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Deckard's Movie Diary index|past|will
『アバウト・シュミット』・・・あまりに偉大で平凡な映画でした。まさに“平凡”を絵に描いたような、いや、“平凡”を映画にしたような映画です(笑)。主人公であるシュミットは『めぐりあう時間たち』に登場したジョン・C・ライリー演じるローラの夫のような人物で、彼の人生は平凡そのものだったんでしょう。だけんどもしかし!どんなに平凡な人生だろうと、出会いがあり別れがあるのです。そこに、喜びに溢れる瞬間もあれば、怒りに我を忘れるコトもあり、哀しい場面に出会う時も、楽しいひとときが訪れる事もあるのです。人生とは、最後に幕が下りるまで出会いと別れを繰り返しながら、喜怒哀楽の中で生きていくモノなのでしょう。そして時には、小さな幸せに大きく心を揺さぶられるコトもあるのです。誤解のないように言っときますが、“平凡な人生”は“つまらない人生”とは違います。“つまらない人生”などというモノはありません。“つまらない人生”かどうかはその人生を生きる人によるのです。しかし“つまらない人間”は星の数ほどいます。その“つまらない人間”もまた生まれた時から“つまらない人間”ではありません。長く生きている内につまらない常識や人間関係等に囚われ、少しずつ“つまらない人間”になっていくのです。シュミットは“つまらない人間”だったのかもしれません。“つまらない人生”に限りなく近い生き方だったのかもしれません。しかし!彼はホンの些細な出来事から自分の人生は“平凡な人生”だったけど“つまらない人生”ではなかったと悟るのです。夜空に浮かぶ星の美しさを感じたあの頃のように、他愛のない人形を可愛いと思ったあの頃のように、母に甘えたあの頃のように、彼に残された未来は多くはないかもしれません。しかし、この映画の素晴らしいエンディングは、残りの人生を有意義に過ごすシュミットの姿をエンドロールの向こうに見させてくれるのでした。“平凡”という人生をここまで映画として昇華させたアレクサンダー・ペイン監督とシュミットを演じたジャック・ニコルソンに拍手を惜しみません。
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