| 2002年04月29日(月) |
ウチのクラピカ『日記』 (代筆ななか) |
「いい加減、
『これ』を外してくれないか?レオリオ……」
゛チャリ……゛と首に巻き付けられた鎖を鳴らしながら、
ベッドの上のクラピカは不満そうに呟く。
だが、 「ダ・メ!」 きっぱりと俺は返答する。
「もう逃げたりしないぞ、私は……」
「ダメ!ったらダメっつってんだろうが!!」
厳しい口調でクラピカの言葉を遮る。
「大体、おめぇウチの病院へ搬送されて来た最初の日に、
いきなり『念』で床に穴開けて逃げ様としたじゃねぇかよ!
そんな傷だらけの身体でよォ……」
俺は心底呆れ返りながら、ぶすっと不貞腐れた表情のクラピカの点滴を変え、 ヤツの細い腕に注射針をブスッと突き刺す。
「昼間は人目が有るからまだしも……夜は絶〜対っに外さねぇからな!!」
「人権蹂躙だ!」
大きな瞳をキッと吊り上げてクラピカは俺に向かって怒鳴る。
「ば〜っきゃろ!こうでもしとかねぇとお前、また逃げちまうだろうが……」
「当然だ、私には果たさなければならない『目的』が……」
「『目的』はこのケガが治ってからにしろ!全く……」
ブツブツブツ……と聞こえよがしに文句を言いながら、俺はクラピカの包帯を解く。
「よぉし、大分良くなって来たな」
ようやく腫れが引いて来た傷口を消毒し包帯を替えてやる。
「点滴も打ってるし、メシもちゃんと喰ってっから顔色も良いしな……」
クラピカの顎をくいっと掴み、うんうん……と肯いていると、 クラピカはぷいっと顎を動かして俺の指を振り払った。
「ケガが治ったら、絶対にこの『鎖』は外して貰うからな!」
「ああ、゛治ったら゛な!」
カルテにデータをガリガリ書き込みながら俺は乱暴に言い放つ。
ったく……可愛気の無いヤツ!
深夜……
準夜勤務を終えた俺は、白衣を着替える前にクラピカの病室に向かった。
゛カチャ…ッ゛となるべく静かに個室の白いドアを開く……と、
クラピカはベッドの上で瞳を閉じて身動ぎもせずに眠っていた。
そのヤツの姿に……俺は安心する。
白い包帯を身体中に巻かれているだけでも充分痛々しいのに、
細い首に巻き付けられた『鎖』の所為で、クラピカの姿は一層悲壮感を伴って見える。
(俺だって……本当はこんな真似したくねぇんだぜ)
そう思いながら、クラピカの首に巻かれた『鎖』に、そっ…と指を触れる。
゛チャリ……ッ゛と無機質な金属音が病室に響く。
この『鎖』はクラピカの様な『念』能力者用に、俺の上司の この病院の呪医者(ウイッチ・ドクター『念治療』が出来るお医者さんとご解釈下さい)が 造った代物だ。
これはクラピカの『チェーン・ジェイル』同様、縛られた相手を強制的に『絶』の状態にする。
患者の中にはクラピカの様に逃亡を計ったり暴れたりする者達も多いから、 仕方無い……とは云え、
俺はクラピカの顔を見つめながら、゛ハァー゛と溜息を吐く。
もし……お前がケガも治らねェ内に逃げ出したり、ムチャしたりしないなら、
こんな『鎖』なんか必要無いんだぜ。
或いは…… 俺は考える。
もし俺の腕にこの『鎖』と同じ位、お前を繋ぎ止めておける位の力が有ったら……と。
だけど医大卒業後、病院勤務になってまだ1年……俺はまだまだ半人前だ。 チクショウ!!!
俺は眠っているクラピカの頬を右頬で撫で、巻かれた包帯越しにヤツの額に口付ける……
レオリオの『腕』の中のクラピカが『鎖』無しでも逃亡を計らない様になるのは、 まだしばらく先の事だった……
(4月29日放送の『HHR』を聴いて゛ちょっと『妄想』しちゃった゛事でした)
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