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2003年07月20日(日) オテサーネク 妄想の子供

7月20日の花は“アメリカデイゴ”
花言葉は「夢・童心」だそうです。

そんなわけで、
よくも悪くもひたむきな子供の感情が引き起こした
悲喜劇が描かれた、こんな映画をどうぞ。


オテサーネク 妄想の子供 Otesanek
2000年チェコ ヤン・シュヴァンクマイエル監督


先日見たばかりなのですが、
まさに度肝を抜かれました。
そして、ぜひいつか御紹介したいと思ったので、
本日、ややこじつけ的に御紹介することにしました。

(以下、粗筋は“日常日記”からの転載です)
子供が授からないホラーク夫妻
ヴェロニカ・ジルコヴァヤン・ハルトゥル)が、
木の根を赤ん坊型に成形したものを
オティークという名の男の子に見立てて
「育てて」いるうちに、その木製の赤ん坊に命が宿り、
赤ん坊にあるまじき鯨飲馬食の果てに、
なんとホラーク夫妻の飼い猫を食べてしまいます。
その後は大暴走して、
「有機物ならなんでもえーんかい!」
とツッコミたくなるような様子で、
とにかく、命あるものをばりばりと食いまくり、
巨大化していくのですが、
ホラーク夫妻は、我が子を処分することができません。

そうした状況が昔話の『オテサーネク』にそっくりだと気づいた
アパートでホラーク夫妻の隣に住むシュタードレル家の娘
アルジュビェトカ(クリスティーナ・アダムコヴァ)は、
困り果てたホラーク夫妻が地下室に隠したオティークと
心を通わせ、自分の貯金や小遣いを使ってまで、
オティークに食べ物を与えようとしますが…

今回キーワードにした“童心”という言葉は、
このアルジュビェトカからの連想です。
彼女はもう、子供そのものでした。
思い込みが激しくて浅はかなのに、
それでいて妙に洞察の鋭いところもあり、
残酷さと優しさが同居したような少女でした。
これを、始終ぶすーっとした顔で演じた
クリスティーナ・アダムコヴァは、
はっきり言って美少女とは言い難い御面相です。
また、ホラーク夫妻の“子供”の存在に不審を抱き、
夫妻を追い詰める言動を見せるので、
ああ、こいつが話をかき回すんだろうな…と思って
軽くウンザリしながら見ていると、
実は、民話と現実の出来事の一致をおそれ、
オティークを守ろうとしているのだとわかります。
人間の子供とフリークス(など)が心を通わせるという素材も、
な〜んかどっかで見たことあるぞ〜と
思わないではありませんが、
その子が別段、美少年・美少女でなくても、
好感は抱けるものだと実感しました(とっても失礼)。

それから、“オティーク”というキャラクターですが、
クリーチャーの完成度としては、
凡百のアメリカ映画より下かもしれません。
動きもぎこちないし。
ところがまあ、これが非常におどろおどろしくて、
そのくせ、赤ちゃんっぽい喃語のせいか、
かわいらしくさえ感じさせることもあるのです。
確かに、赤ん坊の一種の得体の知れなさ
時として恐ろしいものだという、そんな面が
よくよく表現されていたと思います。
アルジュビェトカに感情移入してしまうと、
「貯金箱を割ってもまだ足りない」
というもどかしい気持ちが
本当によくわかると思います。


ユリノキマリ |MAILHomePage