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2002年06月24日(月) アメリカン・ビューティー

6月24日の花はバーベナ、花言葉は「家族の和合」です。
では、少々の皮肉も込めて、こちらを。

アメリカン・ビューティー American Beauty
1999年アメリカ サム・メンデス


「アメリカン・ビューティー」は、バラの品種名だそうですが、
でも、あの女性の腹部の前に赤いバラ一輪…という
あの印象的なポスターで使われたのは、
アメリカン・ビューティーではないそうな。
だから、一般名詞として
「アメリカの美しいもの・いいもの」と解釈した方が
わかりやすくなると思います。
(映画の中にも、バラはふんだんに使われますが)

あえて書きませんが、いきなりの冒頭のシーンが驚きモノでした。
ちょっとブラックなコメディーだと思いつつ見た人でも、
いきなりこう来るか?と思ったのではないでしょうか。

レスター(ケヴィン・スペイシー)と
キャロリン(アネット・ベニング)は、
それぞれが仕事を持ち、
賢い一人娘ジェーン(トーラ・バーチ)もいて、
郊外の家で落ち着いた暮らしを送っていて、
誰が見ても理想的な一家……に見てもらいたい一家です。
内実は、3人の心はバラバラでした。
レスターは、やたらとアグレッシブなキャロリンについていけないし、
ジェーンからは、ティーンの娘にありがちとはいえ、
貧相なオヤジとして軽んじられています。

そんな生活に嫌気がさしていたとき、レスターは、
ジェーンの親友アンジェラ(ミーナ・スヴァーリ)に一目惚れし、
「もっといい体していたら、彼と寝てもいいわ」と、
アンジェラがジェーンに話しているのを盗み聞きし、
フィットネスに精を出すようになります。

隣家では、厳格な父(クリス・クーパー)の目を盗み、
ヤクの売人をしているような少年リッキィ(ウェス・ベントレー)が
ジェーンに興味を持ち、彼女の部屋を覗くなど、
少々薄気味悪い行動が見られました。
が、レスターはヤクつながりでリッキィと仲良くなり、
ジェーンもまた別口で彼と接近します。

キャロリンは、仕事で知り合ったバディ(ピーター・ギャラガー)と
情事を楽しんでいました。
仕事を首になり、ハンバーガーショップで
なぜか嬉々としてバイトをするレスターは、
その事実をバイト先で知りますが、
アンジェラに懸想する彼にとっては、
キャロリンの浮気はむしろ好都合でした。

エピソード満載で、簡単にまとめるのは容易ではないのですが、
1つ1つを丁寧に見ていくと、ちょっとしたすれ違い、ボタンのかけ違いが
家庭崩壊を招くのだというのが、嫌というほどわかります。

家族は必ずしも、同じ「いいもの」を探求しているわけではなく、
かといって、それが直接不幸につながるわけではありません。
目指すベクトルが違うんだということに、
理解とはいわないまでも、妥協したり納得したりできないことが
問題でして…というあたりは、
どなたさまも覚えがあるのではと思います。

1999年度アカデミー作品賞・主演男優賞等を受賞しましたが、
それは、この映画にとっての不幸だった気がします。
なぜならば、本来はこの種のものを見ないという人が
「そういうつもり」で見て酷評…というパターンが多いので。
アカデミー賞(この際、アメリカ限定)を絶対の物差しとは思いませんが、
やっぱり、基準の1つではありますからね…。


ユリノキマリ |MAILHomePage