マニアックな憂鬱〜雌伏篇...ふじぽん

 

 

「覚悟」が必要なWEBサイト - 2004年04月14日(水)

世の中には、とにかくいろんな人がいるのだ。
医者という仕事をやっていて一番困惑させられるのが「失敗したら訴えるぞ!」というタイプの人だ。
誤解されては困るのだけれど、僕は「失敗しても訴えるな」と言っているわけではないのだよ。でも、失敗もしないうちから「失敗したら…」とか脅迫まがいの言動をする人のことって、どうも信じられない。失敗したくて失敗する医者なんていないし、その一方で、失敗したくなくてもミスや予期せぬトラブルの可能性を絶対にゼロにすることはできない。
現実問題として、手術中に手術室に巨大な隕石が落ちてくる可能性だって、ゼロではないじゃないか。
僕はそういう「クレーマー気質」の人と話しながら「じゃあ、もし成功したら、僕はあなたを訴えてもいいんですか?」と心の中で呟く。いや、みんなが言いたいことはよくわかるよ。「お金もらってやっているんだから、文句言うな!」って。でもね、脅迫される分までは、給料に入っていないと思うんだ。
「失敗したら…」とか言う人って、「成功したら、自分が訴えられても構わない」という覚悟を持っているようには見えないことがほとんどなのだ。

WEBで文章を書くことは、気軽な趣味だ。こうやってディスプレイの前に文字を打つだけで気分転換になるし、自分がものすごく「何かを考えているような人間」であるような錯覚もできる。新しい知り合いもできる。いいことばっかりじゃないか、なんて思う。でも、僕はその一方で、こうやって世間に自分が書いたものを公開するという行為には、ある種の「覚悟」が必要なのではないか、とも考えているのだ。

ネット上で誰かの悪口を書くことなんて簡単だ。気分だってスッキリするしね。そして、多くの場合、ネットでの悪口は誰からも言い返されない。キライな芸能人だって、政治家だって、人質の家族だって、ほら、俺がどんなに罵倒しても、何も言い返してこないじゃないか、ザマーミロ。
「ネットだから」「匿名だから」ということで、核シェルターの中から誰かを攻撃して、自分が偉くなった気になっているのつもりなのかもしれないし、それは別にやりたければやればいいことだ。場合によっては賛同する人もたくさん出てくるだろうし、世の中を動かせるかもしれない。

でも、考えてみてもらいたい。例えば僕がキムタクの悪口を言っても、キムタクが僕に抗議のメールを送ってきたり、事務所が内容証明を送ってきたりしないのは、僕の言うことに納得したからではなくて「僕のような小物をいちいち訴えても、手間ばかりかかって、何のメリットもない」からだ。それでジャニーズ事務所に「風評被害」が出るほど大きなサイトでもないしね。
もちろん、新聞社のサイトが全く同じことを書けば、ジャニーズ事務所の反応も全然違うことになるだろう。

ネットが楽園だと思っている人は、たぶんそんなに少なくないのだろうと思う。
そういう人たちは、ネットというのは「自分だけが好きなことを書けて、他人はそれに対して文句を言ってはならない空間」だと思い込んでいるのだろうか。
日常日記を淡々と毎日書いている人に対して文句を言ってきたりするのは、明らかにルール違反だと思う。
「それはおかしい」なんて他人の生活に文句をつけるのは、単なるヒマ人のやることだ。
しかし、「ネット上に誰かの悪口を書いている場合」においては、「自分も悪口を言われる覚悟」というのは、ある程度必要なのではないだろうか。
「自分は安全なところからやり放題で、相手はやられ役」だなんて、アメリカ軍の空爆じゃあるまいし。だいたい、そんな状況なら、僕だって自爆テロをやるかもしれない。日本人の感覚では「お家でのんびりテレビを観る生活or自爆テロ」だが、現地の人にとっては「何もできずに野垂れ死にor自爆テロ」なのかもしれないし、それなら「せめて自爆テロをやる」ほうを選んでしまうことは、けっしてわからない話ではないと思う。
 「僕たちの父祖は竹槍でB29に向かっていった」なんて笑い話になっているが、自分がその時代にいれば、「何もせずにやられるくらいなら、せめて竹槍でも持って一矢報いたい」と考えるのは、全然不自然なことじゃない。
 大事なのは「自爆テロはよくない」と「教化」しようとするよりも「自爆テロなんて選択肢は流行らない」「楽しく生きるという選択肢がある」社会に(もちろん、政治的のみならず、経済的な面も大きい)一刻も早くしていくことなのだと思う。

いかん、脱線しすぎてしまった。
ネット上の「覚悟」について書いていたのだった。
僕の個人的な考えでは、「ネットに誰かの悪口を書いた人は、誰かに悪口を言われても仕方ない」と思うし、そういうことを書くからには、書く側にだってある程度の批判を受ける『覚悟』が必要なのだとも思う。
それもなく「自分の正しさ」を他人に受け入れさせたいだけ、というなら、ぜひ本屋で「マイ・ノート」とかいう真っ白な日記を買ってくるべきだ。
あれはいいよ、本当に。僕も本当の本音はあれに書いてるよ(嘘)。

だいたい、ネット上の人間というのは、「強い(失礼な)言葉を使って、自分が優位に立った気になる」とか「わかったふりに頼りたがる」傾向が強いのだが、そういうのを読むたびに「それって、現実で誰かの前で口に出して言えるの?」とか思ってしまう。傍からみれば、そんな言葉を平気で他人に吐く人間のほうが、はるかに「バカ丸出し」なんだがなあ。
ネット上のトラブルで訴えられる人なんて後を絶たないし、「言ってない」なんて言い訳は通じない世界だよ。
僕は、とくにネットを通じてお金とか人脈を得ようなんて思わない。臆病な人間だし、拒絶されることが怖いからだ。そして、ネット上でも「リアルで誰かに面と向かって言えないこと」は言わないようにしよう、と心がけているつもりだ。それは、気持ちよくこの世界を楽しむためのマナーだし、僕は誰かを煽ったり煽られたりしながらドライブするより、自分のペースで好きな音楽など聴きながら、リラックスして運転したいのだ。急ぐ人は抜いてくれればいいし、ゆっくり走りたい車は道を譲ってくれるとありがたい。

車に乗ったらやたらと気が大きくなって、無謀な運転をしたがるやつがいるけど、そういう人間をあなたは軽蔑しませんか?
どんな立派な車に乗っていたって、人を轢いたらそれは罪に決まっている。「車が勝手に人を轢いた」とか言うつもりかね、ナイトライダーか?

「言い返される覚悟がなければ、『毒舌』なんて吐く資格は無い」と僕は思います。テレビで「毒舌」で売っている人だって、陰でキツイ目にたくさんあっているはず。それでも、彼らは「覚悟」を持って、毒舌を吐き続けている。
ネット上でも、長続きしていて読み手に安心感を与えるサイトというのは、やっぱり「覚悟」を感じることが多い。

さて、あなたには「覚悟」はありますか?

「言葉でしか伝えられない世界」なのだから、もっと言葉を大事にするべき、なんだけどねえ。


ちなみに僕は、自分の中でサイトをやる「苦痛」が「楽しみ」を少しでも超えたら、すぐ閉鎖する「覚悟」はしています。




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