朔月 - 2004年07月22日(木) 屋敷の裏庭、師匠の部屋の真正面に当たるその場所には、 この綾花苑の中でも一際特別な花壇がある。 その花壇だけは、誰も触らないようにという暗黙の了解が、 俺たち4人の弟子の間で出来上がっている。 師匠が手の込んだ仙宝を作っているときの世話は、 師匠の使役獣の誰かにお願いする。 白い牡丹ばかりが集められたその花壇に師匠が特別気を砕いていることは、 ここに来て少し経てば、自ずと知れることであるから。 うちの師匠のなかには、 どうしても開いてくれない閉じられた扉がある。 固く固く閉ざされたその扉は、 不意に表に見えるところに現れても またすぐに師匠の心の手で奥の方に隠されてしまう。 そんな時はちっとも笑っていない悲しい目になって、 俺を通り越した背後のどこか遠くに向けて笑っている。 泣けばいいのにと何度か思ったりもしたけれど、 簡単に泣けるような人ならば、 きっとここで俺たちの師匠なんてしてないんだろう。 俺も多分、この人のもとで何かを学びたいなんて思わなかったに違いない。 うちの師匠のなかには、 どうしても開いてくれない閉じられた扉がある。 つめたい北風にさらされて固く固く結ばれた蕾のように いつ開くとも知れない扉がある。 月のない夜のなかで、 滅多に口にしない酒精の気配を漂わせながら ひとりでひたむきに牡丹を見つめる師匠。 そんな姿を見かけた夜更けには 俺の中で、俺じゃない誰かがこの胸を騒がせる。 ****************************************** 読んでる方には意味不明もいいとこ。 でもそれでもいいのです、自己完結万歳。 こういうノリの始まり方でもいいかなぁ……模索中。 ...
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