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昨年の夏にスタジオセット見学をした『北の零年』をようやく観てきました。監督は今や邦画界のエースにのし上った行定勲。個人的には行定勲がどうしてここまで評価されるのか、サッパリ分かりません。言い方を変えると、オイラには邦画界のプロデューサーってのは全く見る目が無いとしか思えないワケです(オイオイ…( ;・_・)ッ( ゚ー゚)ウキ…)。で、今回の大作で、彼の評価が決まるんじゃないかな?と思っていたのですが・・・彼もまた、あまりに日本人らしい器用貧乏タイプの人だったんですねぇ。個人的には3時間近い長尺の映画をなんとなくまとめてしまう小賢しさが大いに不満です。大して飽きもせずにツルっと観られてしまいます。それなりのストーリーを、それなりの脚本に沿って撮影していくだけが演出ではないと思うのですが・・・。前半、北の大地で再会した小松原と志乃。志乃は初めて心の内を語ってくれた小松原に嬉しいとこぼす。武士として振舞ってきた小松原が志乃に初めて見せる人間臭いシーン・・・この導入部までは良かったんですけどねぇ。その後、主君の言葉に驚愕した小松原(渡辺謙)へのライティングがガラっと変わるシーン(あの『GO』でのラブシーンを思わせる手法ですが)で、彼の心が崩壊してしまいます。小松原は、自身も挫けそうになるのを必至に隠して(←まぁ、こういったシーンはありませんが)あくまでも主君の為に、主君を立てて、皆を元気づけていたワケで、その信じていた部分が完全に覆ってしまったのですから、当然、前と後では彼の表情や立ち振る舞いにもっと差があってしかるべきなのに、その辺りの演出があまりにないがしろです。結局はラストに繋がっていく大事なシークエンスなんですけどねぇ・・・。また、ひょっとしたら重要な役どころになったんじゃないか?と思える豊川悦司演じるアイヌ?は存在感こそあれ、存在自体は悲しいくらい曖昧でした。で、曖昧と言えば香川照之の薬売りもまたどっちつかずのキャラクターです。香川照之の演技は過剰以外のナニモノでもないのですが(香川だけでなく、吉永の演技にも似たような印象を持ちました)、そういう演出の支持を受けたような気もします。いつまでたっても吉永演じる志乃がキレイなのもどうなんでしょ!『コールド・マウンテン』のキッドマン程度には汚して欲しいですけどねぇ・・・。農民を代表している平田満にしても、彼がどれだけ苦労してきたかが一切描かれず(ワンカットもありません!)、吉永の言葉だけでは、彼の行動には感情移入出来ません。また、唯一反発していた寺島進は何処へ消えてしまったんでしょう?というワケで、ほとんどの登場人物の描写が希薄なので、ダイジェスト版を観ているような錯覚に陥ります。ただ、ダイジェスト版というのは、実際にはその数倍の時間を費やしているわけですから、自然と表情や仕草に時間の流れが感じられるモノなんですが、そのような裏づけが全く無い「まるでダイジェスト版のような内容だ!」と言われるような映画は、とても辛い仕上がりになってしまいます。新しい環境で成長していくシーンや、時の流れ等をきちんと描いていればもっと奥行きのある仕上がりになったんじゃないでしょうか?例えば先住民に学ばなければ!と言っておきながら、そういうシーンは全く描かれていませんし、この冬は越せそうも無い!と言っておきながら、何も無かったように平気で春が訪れてしまう・・・逆に香川と石田の濡れ場とか、“ええじゃないか”とかのシーンが特に必要だとは思えません。また、友人も指摘していたのですが、北海道の自然が全く捉えられていないのも致命的です。大自然に囲まれている雰囲気がほとんど感じられません。だから、九死に一生を得る志乃のシーンも有り難味があんまり無いんですよねぇ。それは演出に余裕が無いからだとも言えます(予算が無い!というコトかもしれませんが・・・)。つまり、自然の風景は待っていてくれませんから「これから風景撮りま〜す!風景さん、スタンバイして下さ〜い!」っつーワケにはいきません。絵になる自然の風景なんて、いつでも撮れるワケではなく、時には役者の演技を中断したり、撮影順を急遽変更しなくてはならなかったり、過酷な条件に役者を放置しなければいけなかったりするワケです。エンディングのダラダラ加減も “大作の為の大作風な映画作り”のように感じられて仕方ありません。どうせなら北村ゴジラのように“大いなる失敗作”(なるのかなぁ・・・( ̄。 ̄ )ボソ…)にでもなれば良かったのに!ただ、そうなった場合、今の邦画界の裁量の狭さでは、行定監督への依頼を相当数減らすようなコトになるでしょう。逆に言えば、今回のように大勢では可もなく不可もない仕上げにしておけば、彼の評価はますます上がり、さらに良い企画が発注されるワケです。う〜ん、なんだかなぁ・・・こうなったら、行定監督には今回のキャリアを今後の映画作りに十分に生かして、素晴らしい映画を作ってくれることを切に願います。その為にも激辛コメントにさせていただきました。
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