Monologue

2004年10月21日(木) クラピカの明け方の夢日記

“あ!ここだ、ここ!!

 ここのお護符はよ、スゲェご利益が有るんだぜ”


まるでお気に入りの玩具を見つけた少年の様に弾んだ足取りで、

レオリオは神社の売店へと駆けて行く……


売店の店先に吊り下げられた沢山の御護符袋の中から一つを選び出すと、



 “ほら、お前の分、
         
        やっぱ赤が良いだろ?”


そう言いながら私の瞳の前に朱い護符袋を“すい”と差し出す。


“チリリ…ン”


朱い護符袋に付いた鈴が涼やかな音を立てて鳴った。


“あ、ありがとう”


“んで、これがオレの分 ”


礼を言い、朱い護符袋を受け取った私の鼻先に全く同形の紺色の護符袋を翳しながら、

やたら嬉しそうに唇の端を上げて微笑う。

   
“チリリ…ン”


彼の指先から吊り下げられた紺色の護符袋に付いた鈴が涼やかな音を立てる。



“お揃いの御護符袋なんて、


         まるでオレ達・・・・・・・”






「お〜い!クラピカ!朝飯出来てっぞ!」


突如、ダイニング・ルームの方から掛けられた声に、心地良い安眠を破られる。

重い瞳を擦りながら上半身を起こすと、

私は枕元に置かれている目覚まし時計の文字盤で時刻を確認した。


「……まだ、6時45分ではないか」


レオリオは今日も早番出勤らしい。

だが昨夜も仕事で随分夜遅くに帰宅して、私と同じ時間に就寝したと云うのに、

アイツは何故こんなに早く起きて、しかも朝食まで作る体力が有るのだ?


「お〜い!早く来ないと冷めちまうぞ!」


意を決すると、

“ガバッ!”と掛布団を跳ね除けてベッドから降り、ダイニング・ルームへと向かった。





「お?今朝はオレが起こしに行く前に起きて来たじゃねェか」


“エライ、エライ”とまるで小さい子供を誉める様な口調で声を掛ける。


「すぐ出来るからよ、ちょっくら座って待ってな」


私がイスに座ると瞳の前に出来たてのベーコン・エッグが盛られた皿が置かれた。

温かそうな湯気を立てている皿の傍らにシーザー・サラダを盛った小皿を並べると、

私の向かい側のイスに座って満足気に声を上げた。


「よ〜し完成だ!いっただきま〜す!!」


瞳の前でベーコン・エッグを食べているレオリオが掛けている赤いエプロンを眺めながら、

ふと明け方に見た夢を思い出す。


「レオリオ・・・・・」


“ん?”とフォークを咥えたまま、視線を私に向ける。

「いや、別に大した事では無いのだが……今朝方見た夢にお前が出て来たのだ」


「へ?」

レオリオは黒い瞳を円く見開いて、

何故かちょっと驚いた様な顔で私の顔をじぃ…っと見つめた。


「お前の夢に……オレが?」


“ああ”と私は頷く。


「何処かの神社へ連れて行ったお前が私に朱い護符袋を買ってくれるのだ、

 お揃いで色違いの紺の護符袋を自分用に買って……」



するとレオリオは“ニヤリ…”と意味有り気に唇の端を上げたかと思うと、


“クックックッ……”と、突然声を立てて微笑い始めたではないか!


「ど、どうしたのだ?」


「だってよ・……お前ェ、知らねェの?」


「な、何をだ?あの夢には何か暗示的な要素でも含まれていたと云うのか?」


首を傾げながら発した私の言葉に一際大きな声を立てて微笑うと、


「“昨夜の夢にキミが出て来たんだぜ”ってのは、口説き文句の基本中の基本じゃねェかよ」


“カァァ…ッ!!”と瞳の前が真っ赤に染まった。


「まさかお前がこんな朝っぱらから口説いてくれるとは思わなかったぜvv」


「バ、バ、バ、バカッ!!誰がお前を口説いたりなど……!!」


叫びながらも自分の瞳と頬が緋赤色に紅潮しているのが判る。


レオリオはイスから立ち上がり、

私の傍らに近付くと右手の指を私の髪に“スッ…”と差し入れた。


こんな風に触れられるのは、もう慣れている筈なのに、思わず身体を硬直させてしまう……


「今度の休みに、一緒に『護符袋』買いに行こうぜ」


「わ、判ったから……さ、さっさと支度をして病院に行け!遅刻するぞ!」


「イイじゃねェか、オレにも口説かせろよ」


声を荒げて言い放ったにも関わらず、

レオリオは全く動じずに私の耳朶に唇を近付けて吐息混じりに囁く。



 「それにしても・……」



 “お揃いの御護符袋なんて、


         まるでオレ達・……”




明け方の夢の中で彼が差し出した御護符袋と同じ色をしたレオリオのエプロンの布の色が、

視界の端で赤く揺れた……


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