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2003年06月09日(月) 阿佐スパ『みつばち』

<幕>休憩なし3時間弱(開演が遅れたせいかも)
<作・演出>長塚圭史
<会場>スペースゼロ
<出演>山内圭哉、伊勢志摩、市川しんぺー、鈴木砂羽、中村まこと(十兵衛)
   中山祐一郎、小助:大林勝(小助・熊夫の子分)、新井友香、佐藤真弓、
   桑原裕子、長塚圭史(木海・お坊さん。平等や世界についてムシ達に話す)、
   小山田サユリ(ムシ・十兵衛の飼い虫(いや、人間ですが))
   富岡晃一郎(ムシ丸・十兵衛の飼い虫。死後、伝書バチに転生)
   伊達暁、横山一敏
<物語>
長塚圭史お得意の隔絶された世界。
体が真っ白になり、徐々に膨れ上がって死んでしまうという
奇病に侵された島の、さらに高い塀で囲まれた小さな村。
わずかに健康な人々が住み、病人たちが入ってこないように、
櫓などで見張りながら暮らしている。

そこに流れ着いた侍・伍朗(山内圭哉)と嘉寿之新(伊勢志摩)。
彼らは、病人の中に追い出されない代わりとして、
難破船に行き、そこから宝を持ち帰っては村に提供する。
その宝で、働かなくても暮らせるようになった村人たちは
村の堅物・小七(市川しんぺー)と妻のイチ(鈴木砂羽)を除いて、
ほとんど全員が、次第に遊びほうけるようになる。

それは実は、伍朗たちの仕える大島屋二代目(伊達暁)の策略だった。
この島の女には、男を喜ばせる性質が備わっていると知った彼が、
島全体を遊郭にしようという計画を立て、村人たちを堕落させたのだ。
やせた土地の島のこと、今さら働くこともできないと、
村人たちはその計画を承諾した。

実は女郎だった嘉寿之新の手ほどきを受けた島の女たちは、
二代目に試されることになり、まず、つち(新井友香)が選ばれる。
女好きで、2人の妻を持つ熊夫(中山祐一郎)の妻の1人だ。
何もかも了承していたはずの熊夫だったが、
いざとなった時、我慢できなくなり、その場に殴りこんで、
二代目の用心棒・柳(横山一敏)に斬られてしまう。

つちの次は、熊夫のもう1人の妻・しほ(佐藤真弓)の番。しかし、
前夜に二代目に抱かれたというムラサキ(桑原裕子)の発病により、
二代目が、白くなる致死の病気の感染者であり、かつ、
その病気を皆に感染そうとしていると気づいたイチは、
順番を代わらせ、二代目を殺そうと企む。

一方、イチを好きになってしまった伍朗は、
二代目に人質にとられていた知恵遅れの弟を連れ出す。
そして、アンビバレンツな感情を吐露しつつ、彼を斬る。
その後 イチを助けに行くが、イチは既に感染していた。


<感想>
観終わってからパンフを開いたら、
冒頭に、こんな文章が載っていました。

「要するに、
 此の世は女で
 廻っている。

 故に
 男が儚く
 散れるのだと、

 あるミツバチは
 云った。」


あーもう、まんまですわ。
長塚圭史の作品って、いつも本当に、
「女性」が好きで、大好きで、でも怖くって・・・が、
あふれてるけど、それが非常に上手く消化された感じ。
今回の舞台は、いつもと同じテーマに貫かれているけれど、
うお〜、何だかよくまとまってるぞ!って感じがある。
パルコ劇場に載せられちゃいそうな完成度が私好み。
いや、何も若いうちから まとまらんでも・・・という、
勿体ない気分もないではないんですけど。

あと、まとまった分、こんな話だというのに、
ドロドロした感じはなかった。全体的に薄い。
売春とか、2人の妻、生と死の他にも、十兵衛が
ムシたちを虐待してたり、木海はムシに性的いたずらしてたり、
熊夫は、妻たちに食料を残すために自分は死体を食べてたり、
伍朗の弟は異形と言っていいくらい巨体だったり、
もう何か とんでもない世界なんですけどね・・・。
そういう瑣末(瑣末なんて言っていいのかはともかく)な事に
拘らない。

しかしまぁ、だからというか どうしようもないのか、
やっぱり「女」は各種いても、個々の人格として
魅力的な女性キャラは出てきませんね、相変わらず。
新井友香さん(ツチ)が魅力的だったのは、
新井さん自身が魅力的だったからという印象が強いし。
それなりに皆、感情は理解できるんだけどなー。
どうも実感になるのは男性陣ばかりなのは何故なんだろう。

でもその分、男たちは皆いいね。かっこいい。
必死で自分の好きな女を守り抜こうとしていて。
「つちも好き。しほも好き。半分ずつ好きなんじゃないの。
つちを好きな俺、しほを好きな俺。俺が丸々ずつ2人いるの。」
みたいな事を言っちゃって、それが信じられちゃう熊夫。
マジで つちを守ろうとして死んじゃって、でもそれに対して、
(結局、熊夫の行動とは関係なく つちは抱かれてなかったのだが)
しほも「熊夫も、天国で喜んでるよ」と言えちゃう。
なんか、すげー 羨ましい関係だぞ。

「私には、そんな男はいない」とつぶやくムシの危機に、
いきなり飛び込んできて助けちゃう、作家&演出家ならではの
おいしいとこどりの木海も、もちろん かっこいい。
弟に対する愛情と憎しみに、一生 決着をつけられないかと
思われた伍朗が、1人の女を守るために未練を捨てたのもいい。
かつて自分の子供を殺したイチに、自身への拒否を感じてしまった
小七が、その後、一度も彼女に触れないという事実も、
すれ違っていたとはいえ、相手を守るために自分の行動がある。

何だかね、どの男も本当に精一杯、大切な女を愛し守ってる。
かっこいいよ、そういう男たちって、皆、すごく。惚れる。
でも観終えて、何を望まれてるんだろうと思ってしまう所もある。
本来は女って、「産む性」だから守られていたはずなんだよね。
男たちは「子孫を繁栄させるために戦って守る」役割。
じゃあ、産むことを放棄している場合はどうなるんだろう?
今時、そういうの山のようにいると思うんだけれど。

最後の最後、既に感染し、子孫どころか命も危ういイチに、
伍朗はそれでも好きだと告白する。彼女に何を見ているの?
最初の言葉を思うなら、真に生活できるのは「女」だけで、
男はその周りで、何処かに夢を見て生きるものだということなのかな。
だとしたら、その幻想を壊さないようにするのは女の義務なのか。
・・・何か、私が恋愛できない理由が分かったような気がするかも(^^;



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