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本日3月11日は、世界初の新聞コラムが始まったことに因む、 「コラムの日」だとか。 ちょうど1年前も同じネタで『25年目のキス』について書きましたが、 本日はこちらにしてみました。
群衆 Meet John Doe 1941年アメリカ フランク・キャプラ監督
クビが飛びそうな女性記者(バーバラ・スタンウィック)が、 起死回生をかけて、 「自殺志望者のジョン・ドゥー(John Doe)、○月○日決行」 というような記事をでっち上げます。 が、架空の話のつもりが、だんだん引っ込みがつかなくなり、 “ジョン・ドゥー”という男をオーディションで選び、 演じさせることになります。
そして選ばれたのは、 ただ「列ができていたから偶然並んだ」というだけの 失業中の男(ゲイリー・クーパー)でした。 一躍時の人となった男は、あちこちでもてはやされ、 良心的な小市民の間では、ジョン・ドゥーの名を旗印に、 この(自殺を考えてしまうような)荒んだ世の中で、 隣人と声を掛け合ったりすることの大切さを再認識するような動きも 徐々に見られるようになりますが、 だんだんと「その気」になってくる男の自殺予告日は、 刻々と迫ってくるのでした……。
フランク・キャプラというと、どこかユーモラスな味付けも魅力の 古き良き時代のアメリカ社会派ドラマというイメージが強いのですが、 この映画は、かなりシビアで苦いものでした。 (美しい職業婦人と、ロバのように誠実な男の取り合わせは、 今回も相変わらずですけど…)
個人的に大好きなシーンは、ごくごく普通のその辺の商店主が、 ジョン・ドゥーに御礼を言いに新聞社を訪れるところです。 「今まで無愛想だと思っていた隣人に勇気を出して声をかけたら、 実は耳が不自由だとわかった」 というような趣旨のエピソードを交えつつ、 飾らない調子で話すのですが、 食事の御礼スピーチにまで原稿を用意する、とまで揶揄される どこかの国のエライ人と違い、 アメリカ人は、庶民レベルでこんなふうに堂々と意見を表明できるんだなと、 映画の中のシーンだということも忘れ、ひとえに感心したのです。 現代のアメリカ社会にも受け継がれる 「いいところ」も「悪いところ」も持ち合わせた映画だと思います。
ちなみに、御存じの方も多いかと思いますが、 「John Doe(女性ならJane)」という名は、 アメリカではかなりポピュラーな、 しばしば「名前の例」として使われるものだそうですね。 「その辺のおっさん・にいちゃん」のニュアンスなのでしょう。 そういえば、『セブン』に登場する、 七つの大罪に対して鉄槌を下す殺人鬼も、 この名前を名乗っていましたっけ……
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