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2002年07月10日(水) 恋人たちの食卓

1871年7月10日、作家のマルセル・プルーストが生まれました。
あの超長いことで有名な『失われた時を求めて』を書いた人ですが、
「長い/タイトルが有名」な文学作品というのは、
よほどの読書家でもない限り、
大抵の人がまともに読んでいないというのが相場です……
などという言い訳をするまでもなく、私は当然読んでおりません。

が、第一編『スワン家の方へ』の中の余りにも有名なくだり、
「紅茶に浸したマドレーヌ」のことは、辛うじて知っていました。
味覚と結びつく記憶について、鮮やかに表現していますが、
その味覚をもしも失ってしまったら?(それも料理人が!)
……そんな映画がありましたので、御紹介します。

恋人たちの食卓 飲食男女 Eat Drink Man Woman
1994年台湾
 アン・リー監督
※この呼称についてはデリケートな問題ですが、とりあえずこちらにしまし


近年は、『グリーン・ディスティニー』の大仕事はともかくとして、
なぜかアメリカでの活躍が多いアン・リー作品です。
作中、名料理人を演じるラン・シャンは、
1991年『推手(すいしゅ)』1993年『ウェディング・バンケット』
と、
同監督の映画で、それぞれに味のある父親役を演じていたため、
本作とあわせて「父親三部作」などと言われることもあるようです。

さて、今度の“お父さん”チュは、ホテルのレストランの名コックで、
男手1つで3人の美しい娘を立派に育ててきました。
長女ジェン(ヤン・クイメイ)は、お固く見られがちな高校教師ですが、
人並みに、すてきな男性との出会いを熱望しています。
次女チェン(ウー・チェンリン)は、航空会社のキャリアOLで、
そこそこうまくいっている恋人がいました。
三女ニン(ヤン・ユーウェン)は、
ハンバーガーショップでバイトをする女子大生で、
しょっちゅう彼女にデートをすっぽかされている男の子に
同情するうちに、惹かれていきます。

チュは、自慢の料理を毎晩日曜日、家族のためにつくり、
豪勢な晩餐をするのを習慣としていましたが、
実は、もう子供ではない三姉妹は、この習わしにうんざりしていました。
それぞれ、もっと大事なものがある年頃です。

チュの悩みは、つかみにくくなった娘たちの気持ちばかりではありません。
実は、料理人でありながら、味覚障碍になっていたのです。
長年の勘で何とか料理をつくり、
味見は信頼できる長年の仕事仲間に任せていました。

恋人=恋する人、という意味ならば、なかなかいい邦題だと思いますが、
恋人=カップル(の片割れ)と考えると、ちょっと見当違いに響きます。
ちなみに、恋するのは何も三姉妹ばかりではなく、
隅に置けないことに、チュ父さんも「恋する人」の1人です(相手は内緒)。

食の喜びと悲しみ、出会いと別れをユーモアたっぷりに、
そして繊細に描いた好編ですので、ぜひともお試しくださいませ。


ユリノキマリ |MAILHomePage