腹を空かした狼の気持ち忘れるなよ 熱いヤツほど馬鹿をみる嫌な時代 だからこそ誰にも真似の出来ない生きざまを見せてやれ ……と布袋寅泰は唄った。 そうか、熱いヤツは馬鹿をみる時代になってしまっている。 それで冷静と情熱のあいだがもてはやされるんだ。 と、なにか誤解したことを考える。 ふと半年前の日記をいくつか読み返してみる。 あれから俺は何か変わったんだろうか? いや、似ている。悩んでいることも、やりたいと思うことも。 決定的に違うのは物理的な条件。 今は毎日出かけていても、どうにか生きていく体力がある。 何より頭痛が来ない。そのことは感謝してもし尽くせない。 年々めきめきと体力が付いてきている。 去年と違って音楽を長時間聴くことができる。 腕力もきっと付いてきている。 このまま強くなっていったらどうなるんだろう? 最終的にボブ・サップみたいになるんだろうか――否。 ああ、あんな『力の強いお茶目さん』になるなんて一生無理だ。 『病弱な暴れん坊』の私とは真逆のキャラだもの……。 そう言ってひとり泣いていたシンデレラの元に、 魔法使いのおばあさんが現れてこう言いました。 「お前はよく働く良い子だから、特別に願いを叶えてあげよう。 今夜12時までお前を、ちょっぴりお茶目なプロレスラーに 変身させてあげるよ。だからボブの代わりに試合に出ておいで」 ……そこでシンデレラは言いました。 「やだ。」 いやいや、案外そういうのもチャンスかもしれないよ。 生きるってのは前のめりだよ。 「ガラスのチャンピオンベルトを落としたのは、もしやあなたですか?」 「探していたんですよ!あの謎のレスラーを。」 「よかったら、今度我が社のCMに!!」 ……そのCMは大評判を呼び、バラエティやトーク番組でも 絶妙なキャラクターで会場は大爆笑、視聴率はうなぎ登り。 出したCDもミリオンセラー、紅白の司会もつとめ国民的な人気者に! 長者番付の常連になり、都内に豪邸を建てて、今は子供が7人。 故郷からは「ぜひ講演会に」と声がかかりっぱなし。 ……シンデレラは幸せになりました。とさ。 |