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2002年06月29日(土) アイ・アム・サム

6月29日は、1966年の初来日を記念した「ビートルズデー」です。
では、ビートルズの曲とエピソードをこれ1本で勉強できそう、というほど
濃く扱っていた、こちらの作品など。

I am Sam(アイ・アム・サム)
2001年アメリカ ジェシー・ネルスン監督


批評系サイトで、
「やたら泣ける」と「偽善もいいところ。駄作」の2つに
ぱっくり意見が分かれていて、驚きました。
多分、駄作だと言った人は、期待が大き過ぎたか、
見る前からコメントが決まっていたかのどちらかではと思います。
素直に名優たちの演技を受け入れられれば、
必ずや、今年最も印象に残る映画の1本になることでしょう。
泣かせることは泣かせますが、
実のところ、泣け!感動しろ!と煽るような映画ではありません。
そういうふうに煽る映画を称して、
非常に(子供に)失礼な表現で「子供だまし」というのでしょうけど。

7歳児並みの知能で、軽い自閉症のサム(ショーン・ペン)は、
スターバックスで毎日まじめに働く好人物です。
ホームレスのレベッカという女性との間に子供ができますが、
娘ルーシー(ダコタ・ファニング)を産むと、
レベッカはどこかに姿をくらましてしまうので、
ひとり押しつけられる格好となり、
部屋に引きこもっている隣人や、
障碍のある仲間の助けをかりて、一生懸命育てます。

「1人の子供をみんなで寄ってたかって育てる」
どうもこの路線は、個人的にツボでして、
それだけでこの映画を好評価してしまうのは、否定できません。

愛らしく賢いルーシーはみんなから愛され、すくすくと成長します。
が、小学校に入学すると、知識を得ることで
父親の知性を凌駕してしまうのではないか…というおそれを抱き、
勉強に熱中することができません。
担任教師からそのことで注意を受け、
何とかルーシーがちゃんと勉強するように促すサムですが、
父親をこよなく愛するルーシーは、それを拒否します。
結果、サムは親として不適格と判断されてしまい……

この監督は『グッドナイト・ムーン』(脚本)
『コリーナ、コリーナ』(脚本・監督)など、
ほかにも親子の絆系映画に関わっているようですが、
オフビートなコメディー演出に徹したものをぜひ見たいと思いました。
1本の映画の中で、さまざまな種類の笑いを醸し出し、
またそこから涙をも引っぱり出してくれます。
(こういう卑怯な泣かせ方、実は嫌いではありません)

サムに授乳時間を説明するとき、TV番組の放送時間に例えたり
ビートルズのすばらしさを指南したりと好サポートを見せる
隣人アニー役にダイアン・ウィースト
奪われそうなルーシーの親権を取り戻すため、
サムが依頼する弁護士役をミシェル・ファイフィー(イライラしています)、
ルーシーの里親となる女性をローラ・ダーンと、
女優陣の充実にも注目したいところですが、
中でも「すげぇ」と目を見張るのは、
ルーシー役のダコタ・ファニングでしょう。
『ペーパームーン』のテータム・オニールにも匹敵する名演でした。
これは実際に知的障碍のある人たちに指導している方法だと
DVDのメーキングで知りました。
私自身、次女が生まれたばかりの頃、
『ビバリーヒルズ青春白書』の集中再放送があったので、
真夜中の授乳タイムがビバヒルタイムだったこともあり、
「そうそう、そうなの」と膝を打ちました。


作中、さまざまな人がカバーしたビートルズナンバーが流れまくり、
さながら「カブトムシの行進」状態です。
実際に知的・精神的障碍患者のための
ワークショップ「L.A.GOAL」でリサーチし、
映画にも、お2人方ほどそこの役者さんが出演しています
ビートルズが最も人気があるということから、音楽に採用したそうです。
全部カバーなので、今までビートルズを意識して聞かなかった方、
それほど興味のなかった方も、
逆に興味をそそられるのではないでしょうか。


ユリノキマリ |MAILHomePage