ごし、ごしごしごし。 「あれ、泣いた?」 そう訊かれてはっとした。 鏡の中には、目を真っ赤に泣きはらした自分が居る。 ……ひょっとして……花粉症だ。 寝ている間や考えている間、 気付かずにごしごしこすっていたようなのだ。 とにかく、目がかゆい。 涙が出そうになる。 鼻と喉もそういえばおかしかった。 それは単なる風邪の前兆かと思っていた。 考えてみれば立春。忌まわしい春がやってくるのだ。 よく春先のテレビに、スギが大量に黄色い花粉を 噴出している映像が流れるが、あれはイメージ戦略だなと思う。 あの映像を見るたびに、「チクショー、マスク!」だの 「目薬ウォンチュー!」だの「耳鼻科行かねば!」だのと思ってしまう。 景気を良くしようとしているのだろう、スギも。 しかしどうしようどうしよう、春が来る、我が季節が終わる……。 でも、「この花粉症さえ乗り切ればそんな体質が改善され、 夏場も冬と同じくらいのパワーが出せるようになるのでは」という 根拠のない淡い期待を、今年の春は持ってしまっている。 なんせ今年は、春休みに春休めないのだ。 この忙しさを逆手にとって、『気付いたら夏が終わってた』パターンに 持ち込みたい。こうなりゃなんでもプラス思考だ。 |