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2002年11月23日(土) ダンサー・イン・ザ・ダーク

11月23日は勤労感謝の日ということで、
一生懸命に働く女性の姿が印象に残るこの作品にしました。

ダンサー・イン・ザ・ダーク
Dancer in the Dark

2000年
イギリス/ドイツ/アメリカ/オランダ/デンマーク
ラース・フォン・トリアー監督


この映画を見て何がビックリしたって、
カトリーヌ・ドヌーブが、田舎の工場勤めのオバチャンを
無理なく演じていた……ことにもまあ驚きましたが、
ビョークが笑ってる!これに尽きました。
この人に対して私は、
いつもどこか睨みつけているとか、奇声を発しているとか、
自分の子供を無許可で撮影しようとしたパパラッチを殴っているとか、
(これは↑立腹は当然ながら、いかにも過激だった…)
そういうイメージだけを抱いていましたし、
微笑みといっても、どこか得体の知れない、
それゆえ魅力的なものを感じていたのですが、
演技とはいえ、こんなふうに笑える人だったのですね!

ストーリーはごく単純な上に、ミュージカル仕立てですので、
決してわかりにくい映画ではありませんが、
不思議なムードのせいか、
とっつきにくい面はあるかもしれません。

1960年代のアメリカの片田舎が舞台です。
遺伝性の病気のため徐々に視力を失いつつある
チェコからの移民セルマ(ビョーク)は、
やはりその病気が遺伝し、
早晩失明する可能性のある息子ジーンが13歳になったら
目の手術ができるようにと、
プレス工場での日勤・夜勤、さらには内職までして、
爪に灯をともすような生活でお金を貯めます。
が、自分の目のことを知らないジーンに悟られないよう、
「お国にいるおじいちゃまにお金を送る」
という名目にしていました。

唯一の楽しみはミュージカルの練習でした。
『サウンド・オブ・ミュージック』の家庭教師マリア役に選ばれ、
やる気満々です。

しかし、医者の目を何とか欺いて、
本当は全く見えない状態でありながら、
かなりの無理をしていたため、
工場の機械操作を誤ってクビになってしまいます。
そのため貯金の続行が無理になったので、
手術費用には足りないものの、
それまで貯めてきた2056ドル10セントで何とかしてもらおう…
そう考えた彼女は、クッキーの缶に貯め込んでいたお金を
手で探りますが、まるっきり無くなっていました。

貯金のことを知っていたのは、
友人であり、部屋を貸してくれた恩人でもある
警官のビル(デビッド・モース)だけでした。
彼は、浪費家の妻リンダ(カーラ・シーモア)に、
金銭的に逼迫していることを言えない悩みを
セルマに打ち明けていたのです。
そこで、すぐにピンと来たセルマは、ビルのもとへ行き、
「私のお金を返してくれ」と真っ当な要求をしますが、
それが悲劇の幕開けとなってしまうのでした……。

見るからに頼りなくて、
決して賢くはないけれど芯の強いヒロイン・セルマの役は、
女優ならば
誰でも演じたくなる性質のものではないかと思います。
ぶっちゃけ、歌なんか吹替えでもいいわけですから、
演技力があれば何とかなりそうな気もしますが、
それでいて、あの演技も歌も、
ビョーク以外の誰もこなし得なかったと思います。
彼女はこの映画では、「歌歌える女優」でした。
歌が聞き物なのはもちろんのこと、
演技もすばらしいものでした。

セルマの一番の親友キャシーがC.ドヌーブ、
セルマに思いを寄せる好人物ジェフがピーター・ストーメア
工場の責任者がジャン・マルク・バール
セルマの憧れの俳優ノビィにジョエル・グレイなど、
多国籍豪華キャストも魅力的ですし、
コメディベースでなくてもミュージカルというのは
成り立つんだなあというのも新鮮でした。

見るからに好き嫌いが分かれるこの作品、
「嫌い」「2度と見たくない」という声も、
理解は何となくできます。
ですから、嫌いな方にお願いしたいのは、
「この映画は見なかったことにしてください」ということです。
あんな映画サイテー、とあちこちで吹聴するのだけは
できたら控えてくださいませ。
私もまた、この場で
「好き好き好き好き好き好き好き好き」
言うだけにとどめておきます。

そうそう、この作品を見た後、
映画『サウンド・オブ・ミュージック』を見るのも一興ですが、
立て続けにはきついかもしれませんね。
上映時間140分(ダンサー…)の後に174分ですから。
もっとも、10年以上前ですが、
『サウンド…』と『アラビアのロレンス』(207分)を
併映したことのある名画座の存在を知っています。
見終えた後、皆さんさぞやお尻が痛かったことでしょう。


ユリノキマリ |MAILHomePage