| 2002年07月01日(月) |
私をバレエに連れてって！！ |
会社の同僚のＳ山さんは中学校までクラシック･バレエを習っていたそうだ。
高校入学後は辞めてしまったが、
やはり踊りが好きなので、先々月からサルサと社交ダンスを習い始めた……と
云うのは知っていた。
まだ始めたばかりの習い事である所為か、ウキウキ楽しそうに通っている彼女を見て、
継続する事の難しさや、
技術が上達しない事などにクヨクヨ悩んでいる自分はヒソカに羨ましく感じていた。
そのＳ山さんが、
「ななかさん（仮名）の通っているバレエ教室へ一度行って、体験レッスンを受けてみたい」と言い出したのは先週の水曜日だった。
正直言って吃驚し、そして少し心配にもなった。
自分が通っているバレエ教室は生徒の大半は経験者で、
（初心者もいない事は無いが）先生も、あまり懇切丁寧には教えてくれない。
昔習っていたとはいえ、ブランクの有るＳ山さんが突然行って、大丈夫かなぁ？
……と不安に思ったのだが、
彼女が「とにかく行ってみたい！踊りたい！！」とニコニコしながら言うので、
一緒に連れて行く事にした。
レッスン場への道中、
子供を谷底に突き落とす親獅子の気持ちを抱いていた事は否めない（←オニ）
「この日の為に買っちゃいました〜♪」とオニューのピンクのバレエ・シューズを履いて、
両腕にフリルの付いたサルサ用のレオタードを着たＳ山さんは、
少し緊張した面持ちでレッスンを受け始めた。
彼女は予想外に、そつ無くレッスンに追いて来ていた。
全く初心者の人に比べたら、腕の使い方などもとても綺麗だ。
昔習っていた事が有る所為だろうか？
最近、踊りを習っている所為も有るのだろうか？
頬を上気させながら、
一生懸命レッスンに追いて来る彼女の表情は、とてもとても楽しそうだった。
自分も習い始めの頃は、
彼女みたいに瞳を輝かせながら、
楽しくレッスンしていたなぁとしみじみ思い出す。
だが……ふと思った。
段々辛い事も多くなったけど、
イヤだなァと思う事も沢山有るけど、
楽しかったのは最初だけでは無かった筈だ。
泣きながら何度も何度も練習した振りが、やっと出来た時とか、
珍しく先生に誉められた時とか、
楽しい事や嬉しい事も沢山、沢山有ったのだ……
だからきっと続けて来られたんだ、と改めて想ったりした。
「今日は連れて来てくれてありがとう」と、
レッスン終了後にＳ山さんはぺこりと頭を下げた。
「大変だった？」と尋いたら、
コクンと肯いた、が、
「でも、スゴク楽しかった！
バレエ、またやってみたくなっちゃいました！」とニコニコ答えた。
「じゃ、またやってみなよ♪」と言い乍ら、自分もニコニコ微笑った。
帰り道でＳ山さんは、
「踊るって楽しいね♪アタシ一生踊り続けていたいなぁ♪」と言った。
それを聴いて、数年前に観た舞踏家の元藤��子さんの踊りを想起した。
当時７４才近い高齢だった彼女の踊った『白鳥』はとても美しかった。
（もちろんバレエみたいに飛んだり跳ねたり……では無いのだが）
まるで本物の『白鳥』が求愛しているかの様だった。
あんまり綺麗だったので……気付いたら泣いていた。
喜怒哀楽と無関係に泣いたのは、
『対象物が美しかったから』と云う理由で涙が出たのは、後にも先にもその時だけだ。
元藤さんはまだ現役で踊っていらっしゃる筈だ。
自分が幾つまで踊れるかは不明だが、彼女の様になれたら本望だと考えている。
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