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2004年06月08日(火) われらの歪んだ英雄

われらの歪んだ英雄
Urideului ilgeuleojin yeongung
Our Twisted Hero

1992韓国 パク・ジョンウォン監督

ビデオ・DVDあり(エースデュースエンタテインメント)
李 文烈【われらの歪んだ英雄】情報センター出版局


それにしても、いいタイトルです。
大仰に響く割に、見当違いな感じがありません。

予備校講師のビョンテは、
小学校時代の恩師の葬儀のため、
少年時代を過ごした田舎町へ赴きます。

1960年、李承晩の不正選挙による大統領四選が
糾弾されたこの年、
5年生のビョンテ(コ・ジョンイル)は、
父の仕事の都合で
ソウルから田舎の学校に転校しました。
成績はトップクラスで、級長も務める優等生だった彼は、
絶対的な力をもって「5年2組」を統括する
級長のソクテ(ホン・ギョンイン)が
油断ならない悪党であることをすぐ見抜きました。

時には教師に彼の悪事を告発したりもしますが、
逆に、告げ口は卑怯なことだと叱られてしまいます。
また、ソクテの腰ぎんちゃくたちを
映画を見せたり食べ物をおごったりして
懐柔しようとしたことも裏目に出て、
しまいには、
教師から問題児扱いされるまでになるのですが、
ソクテに抵抗することをやめ、うまく渡り合うことを覚え、
ようやく落ち着いた学校生活が送れるようになったとき、
若い教師キムが赴任してきます。

キムは、ビョンテたち新6年生の担任になりますが、
ソクテが不自然に級友の支持を得ていることや、
教師たちまでもが
ソクテを何の疑いもなく信頼していることを不審に思い、
徹底的にソクテの悪事の数々を追及するのでした。

一見して、ビョンテ役のコ・ジョンイルは
「かわいい・賢そう」
ソクテ役のホン・ギョンインは
「将来出世しそう」と思うような、
それぞれ非常に魅力的なルックスをしています。
ソクテに服従することを決めたビョンテは、
ただ「何かをあきらめた」わけではなくて、
ソクテのヤバいカリスマ性のようなものに、
全く惹かれていなかったとは言えないんじゃないか、
そんなふうなところも、それとなく漂わせていました。

ソクテが級友という名の子分たちを使って
やったことといえば、
弁当の時間にフルーツを差し入れさせるとか、
女性教師のトイレを覗かせ、様子を報告させるとか、
テストの答案に自分(ソクテ)の名前を書かせて
替え玉でいい点をとるとか、
鉛筆やビー玉、
その他大切なものを取り上げて返さないとか、
(それが教師にバレそうになると迅速に返し、
もっともらしい取り上げた理由まで付す周到さ)

セコくて情けないことばかりです。
「昔はガキ大将みたいなのはいたけど、
今みたいに陰湿ないじめはなかったよ〜」
と言いたがるノスタルじじぃどもに言わせれば、
ありがちな、かわいい小悪事にすらなってしまいそうです。

やむなくソクテに服従していた子供たちは、
ソクテより一段上に立ち、
彼を厳然と罰するキム教諭に促され、
それまでたまっていたものを吐き出すかのように、
まあ、上のパラグラムで並べたような、
ソクテにやらされたことを次々と暴露し、
「あいつ(ソクテ)は悪い奴だ」と言い放ちます。
そんな迷える子羊たちの心の脆さと、その先にあるものを
社会情勢なども絡めて描いたことで、
強烈な説得力とインパクトをもって
迫ってくる映画ではありました。

難を言えば、終盤で口数が多いなあと感じさせること。
ごちゃごちゃ言わなくてもメッセージ性は十分だったので、
ちょっと残念でした。


ユリノキマリ |MAILHomePage