Monologue

2006年12月24日(日) 残光(『仮面ライダーカブト』46話感想)

嗚呼、ついにこの日が来てしまった・・・

「坊ちゃまが自分の正体を知る」と云う事実を聴いただけで
もう既に観る前から胃が痛かった。

剣君は己の正体を知ると同時に
『サソリワーム』としての記憶も取り戻したのだろう。
即ち自分が愛する姉と己自身を殺した事、
そして自分が知らない間に
『サソリワーム』として何の罪も無い人間をも殺していた事。

剣君の正義感が、
もう一人の自分
(・・・とは云えないですね、他人。他ワーム?寄生の宿主?)の
凶暴で無差別な悪行を許せる筈が無い。

彼は海で自殺しようとするが、
それが逆にワームとしての本能を目覚めさせてしまう。
(それにしても前回に引き続き、
冬の冷たい河や海に入る芝居だから役者さんは大変だ(^^;))

ふと『デビルマン』に登場したジンメンと云う妖獣を想起する。

この妖獣は喰らった人間の顔を背中の甲羅にずらりと乗せているのだが、
その人間達は顔だけになっても、まだ生きていて意識が有り、
デビルマンの攻撃を受ければ血を流し苦痛の声を上げる。
人間達を哀れに想い攻撃出来ないデビルマンに、
「私を殺して!私はもう死人よ!」とジンメンの背中から声が掛かる。
その声を聴いてデビルマンはジンメンを倒す。

それと同じ事を天道君はしたのかもしれない。

もう『サソリワーム』の意識を完全に抑え込む事が出来ないのならば、
いっそ一想いに引導を渡してやる方が剣君の為なのかもしれない、と、
それこそが、じいやが天道君に「叶えてやって下さい」と頼んだ
「坊ちゃまの望み」なのだろう・・・・・・が、

それであっさり天道君が止めを刺してしまったのが、かなり腑に落ちない。

これがもっと物語の中盤辺りならば、
それでも納得出来たかもしれないが、
神代剣と云う大きな『伏線』を抱えたキャラクターを
こんなラスト間際まで生き残らせた理由は、
人間の心を抱えたまま(自分の意思とは無関係に)
異形の姿にさせられてしまった
哀れな存在を救う『死』以外の方法を用意して有るからでは無いか?と
勝手に想像していたので、かなりガッカリしている。

『ネイティブ』なら助けて貰えるのに
『ワーム』なら無差別に殺して良いのか?

「それは違う、
外見に惑わされず真実を見抜く瞳を持て!」と云うのが、
この物語の主旨じゃなかったのか?
(・・・って、↑これは私が勝手に想い込んでいただけでありますが)

これは『仮面ライダー555』で描こうとして描き切れなかった(と私は想う)
深く重い主題であり、
私が『カブト』にハマッた大きな要因の一つでも有るので、
こんなラスト間際の、
しかもたった2話分だけじゃ無く、
もっと話数を使って丁寧に描いて欲しかった。


もし、どうしても神代君を救う手立てが『死』以外に無いと云うのならば、
彼に手を下すのは天道君以外の人間の方が良かったと想う。

私個人としては、出来れば加賀美君にそれをして欲しかった。

何故なら、
「カブト!頼む!」と云われて(今回加賀美君は言ってませんが)
何の躊躇いも無く天道君が剣君を殺して終わってしまったんでは、
4話の時点から二人が何にも『成長』していない事になってしまう。

天道君には剣君を殺す事を(たとえ一瞬でも)躊躇って欲しかった。
そして、加賀美君には剣君に
「生きろ!犯した罪はちゃんと生きて償わないと償いにならないんだぞ!」と、言ってあげて欲しかった。

上記では加賀美君に止めを刺して欲しいなどと言ってはいるが、
やっぱり剣君には何らかの方法で生きて幸せになって欲しかった。
だって・・・「剣君がどんな悪い事をした?」

「姉さんを殺したワームを許さない!」と云う正しい怒りを胸に抱く彼こそを、『サソード・ゼクター』は資格者として選んだ筈なのに・・・・・
せめて、もう少し剣君に救いが有って欲しかった。

ラストで彼の心がじいやの元に帰れたのだけが、
唯一の救いの光だなんて、あまりにも哀しいと想う。


話は変わるが、
「もう一度求めてみるか・・・光を」と決心した兄貴&弟。

最初観た時は兄貴が突然主旨を変えてしまった様に想ったのだが、
何度か観直している内に、
あの鎖で自らをがんじがらめに緊縛している姿が、
兄弟・・・特に矢車さんの心の葛藤を比喩しているのではないか?と
考えられる様になった。
・・・単に観慣れただけなのかもしれないが(^^;)

それにしても、
彼等が常々口にしている『地獄』の意味をもっと明確にして欲しい。

当初はウカ・ワームと『ZECT』が影で通じていて、
ホッパー兄弟はその傀儡で、
矢車さんは己の真意とは逆に『悪』の方向へ進んでいるのかしら?と
勝手に想っていたのだが、どうやらそうでも無いみたいだし・・・

最後に、
CM明け間際の加賀美君が、
CM前に剣君にヤラれまくった筈なのに
『笑顔』で「俺はお前を信じてた」と云うシーン。

あの台詞が、
たとえば「俺はお前を信じて『る』」で、
「お前なら人間として生きられる(筈だ)・・・ほら
(と云って岬のプレゼントを手渡す)」と云う
その後の台詞を、
ニコニコしながらなんかじゃ無く、
むしろ必死に剣君を説得しようとする様に喋っていたのならば、
何だかあのシーンも納得しながら観られる気がするのだが・・・


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