Deckard's Movie Diary
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2005年09月20日(火)  リンダリンダリンダ

『ばかのハコ船』とか『リアリズムの宿』とか、リアル過ぎる描写が何処か薄汚れている印象を残す作品を撮ってきた山下敦弘(『くりいむレモン』なんてのもありますが(笑))の新作は、女子高生が主人公の『リンダリンダリンダ』です。今まではダメ男ばかりが主人公だったので、ヨゴれた印象もさもありなん!でしたが、さすがに女子高生は♪どぶねずみ〜っとなっても絵になりますなぁ(笑)。本作は全編に渡って意図的に曖昧な部分を多く描いています。ダラダラとした流れは、監督の山下敦弘の毎度の演出と言ってしまえばそれまでですが、今回は今まで一番効果を発揮しています。例えば・・・台詞のやりとり、発する言葉、受ける表情、時間経過等、その全てが曖昧に描かれていて、その曖昧な調子こそが、微熱に浮かされている思春期だったりするワケです(説得力ないなぁ・・・)。そして、その曖昧な臨場感は、平和に慣れ親しんだ今の日本の空気だったりするような気もしますし、ある意味『エレファント』の時間の流れにも似ているような印象を持ちました。そこへ韓国からの留学生ソンさんの登場です。彼女は茫洋としながらも、カラオケ店でも、友人との会話でもストレートに自分の意見を発します。それは今現在の日本と韓国のお国柄の違いなんでしょう。そして、そのソンさんがラスト近く、アクシデントに上手く対処出来ずに(っつーか、煮え切らない!っつーか、直ぐにあきらめちゃう・・・みたいな、今どきの日本人)右往左往しているメンバーを一気に引っ張りこみ、どぶねずみ達は濡れねずみになりながら一目散に“これが青春だ!”と弾けます。ここで初めて彼女達から曖昧さが消え、それこそ、何故にブルーハーツだったのか!という答えも同時に提示されているのです。パンクロッカーであった、ブルーハーツは単純なコード進行(誰でも三日で憶えられる(笑))に、ストレートな歌詞を乗っけた直線一気のバンドでした。観始めて暫くは「何故にブルーハーツ?」という考えが頭の片隅に残っていて、単にブルーハーツがユニコーンやジッターリン・ジンよりも有名で、既にオールディーズになりつつあるってコトなんかなぁ・・・と思っていたのですが、ソンさんがブルーハーツを聴きながら感動しているシーン辺りから、曖昧な日常に埋もれていた熱い気持ちが少しずつ蘇って来ました(笑)。((笑)って書いちゃうところが、オイラもなぁ・・・)。ブルーハーツに初めて触れた頃の衝撃なんて、とっくの昔に忘れて来ちゃってたんですよねぇ・・・でも、やるときゃやらなきゃ!熱くなるコトはかっこ悪いコトじゃないし、一つの目標に向かって全力を尽くすコトだって、物凄く素敵なコトなんですよ。そんな当たり前のコトが、最近はだんだんと鬱陶しがられているんですよね。きっと、ソンさんも、初めて聴くブルーハーツに心動かされ、展示室をほったらかしちゃったんでしょう(笑)。

また、この映画のもう一つの魅力は、学園祭準備の描写です。閑散とした校舎のロングショット、薄く流れてくる音、画が近づいて来るのに連れて大きくなる4人の練習音・・・学園祭前の雰囲気が良く出ているシーンです。経験のある者ならば誰もが分かると思うのですが、学園祭が間近なのに、皆がざわざわと準備をしているのに、とても静かな時間が流れる瞬間というのがあるんです。あのシーンはまさにそんな印象でした。ストーリーの中で一つだけ注文をつけるとしたら、舞台袖で観ているリンコの寂しそうな表情が欲しかったかな・・・だってね、やっぱり参加した方が楽しいんですよ。でも、それも青春ですね(って、またかよ(自爆))。『リンダリンダリンダ』は同じ青春音楽モノ映画としては、娯楽性溢れる『スウィング・ガールズ』とは対照的な作品と言えるでしょう。

ソンさん役は韓国でも人気女優のペ・ドゥナですが、この映画の出来がいい(と、思っている)ので良かったです(韓国の方がどう思うのか分かりませんが・・・)。韓国の彼女のファンはきっとビデオでこの映画を観るでしょうから、その時に少しでも日本のコトを理解してもらえたら嬉しいですからね。そのペ・ドゥナがヴォーカルの“パーランマウム(韓国語で「青い心=BLUE HEARTS」の意)”のメンバーは、彼女の他に、ドラムが趣味のアイドル前田亜紀、アウシュビッツの生き残り(笑)香椎由宇、本物のベーシスト関根史織。オイラの頭の中には、本物のBLUE HEARTSに負けない魅力的なカルテットとして記憶に残るのは間違いありません。全編を通して間伸びしている印象もありますが、個人的には花丸の映画でした。


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