ここは、洋風の豪華なお屋敷。 あでやかなドレスに身を包んだ人々が、 穏やかな音楽に乗せて優雅に踊っている。 その中を、私はグレーのスーツに身を包んで 歩いていた。 ほとんどの人々は私には気付かずに、 談笑したり、踊ったりしている。 ああここは映画のワンシーンか何かかな、と 私が思うほど、それは私とは無関係に 展開される世界観だった。 執事のような外人の年配の男性と目があって、 軽く会釈する。向こうも私に軽く会釈する。 二階へ続く、湾曲した階段。 ピンク色の絨毯を申し訳なさそうに踏んで、 私は二階に上がっていった。 すると、階段を上がってすぐのところで 一人のドレスを着た日本人女性が、 立ち止まったまま黒いハンドバッグを 探っていた。 どうしたのだろう、と思った矢先、彼女は 顔を上げて私に言ったのだ。 「千円あげる。」 「……え?」 彼女は、二つに折られた千円札を私に差し出した。 周りの人々が私に注目する。 音楽は流れている。 「……」 これは何かひとこと言わなくては、 という気持ちになった私は、 「あ〜、こりゃ棚から」 ぼたもちですな、と言おうと思って、 いやしかし、棚から出てくるもので もっと意外なものは無いだろうか?と 瞬時に考えてしまったのだ。 「フィッシングですな。」 「……」 「…若しくは、フェンシングですな。」 いや、確かに意外だけどもさ。 自分どうした、と思ったが、 周りの人々は特にそれをあざ笑うでもなく、 穏やかに流した。 千円をくれた女性は、気付くと消えていた。 彼女、失礼だが結構ブサイクだったなぁなどと 思っていると、知っている顔が現れた。 さまぁ〜ず(バカルディという名前だったが 改名したお笑いコンビ)の大竹氏だ。 白いタキシードを着た彼は静かに笑いながら 近付いてきて、 「いやでも、今の良かったんじゃないの。」 と、一言褒め言葉を残して去っていった。 棚からフィッシング。 ……どうなんだろ、自分の中で どう評価したら良いんだろ。 大竹氏は褒めてくれたが…… そんな、自分の笑いのセンスに 微妙な自信と不安を抱えたまま、 私はしばし立ちつくすのだった。 ……以上、今年の初夢であった。 棚からぼたもち以外の物を出そうとして、 ひねりすぎておかしくなる過程が、 まさしく私の弱点のような気がする。 豪華なお屋敷が舞台のわりに、 もらう金額が千円であったりと、 どこか貧乏臭さが拭えない。 今年もきっと、私は面白いことを模索するんだろうな。 |