黒谷都さんと云う方のソロ・パフォーマンス 『半月〜利己的物体と奉仕的肉体によるグロテスク〜』を観に西荻窪へ行く。
キャリア30年の人形遣いの方に依る “『一人芝居』だろうか?『人形劇』だろうか? 『人形遣いと人形とが演じる一人でいながら共演者の在る芝居』”と云う 公演のチラシの文章と幻想的な写真にに心惹かれて足を運んだ。
元々『人形』はとても好きなのだが、 今年の初めに平常(たいらじょう)さんの『人形劇版・毛皮のマリー』を観て以来、 個人的に『人形劇』に興味を抱いていた所為も有る。
会場の『西荻窪 がざびぃ』はとても狭くて天井も低い『アート・スペース』だが、 10年前に小劇場で芝居を観始めた頃の様な懐かしさと安堵感を覚える。
入場時は桟敷席の端に座ったのに、 その後にご来場なさった沢山のお客様を会場整理でギュウギュウに詰め込んだ所為で、 結局1番前のど真中で観る事になる。 (ワタクシはチビなので、それはそれで良し(^^))
本物の枯葉が散らされた舞台上、 上手(客席から観て右側の事・反対側が下手)に置かれた 流線型の蔓草を想起させるオブジェの上部に、 散り終えた華が結んだ種の様に珠がぶら下げられている。
まるで秋の夜空に浮かぶ月の様な球に灯りが燈ると……
下手から白いドレスに黒いケープを羽織った金髪の美しい女性(黒谷都さん)が現れる。
彼女は背負って来た鞄から少女の人形を取り出すと、 その周囲にクリーム色の布のハギレを並べて行く。
そのハギレの一枚、一枚を取り上げて、人形に巻き付けて行くと…… それは人形のドレスになった。
最後に取り出した赤い頭巾を被せられた人形は、 まるで女性の手で生命を吹き込まれたかの様にふわりと立ち上がって歩き始める。
もちろん背後から操っているのだが、人形の動きが、とてもリアルで驚かされる。
赤ずきんを被った人形が森の中を歩いていると、狼に声を掛けられる。
“何処へ行くの?”と尋ねられて、
「ばぁちゃんとこ」と答える都さんの声があどけなくて可愛らしい。
狼に騙され、花畑に寄り道した後、 祖母の家を訪ねた赤ずきんは祖母に化けた狼に言われるまま服を脱ぎ、
「ばぁちゃん、おおきなみみだね……くすぐったい」
そして狼に犯されてしまう。
「おおきなて、おおきな……」
別に露骨な性表現をしている訳では無いのに、 赤ずきんが惨たらしい目に遭わされているのが判ってしまう。
だが行為が終わった後、赤ずきんは狼にこう告げる。
「いっしょにいく」
赤ずきんは狼の咆哮が響く夜の森の中へ消えて行ってしまった……
上記の『赤頭巾の血族』と云う作品の他に2本有ったのだが、 やはり最初のこの話に最もインパクトを感じた。
赤ずきんの運命を勝手に想像して哀しくなってしまったり……
黒谷都さん自身も瞳が大きくてお人形の様に可愛らしい方なので、 まるで月の光が細い糸になって人形を操る黒谷さんの身体を、 別の誰かが操っている様な錯覚を覚える。
(と云っても所謂『人形振り』や『ロボット・マイム』をなさっているのではありません)
もしかしたら『神様』も黒谷さんみたいに誰かの糸に操られていて、 「本当はあなたをこんな惨い運命に導きたい訳ではないのに……」と言わんばかりの 憂いを含んだ哀しい顔で人間達を操っているのかしら?と想ってしまった。
人形遣いの技術も卓越していらしたが、 黒谷都さんの少女と老婆が同居している様な存在感が切なく魅力的だった。
月の灯りの下で見た、秋の夜の人形幻想……
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