも辛いだろう」
「そうなんスよ、愛妻弁当・・・・って! お、お、お、俺と天道は別にそんなんじゃ・・・!」
慌てて言い繕う加賀美の態度を不審そうに眺めながら、
「・・・?何、真っ赤になってんだ?」
「あ・・・いや、別に・・・ その・・・何でも有りません・・・けど・・・」
「まぁいいや!」
田所は加賀美の背中を想いッ切り平手でバァァ〜ンッ!と叩いた。 お陰で加賀美は蕎麦を飲み込み損ねて“ゴホゴホッ”と軽くむせた。
「お前の事だから、どうせ野菜もろくに喰ってやしねェんだろ! おら!ネギ食え!ネギ!」
・・・と、 丼の上に刻みネギを山盛りにドバドバドバッ!と乗せる。
「あ、ありがとうございます」
“カチッ”とライターで咥えたタバコに火を点けて、 フゥ〜ッと紫煙を吐き出しながら田所は独り言の様に呟く。
「そうか『カブト』は・・・・今、日本にはいないのか」
「ええ、 アイツ向こうで豆腐造りにハマっちまって“しばらく帰らない”って 手紙が来ました」
「そうか・・・」
“お前一人ならば、恐るるに足らんぞ・・・ガタック・・・”
暗い闇の深奥から、 忍び寄る様に響く声が、ほんの一瞬、加賀美の鼓膜をゾクッと震わせた。 だが、その振動は・・・
「田所さん? 今、何か言いましたか?」
「いや・・・別に何も?」
その振動は眩い光の中、 まだヒソカに身を潜めている・・・
(次週は・・・書こうかな?どうしよっかな?(^^;))
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