Monologue

2002年07月07日(日) 星に願いを(レオリオ編)

「五〜色の短冊〜♪わ〜た〜しが、書ぁ〜い〜た〜♪」と歌いながら、レオリオは窓から、
赤・黄・青……色とりどりの短冊が吊り下げられたササの樹を見下ろしている。

(あ〜あ……オレが短冊に書いた願い事、やっぱりお星様は叶えてくれねぇのかなぁ?)

……などと考えを巡らせていると、
゛トントン゛と星型のお家のドアがノックされる音が響いた。

(ん?誰だ?こんな時間に……ミニ・クラピカにしちゃ音がでけぇな)

首を傾げながらドアを開けると、

「……ッ!?」
レオリオは思わず自分の瞳を疑った。

開かれたドアの前には、山へ修行に行ってしまった筈の愛しい相方のクラピカが立っていた。
「クラピカ!!」
思わずレオリオは歓喜の声を上げる。だが、

「こ・…こんばんは、なのだよ♪ハ、ハニーvv」
心無しか引き攣った微笑みを浮かべながら、ぎこちない挨拶をするクラピカに、

「何だ、ニセ・クラピカかよ……」
喜びに輝いたレオリオの顔が瞬時に曇った。

チッ…と舌打ちしながら顔を背けるレオリオに向かって、クラピカは更に言葉を掛ける。

「毎晩ひとりぼっちで寂しがっているハ・…ハニーvvと甘〜い夜を過ごす為に……
あ、愛の天使となってやって来たのだぞvv」

「余計なお世話だ!!いいからとっとと帰れ!!」

だが、台詞廻しの不自然さにも気付かない程、レオリオは落胆してしまった様だ。

「ま、まぁ……そう言わずに……」
不機嫌そうに言い放つレオリオを宥める様に言いながら、クラピカは家の中に入った。

「ちゃんと『衣装』も用意して来たのだよv」
「何?『衣装』だと?」
好奇心にそそられたらしいレオリオの眉がピクッ…と、痙攣する。

「『衣装』って、どんなヤツだよ?……某都立高校の制服か?」
心無しか、レオリオの鼻の下がぴろ〜ん…と長く伸び始めた。

「いや、どうやら違う様だが……」
本人も気付かない内に、普段の口調に戻りながら、
トランクの中から、ニセ・クラピカから渡された『衣装』を取り出した。

゛ファサ……ッ゛と拡げられたその『衣装』は、白いレースのエプロン(フリル付き)だった。
「お……お前!!」
それを瞳にした途端、
レオリオの黒い瞳がまるで獲物を狙う野獣の様に鋭くギラリと見開かれた。

「そ…それ、マジで着てくれちゃうのかよ?」
「あ、ああ?」
クラピカはレオリオが異常に過剰反応している真意が掴めないまま、コクと肯く。

「き……着替えて来るから、楽しみに待っているのだよ?……ハ、ハニーvv」
頬をぎこちなく引き攣らせながら微笑うと、クラピカはドアを開けて自室へ入った。

後手にドアを閉めて、フーッと溜息を吐く。

室内灯を点け、レースのエプロンを拡げてみる。
男性が身に着けるにしては、不似合いに可愛らし過ぎるデザインで有ると云う点以外は、
何の変哲も無い普通のエプロンにしか見えない。

(何故、これが『レオリオがクラピカに着せたい衣装 第1位』なのだろう?
アイツは最近、家庭の味に飢えている……と云う事なのだろうか?)

クラピカは首を傾げながらも、
"まぁ、某都立高の制服等では無くて本当に良かった……"と、
ホッ…と安堵の溜息を吐きながら、
青いマントの『上』からエプロンを巻いて、部屋を出た。

