Deckard's Movie Diary
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2007年03月07日(水)  パフューム/ある人殺しの物語

ある女性スタッフが目の前を通った時に、とても芳しい香りが漂ったので小生はすかさず「今つけている香水は何?」と聞いたら、彼女は暫く考えてから「う〜ん・・色々混ざってるから分からないわ・・・」と答えたのです。小生は彼女の受け答えに様々な妄想が膨らみ、あらぬところまで膨らませてしまいそうになりました。\(^-^\) (/^-^)/ソレハコッチニオイトイテ...その人にとって特別な“匂い”が、失われていた記憶を呼び戻すいうシーンは映画等で良く見られますが、それくらい“匂い”というのは五感の中でも特別なモノなのかもしれません。例えば、初めて肌を合わせた相手がつけていた香水の匂いなんてのは、やたらと罪深いモノで、横断歩道を歩いている時に同じ香水の匂いがしただけで、思わず振り返り、あらぬところを膨らませてしまいます(またかよ!)。

さて、『ラン・ローラ・ラン』『ヘヴン』に続くトム・ティクヴァ監督最新作です。全世界で1500万部を売り上げた小説が原作らしいですが、全く知りません。内容は、簡単に言ってしまえば大人向けのファンタジーと言えます。トム・ティクヴァを一躍有名にしたのは『ラン・ローラ・ラン』ですが、彼の作品群の中では(長編2作目の『プリンセス&ウォーリアー』は未見)、どうも『ラン・ローラ・ラン』だけが毛色が変わっているように感じます。『ラン・ローラ・ラン』はMTV的なPOPな印象が強かったのですが、他の作品では、どちらかと言うと、淡々とした時間の流れの中で背筋が凍りつくような研ぎ澄まされた感覚で対象物を捉えています。今回もまた、そのティクヴァ風の演出が冴え渡っていますが、欲を言えば物語を構築する枝葉の部分が弱いように感じました。つまり、主人公グルヌイユの不気味さを際立たせる演出は抜群なのですが、彼が内面に持つ狂気や哀しみの描写はいまいち物足りません。この辺りは脚本にもう一工夫欲しかったところじゃないでしょうか。それでも見応えのある作品であるのは間違いなく、18世紀のパリを再現した美術も、“匂い”を表現したと言われているベルリン・フィル(サイモン・ラトル指揮)が奏でる音楽も出色の出来映えで、木戸銭を払って観るに十分値します。それにしてもヒロイン役のレイチェル・ハード=ウッドは美人ですねぇ!危うくあらぬところを・・・もういいですね。しかし、こんな娘を持った親は大変だろうなぁと思いますよ。

<これ以降はネタバレです!>

グルヌイユが生を受けて旅立つまでの前半部は見事としか言いようが無く、その後の展開に期待が満ち溢れますが、自分の肉体的な欠陥に気づき、そして狂気の連鎖へと走っていく後半はストーリーが興味深いだけに盛り上がりに欠けたのは惜しまれます。人を愛に導くことは出来ても、自分は誰からも愛されないと知ってしまう彼の心模様はもっと大袈裟に描いても良かったし、その方がファンタジーとしてのエンディングもすんなり収まったような気がするのですが・・・。


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