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2003年06月16日(月) ニューヨーク東8番街の奇跡

アメリカの映画俳優ヒューム・クローニンが、
6月15日(日本時間16日)、91歳で亡くなったそうです。
ノーマン・ロックウェルの絵に登場しそうな
「頑固だけれど優しいおじいちゃん」然としたルックスで、
(IMDbを見たら、おいおい、そんなのアリかという写真が載っていましたが)
晩年は、プライベートでもよきパートナーだった
ジェシカ・タンディとの共演作が印象的です。
1996年にはスーザン・クーパーという女優と再婚したようです。

ニューヨーク東8番街の奇跡
Batteries Not Included

1987年アメリカ マシュー・ロビンス監督

ニューヨークの下町で、
ある古い建物が取り壊しの憂き目に遭います。
そこに入居しているのは、
1階でコーヒーショップを経営する老夫婦
フランクとフェイ(H.クローニン&J.タンディ)
恋人の帰りを待つ妊婦マリア(エリザベス・ペーニャ)、
売れない画家メイソン(デニス・ボウトシカリス)、
そして、元はボクシングのチャンピオンだったけれど、
現在は部屋に引き籠もってテレビばかり見ている
管理人のハリー(フランク・マクレィ)です。

フェイはちょっと痴呆ぎみです。
フランクは老体に鞭打って店を切り盛りしながら、
もう亡くなってしまった息子の思い出に浸り、
地上げ屋のカルロス(マイケル・カーマイン)を
息子と勘違いするような危なっかしい妻の
世話に追われる毎日でした。

地上げ屋の嫌がらせが激化する中、
アパート内で不思議な現象が起こりました。
夜中のうちに、壊れさたガラスやティーカップが
すっかり修理されていたり、
各部屋の金属製品がなくなっていたりするのです。
突きとめると、フェイが屋上で、
鳩に豆を与えるかのようにネジを撒く姿が……
彼女は宇宙からやってきた小さなUFOたちに
「エサ」を与えていたのでした。

もう、かわいいったらない!という映画です。
アパートに新しい住民として受け入れられ、
「出産」したり、
フランクの仕事を手伝ったりするUFOたちの姿は、
見ていて口許が弛むものです。
エンターティンメントとしてのSFの要素はあるものの、
基本は人情コメディーですので、
「詰めが甘い」「お涙頂戴もの」と
片づけられる向きもありますが、
オープニングから多用される古いジャズの感じよさや、
フランク&フェイの共白髪夫婦愛、
地上げ屋との攻防やUFOの出現で育まれる
アパートの住民たちの交流など、
ストレートにある感覚を突いてくる要素にあふれています。

94年、ジェシカ・タンディが亡くなり、クローニンも天に召され、
あの世で、この映画の中のフランクとフェイのように、
「ジンジャーとアステアのように踊りましょ」などと
手を取り合って踊っているのでは?と想像するのが
映画ファンとしては、惜しい人を亡くした心の慰めになることと思います。
そういえばお2人は、『白い犬とワルツを』という共演作もありました。


……御冥福をお祈りいたします。


ユリノキマリ |MAILHomePage