Monologue

2004年02月26日(木) クラピカの虫刺され日記

「ん……」

クラピカは瞳を覚ました。

首を曲げて枕元の時計を見ると、午前5時20分、
傍らのレオリオを起こすには、随分早い時刻に瞳を覚ましてしまった。
低血圧の自分にしては珍しい。

ふと昨夜のレオリオとの行為の余韻が残る身体をシャワーで洗いたくなって、
まだ眠っているレオリオを起こさない様にクラピカはベッドを抜け出した。

バスルームの扉を開けて、
左側に有る洗面台の鏡に映った己の裸身を見てクラピカは思わずハッと立ち竦んだ。

クルタ族の特有の白い肌のあちこちに、
先刻の行為の際にレオリオが付けたキスマークが、
まるで花片(はなびら)の様に散っている。

細い首筋、鎖骨の窪み、胸や腹、臍の周り、
そして、
薄い陰毛に覆われている太腿の付け根……

おそらく、クラピカの瞳からは見えない場所にも付けられているのだろう。

うなじ、背中や臀部、
レオリオにしか見せた事の無い、触れさせた事の無い処……

(こ、こんな処にまで……)

洋服で隠れる場所なら別に構わないのだが、
首筋などは襟の形や開き具合などに依っては見えてしまう場合があって、
外出時や仕事で人に会う時など、クラピカは気が気では無い。

冬場はマフラーを巻けるし、ハイネックの衣類を選んで着れば良いのだが、
最近は大分温かくなって来たから、
着る物に悩む季節が到来するのもそう遠い事では無いだろう。

(あれ程、目立つ処に痕を付けるなと言ったのに!)

そんなクラピカの思惑を知っていながら、
わざとレオリオは他人から見える場所に付けたがるのだ。

“コレはお前がオレのモンだって云う印♪”

クラピカはフゥと溜息を吐く。

(わざわざこんな痕を付けなくたって、私は……)


寝室に戻ると、レオリオはまだ眠っていた。

何の悩みも抱えて無さそうな彼の穏やかな寝顔を眺めている内に、無性に腹が立って来る。

(そうだ!)
    
古来『目には目を』と云う。

レオリオにも同じ痕を付けてやれば、少しはこの恥かしさが判るのではないだろうか?

無防備に晒されているレオリオの鎖骨の下に顔を近付けて、そ…っと唇を押し充てる。

(さぁ、この辱めを存分に味わうがいい!)


“チュv
 チュゥゥ……ッvv”

唇に思い切り力を込めてレオリオの胸の皮膚を強く強く吸う。

普段、クラピカが彼にされているのと同じ様に……

だが数秒後、唇を離して見てみると、
うっすらと赤い充血が浮かんではいるものの、
レオリオが自分に付ける様な鮮やかな緋赤色の痕にはなっていなかった。

(な、何故だ?)

キスマークを付けられる事は有っても、誰かに付けるのは初めての経験だ。
もしかしたら吸う時、知らずの内に力を加減してしまったのかもしれない。

(よし!もう一度……)

“チュv
 チュゥゥ……ッvv”

先刻より強くレオリオの皮膚を吸ってみる……
だが、やはり結果は同じだった。


2度目に付けた痕は、先に付けた痕よりは濃赤色が際立ってはいるが、
レオリオの肌の色では鬱血の痕があまり目立たない様だ。

クラピカの生白い肌に比べて、
逞しく鍛え上げられた男らしさを感じさせる褐色の肌……

自分の方が、遥かに腕は経つ筈なのに、
何だか、くやしい。

(そうだ!
 もっと沢山付けてみたら、どうだろう?)

今度は堅い胸の筋肉よりも、
柔らかそうな首筋の皮膚に唇を押し充て、キュッ!と力を込めて吸い上げる。


“チュッv チュゥゥ……ウ……ッvv”





「あれ?レオリオ、どうしたの?首んとこ赤くなってるよ」

星型の家に遊びに来たゴンが、
薄赤い鬱血痕がポツポツと散っているレオリオの首筋を指差した。

「いやァ……
 寝てる間に変な虫に刺されちまってな、なかなか痕が消えなくて困ってんだ♪」

「その割りには何だか嬉しそうだぜ、オッサン」

ゴンと一緒に来たキルアに醒めた口調で指摘された通り、
レオリオは嬉しそうな顔でニヤニヤ微笑っている。

「でもさ、こぉんなにいっぱい刺されて……かゆくないの?」

「ああ、
 オレとしては、もっと沢山刺してくれた方が嬉しいんだけどなvv」

すると、背後から、
“ファサ…ッ”とレオリオの首にマフラーが巻き付けられた。

「ん?」

振り返るとクラピカが、
レオリオの首筋に付いた痕よりも、ずっと、ずっと緋赤く変化した瞳で鋭く睨み付けている。

そのクラピカ自身も首にマフラーを巻いていた。

「あれ?クラピカも虫に刺されたの? 」

「あ、ああ……」

クラピカは言い難そうに語尾を濁し、視線を逸らす。

「ねぇ、一体どんな虫なの?」

だが、クラピカもレオリオも、
虫の正体を勘付いているらしいキルアも、何故かゴンだけには教えてくれなかった。


(『日記』なのに『三人称』でスミマセン(涙))


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