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2002年09月11日(水) 愛され作戦

2001年9月11日、「すべてここから始まった」みたいな
米国中枢部同時多発テロは、
非常にショッキングなものでした。
世界中の人がそれぞれの思いを抱えながら、
1年過ごしてしまったわけです。

映画産業に関連したことでは、
ことし4月に日本でも公開になった、
ケビン・スペイシー主演の『光の旅人/K−PAX』が、
テロを想起させるようなアクション映画の製作や公開が
中止される中、
傷ついたアメリカ市民の心を癒して気持ちよくヒット、
というエピソードに惹かれました。

が、この映画、実は既に紹介済みです。
最近見たもので、後半だけとはいえ、
びっくりするくらい細部の似た映画があり、
非常にツボにはまったので、
本日はそれを御紹介したいと思います。

愛され作戦 Keiner liebt mich
1994年ドイツ ドリス・ドーリエ監督


ちなみに英語タイトルは“Nobody Loves Me”
フランス映画で、「だれも私を愛さない!」というのがありましたが、
御丁寧にこちらの英語タイトルも、
当然のように全く同じ“Nobody Loves Me”でした

ともあれ、この邦題をつけた人はすばらしいと思います。
インパクトがある上に、全く見当はずれでもありませんでした。
的確かどうかは各人の判断によると思います。

主人公ファニー(マリア・シュレイダー)は、
空港事務員という安定職に就いていますが、
精神的な意味での“自立”を目指し、
「死」に関するサークルに入り、時には棺桶で寝るような
30歳目前の女性です。
彼女の母親は、ハーレクインっぽい小説のライターで、
自身の男性関係も、結構な年齢にもかかわらず、
相当奔放なのが窺えます。

ファニーと同じアパートに、占いなどで生計を立てている
(といっても、家賃を相当滞納しているから、
“立てている”とは言えないかも)
ゲイの黒人男性オルフェオ
ピエール・サヌーシ・ブリス)がおり、
ファニーに、
「運命の恋人はこんな男で、こうすればゲットできる」
とアドバイスしました。
その条件に合致した男は、
たまたまアパートの新しい支配人になった
ローター(ミハイル・フォン・アウ)でした。

そこで、彼女はローターに積極的にアタックするのですが、
彼は結構もてる上に、「独り寝が寂しい」という理由で、
夜毎違う女性をベッドに引っ張り込んでいるような男です。
見ている方としては、彼の人となりに接するうち、
「こいつは違う!」と思うのに時間はかからないのですが、
ついでに「大人のおもちゃみたいな名前…」と思ったのは、
私だけではない!と思いたい

ファニーは、オルフェオの忠言を真っ正直に受け、
健気な努力で彼の心をつかもうとします。
そして、恥ずかしい行為に走ってしまい、結果傷つきますが、
そんな彼女を癒したのは、
ほかならぬオルフェオの優しさでした。
しかし、オルフェオにはある秘密があり……

私が『光の旅人』と似ているな〜感じたのは、
オルフェオと、スペイシーが演じたプロートという男の
キャラ設定でした。
前半は、全くといっていいほど共通項が見出せないのですが、
後半(終盤)、デジャヴに陥ったかと錯覚するほど
似たところが随所に見られました。
かといって、
どちらかを見たからネタバレになるというようなタイプでは
ありませんので、安心して両方ともおすすめできます。

シングルトン(自立した独身者)の女性を描いた映画の常として、
小道具の使い方がおしゃれです。
それでいて<洗練されているというよりも、
ダサかわいい雰囲気もあり、
そんな面だけでも惹かれてしまうかもしれません。
ちなみに、主演のM.シュレイダーが
誰かに似ているなーとずっと思っていたのですが、
80年代を席巻したアイドル、モリー・リングウォルドでした。
ファッションは年相応なのに、
ふとした表情が妙にあどけなくて、
そんなところも、「30歳のいい大人」という設定に
不安定な説得力を持たせていたと思います。
……なんてね。

そうそう、冒頭から使われ、
随所に挿入されていたエディット・ピアフの歌声も、
大変感じがよかったと思います。


ユリノキマリ |MAILHomePage