その青いマントの生地がほとんど全部、上から透けてしまう程、
エプロンの素材が薄いと云う事にはさして気にも止めずに……

「お……お待たせなのだよ、ハ、ハニーvv」
パタン!と背後でドアを閉めると同時に、瞳の前のレオリオが顔を上げる。

だが、その表情は先刻同様、喜びに輝いたと思った瞬時に不機嫌そうに曇った。
まるで、せっかく大きく膨らませたのに、みるみる空気が抜けて萎んで行く風船みたいに……

「お前なぁ……期待させといて、そりゃねぇだろうが?」
「……え?」
クラピカはレオリオが落胆した理由が掴めず、不思議そうに首を傾げる。

「その『エプロン』はよ……素っ裸になって、直接肌に着けなきゃ意味無ぇじゃねぇかよ?」

「な……ッ!?」
クラピカの脳細胞が即座に高速回転して……
このスケスケ素材の『エプロン』を素裸に直接身に着ける事の恐怖を想定した途端、
クラピカは羞恥の余り耳まで真っ赤になる。

「お……お前は、私にそんな淫らな格好をさせたいなどと……常日頃から考えていたのか?」

「……ったりめぇじゃねぇか!!『裸エプロン』は男の永遠のロマンなんだぜ!!」

ブルブル…と全身を小刻みに震わせ始めたクラピカの右肩にポンと右掌を乗せたレオリオに、

「どうせなら、オレが手取り足取り着せてやろうか?」

そう耳元で囁かれた瞬間、
クラピカの優秀な脳細胞を構成している神経束が何本か音を立てて“ブツッ!!”と切れた。

「何が……男の永遠のロマンだ!!何と……破廉恥な……ッ!」

「え?……まさか…・・お前、ほ、本物……?」

ようやく気付いたレオリオは、自分が口走った飛んでも無い言葉の数々を想起して、
全身の血液の温度が一気に零度以下まで急降下して行くのを感じた。


「すまねぇ!!オレが悪かった!!な?クラピカ〜!!」

「黙れ!!お前とは今日限りでコンビ解消だ!!」

「判ってくれよ〜!!男ってツライんだよ〜!!」



色とりどりの短冊が揺れるササの樹の傍の大木の枝に腰掛け、
ニセ・クラピカは、二人の怒鳴り合う声が漏れ聞える星型のお家の窓を見つめている。

(何だかんだ言いながら、仲良くやっているでは無いか……)

「よ!」

樹の下から片手を上げて、ニセ・レオリオが声を掛けた。

掛けられた声を無視していると、スルスルスルッと器用に樹幹を登り、
ニセ・レオリオはニセ・クラピカの座っている枝の隣りにストンと腰掛けた。

「相変わらずみてぇじゃねぇか?あの二人……」

ククッと微笑いながら言うニセ・レオリオの方を見向きもせず、ニセ・クラピカは低い声で呟く。

「せっかく久し振りに逢うのだから、
少しはハニーvvにサービスしてやれ!と云うのだ。
あの唐変木は顔と頭が良いだけで、色事に関しては全く気が利かないからな……」

「だったら、お前ェが行って直接サービスしてやれば良かったじゃねぇか?
何でわざわざ本物の方が行く様にし向けたんだ?
『短冊』を改竄したり、衣装を用意したり、シナリオ書いて台詞指導までしてやってよ……
恋敵相手にご丁寧な事だな?」

「だからキサマは単純だと云うのだ」

ニセ・クラピカは俯いたまま厳しい口調で言い放つ。

「私の願いはハニーvvが幸せになる事、
ハニーvvが心から喜んでくれる事、なのだよ……」

そう呟きながら、立てた両膝頭の上に、ニセ・クラピカは顔を埋めた。

「………私では、ダメなのだ。
あの……頑固な唐変木でなければ、ハニーvvは…やっぱり……」

小刻みに震え始めた彼の小さな金髪の頭の上に右掌を乗せて、
そっ…と撫でてやりながら、ニセ・レオリオはしみじみ想う。

(オレの願い事は……やっぱり叶えてくんねぇのかなぁ?
 ……つれねぇなぁ…お星様)

彼等の頭上では、つれない星々がキラキラと美しく瞬いていた……


冒険は、もう少しだけ続きます(^^;)




(……これってやっぱり『企画倒れ』なのか?(大号泣)
 すみません、皆様(^^)懲りずに頑張ります。

今週号は愛しい彼も帰って来るそうなので♪有頂天なワタクシ(^^)ありがとう『お星様★』)


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