Deckard's Movie Diary
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2004年01月14日(水)  ミスティック・リバー

<ネタバレしています・・・>

オスギのCMが鬱陶しいイーストウッド監督最新作『ミスティック・リバー』です。巷で賛否両論を巻き起こしている作品は、やはり!紛れも無い力作でした。イーストウッドの演出もブライアン・ヘルゲランドの脚本も素晴らしく、ほとんど非の打ち所がありません。ただ、観る人によってかなり評価が分かれる作品です。結局は、このストーリー展開を受け入れるコトが出来るかどうか?です。自分としては三者三様の夫婦関係を始め、子供たちまで含めた全ての登場人物の立場や人間性に個人的に思い当たる部分があり、この映画の中の誰にも投影出来ないのに、どいつもこいつもリアルな存在感を漂わせていてヒトゴトとは言い切れないモノがありました。悲劇が悲劇を生む負の連鎖・・・ホンの些細な違いで自分に訪れていたかもしれない悲劇・・・「人生なんて不公平そのもの!」という真実をここまで冷徹に描いた映画も珍しいかもしれません。そのやりきれなさは凄まじいモノがあります。銃声が木霊して何処までも空虚な白にフェイド・アウトした瞬間は、まさにこの映画の救いの無さを象徴しています。そして、大人になった二人が見送る“あの時の黒い車”でエンド・マーク、その後の行く末は観客に委ねる・・・と思っていると、賛否両論を巻き起こす結果になる強烈なラストが用意されていたワケです。パレードという晴れの舞台をバックに底知れない傷口にさらに塩を塗り込むようなエンディング・・・恐ろしいほどの人間味を強烈に浮かび上がらせていて、背筋が寒くなりました。それは自分にもそういう部分があるかもしれない・・・という恐怖だったのかもしれません。積極的に人には薦めませんし、決して好きな映画とは言えませんが、観て良かったと思える映画でした。イーストウッド、ヘルゲランド、ペン、ロビンス、ベーコン、そしてフィシュバーン、ハーデン、リニーとスタッフ、キャストの全てが十二分に力を発揮した稀有な作品と言えるでしょう。


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